〈童話の様な物語〉
〈童話の様な物語〉
ソヨソヨ。今日の風は心地よく吹き、
サンサン。今日の太陽はポカポカと暖かい。
チュンチュン。今日の小鳥は子守唄を歌う。
「アンリ!アンリ!」
黒髪のセミロングにくりくりとした緋色の目が特徴的な女の子が顔を覗かせた。
「アンナ。どうしたのさ、こんなことじゃ昼寝も出来ないよ」
アンリと呼ばれた黒髪のくりくりした緋色の目の男の子が伸びを一つしアンナを見た。
「あのね、アンリ、面白いものを見つけたんだよ!」
アンナはキラキラとした目を向けてアンリを見た。
「何を見つけたの?チョウチョ?小鳥?それともキレイな石?」
「白ウサギさん!」
「捕まえたの?」
「うん!見てみて!メガネをかけて時計を持ったウサギさんだよ!」
アンナが捕まえたのはあの世界的に有名な『不思議な国のアリス』に出てくる様な服をきた白ウサギだった。
「離してください!遅刻してしまいます!」
しかも喋るときている。
「アンナ、離してやれよ。白ウサギが遅刻するってさ」
「はーい」
アンナは返事をすると白ウサギを投げ捨てた。
「あぁ、やっと……遅刻!遅刻!」
ウサギは時計を見て走り去っていく。投げ捨てたはずのアンナがその様子をみて、目の輝きを倍増させ、アンリを見た。
「アンリ!追いかけよう!何か不思議なことが待ってるかもしれないよ!」
「……行くの?」
「行くのー!」
アンナはアンリの返事を待たず白ウサギを追いかけた。
「あ!待ってアンナ!」
アンリもアンナの後に続いて走り出した。
ソヨソヨ。今日の風は心地よく、
サンサン。今日の太陽はポカポカしてて、
チュンチュン。今日の小鳥へ子守唄を歌う。
ピョンピョン。白ウサギが走りだして、
タッタッ。アンナが追いかける。
カチカチ。時計が鳴り響いて、
スカッ。ボクらは穴に落ちていった。




