表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/83

潤いまして

第九話目です。

どうぞお楽しみ戴ければ幸いです。

彼は今抱き締められていた。

だが彼は、その事には気付いていない。

何故ならそれは、今彼が気絶しているからである。


「事情は分かったわ」

話を聞いた女性は一つため息を吐き、残念なものを見る目で彼女を見やり


「あんたバカね」

言われた彼女は涙声のまま


「ば、ばかぁ?」

彼女は言われた事に対し抗議の視線を向けて、そのまま聞き返す。

女性の方は一息吸ってしゃべりだす。


「問題点は3つ」


「まず、産まれたてのひよこは餌食べない」

栄養が体に残ってるからね。と付け足しさらに続けて


「それに、与える餌はコーンそのままじゃなくて、それを砕いた飼料をあげなさい」

女性の話はまだまだ続く


「そして、たぶんその雛鳥は水が欲しかったんじゃないかしら」

その言葉を聞いて彼女はまたも聞き返す。


「水?」


「そう。水」

ふん、と一通り話たなと一息入れる女性。

そして、ゆっくりと問い掛ける。

彼女を追い詰めないように。


「一滴でも飲ませてあげた?」


「ううん……」

目を伏せて抱いている雛鳥をみる。

黄色のふわふわが、温かさが彼女の手に伝わってくる。


「なら、こうすればいいのよ」

女性は洗い場の方へ向かって行った。

蛇口をひねり、水を出す。

そこに人差し指を当てて水をつける。

女性はそのまま彼女の元まで行き、抱いている雛鳥を中指でつついて起こす。


「水よ。飲みなさい」

女性は人差し指についていた水を嘴の上に垂らす。

起こされた雛鳥はぐったりとしながらも嘴についた水を口に含んでいく。


「うまいかー。おーよしよし」

女性は雛鳥の頭を撫でて微笑む。

そして、彼女の方に向き直ると


「まあ、分からないことはしょうがないよ」

次から気を付けなさいと言うのだった。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


体を揺さぶられて意識が戻る。

目を開くと、そこには女性がいた。

だが、まだ覚醒していない意識のままで


――ママ?――


まるでずっと求めていたものがそこにあったかのような気持ちになる。

しかし、そんな気持ちも次の瞬間には覚醒する意識と共に消え去ることになる。


ひた……ひた……


冷たいものが嘴にあたる。

水だ。


水だ!

水がある!

俺は嘴についた水を啜る。

力が入らず、ぐったりとしてだらしない格好だが、それでも俺は喜んで水を啜った。


俺は今幸せだった。

本日もありがとうございました。

またのお越しを楽しみにしてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ