〈小さな家の持ち主は〉
家に着いたボクらは庭を見ていた。庭には畑があり何か生えている。
「誰の家なんだ?」
赤い屋根に白い壁。扉にはRとだけ書かれた立て札がかけてあった。アンナは白ウサギかも!と楽しそうに言うが、そんなまさかと思い立て札を見つめた。
「こんにちはー!」
扉を3回ノックしあいさつをする。すると扉はゆっくりと相手を確かめるように開いた。そこにはさっきボクが見た白銀の髪に赤い目の少年が立っている。先程のフードはかぶってない。
「やぁ、君たちは?」
出てきた少年はさっきの奴とは似ているようで似ていない。見た目はさっきの少年のまんまなのに雰囲気が違う。別人みたいだ。
「わたしはアンナ!あなたは・・・白ウサギさん?」
彼についている耳を見てアンナは言う。ボクが見た時、フード越しでもあんな耳はなかったはずだ。
こいつは本当にさっきの奴じゃないのか・・・?
「アンリ?アンリ、どうしたの?」
「え?」
「怖い顔してるよ?」
アンナに言われ我に返る。こいつが何者かなんてどうでもいいじゃないか。
「あ、ごめんアンナ。ちょっと考え事しててさ・・・それで君は?」
「ボクは白ウサギ。これから急いで女王様の所へ行かなきゃならないんだ」
「女王様!」
アリスだよアンリ!その声が聞こえてきそうなアンナの目にボクは笑顔を向ける。
「ん、待てよ、ここでたしか小さくなるクッキーがあって、小さくなったら青虫さんに会うんだよね・・・。ううっ!わたし青虫苦手なのにぃ~!」
アンナはまだ先のことに対して身震いする。ボクだったらきっと飛ばしてしまう。
・・・そうだよ。飛ばしてしまえばいいじゃないか。
「! アンリ?」
「?どうかした?アンナ」
「あの、いいかな。ボク急いでるんだけど・・・それとアンナ。ボクハ小さくなるクッキーは持ってないよ」
「そうなの!? ・・・あれ。どうして・・・?」
アンナが考えている。それを見て困る白ウサギ。あぁ進まない。
「アンナ、白ウサギは急いでいるみたいだしまた今度お邪魔しよう!」
「え、でもアンリ」
「お邪魔しました!」
先に進まない。進めなきゃ。君は立ち止まらないで。これは君の夢なんだから。
ボクはアンナの手を掴みここから出ていく。それを見て白ウサギはキョトンとしていた。
「あれ?進ませたの?アンヌ」
「白ウサギだよ。・・・話を飛ばされた。青虫に会わずに花たちのところに行くみたい」
「白ウサギを追わなくなったんだね。・・・うん。分かったよ白ウサギ。後はオレに任せて」
「・・・頼むよチェシャネコ」
「ハイハイ」
白ウサギはそう言うと消えてしまった。それをみたチェシャネコは伸びを一つし、スルリと消えていった。




