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ごめんね

はい。第八話目です。

楽しんで頂ければ幸いです。

夜も終わりを告げるのか、空がやや白んできたその頃、ある家から泣き声が静かに聞こえてきた。

彼女は泣いていた。


「うぅっうぅぅぅ、うっく、ヒヨちゃん……ぐすっ」

彼涙をほろほろとこぼしながら、彼女は、力無くぐったりしている鶏の雛を抱き締めていた。

この鶏の雛はヒヨちゃんだ。

壁に向かって突進を何度もして、気絶をしてしまった。

何故そんなことをしたのかは分からない。

何かの病気かもしれないし、あるいは何かに気付けなかっただけかもしれない。

それが辛かった。

預かったこの面倒はしっかり見ると約束していたし、きっと守る、育ててあげると息巻いていたからだ。

なのに異変に気付けないどころか、怪我までさせてしまった。

もしも、安眠用の耳栓を外していれば、きっと鳴き声に気付いていたはず。

こんなにも小さく、か弱い命なのにそれさえも守れないなんて……


「ぅぅぅ、ヒヨちゃん」

彼女は泣いていた。

名前まで着けて大人になるまで一緒に居てあげようと、布団にまで入れていたのに、苦しませてしまった。

愛があったのだ。

だから、傷付いて欲しくなかった。


――ガチャリ――


勝手口のドアの開く音が聞こえた。

彼女は顔をあげた。


「っとーはいりまーす」

なんとも気の抜けた声と共に栗色髪、黒目の妖しげな女性が台所に入ってきた。


「んー?どうしたの?あんた。」

その女性は態度を崩さないまま彼女に問いかけた。

対して彼女はこぼれる涙を拭わず女性に向けて話だす。


「ヒヨちゃん…が……うっく、ぐすっ」


「いや、泣いてたら分からないんだけど」

女性はなんともいえない顔をしてそう言った。

言いながらも女性は彼女の抱く雛鳥と先の会話から当たりをつけていた。


「ヒヨちゃん……が、ぅぅぅ」


「あーもう、分かったよ、分かったから泣かない」

はぁーとため息を吐きながら女性は彼女に近寄り、その手に抱いた雛鳥を診る。

そして、女性は呆れた顔でいった。


「気絶してるだけじゃない。」

なにを気にする必要があるのか、問いかけようとしたとき


「ちがうの、ぐす、それだけじゃないの」

彼女は否定の言葉を漏らしたのだった。

本日もありがとうございました。

またのお越しを楽しみにしてます。

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