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女王様とピケティ

作者: Q作くん

 尻を突き出した四つん這いの田村。肛門につま先が突き刺さるようトーキックを放つ井上。井上の靴はガラスのパンプスだった。

「はうあ!!」

 硬質ではあるものの、割れやすいものというガラスに対してのイメージが、田村の肛門に実際の痛み以上の緊張感をもたらした。尻の割れ目を撫でながら悶絶する田村。井上はそんな田村に冷徹な眼差しを送る。まるで親の仇を見るように。

 その視線に気付いた田村は頬を赤らめる。痛みの収まらぬうちから早くも二撃目

への欲求がつのる。

 井上は脚を天高く振り上げると、田村の肛門にむかってヒールを振り下ろした。「ちょもらんま!!!??」

 百戦錬磨の田村をもってして白目を剥いてしまうほどの、無慈悲な一撃だった。


 語り:イギリス王立グレイトベン大学 ジョージ・トムスン教授

「人は自主性の獲得によって非・合理的な判断・行動をおこないます。これが格差、つまり生き難さを生む要因なのです。ところが一度獲得された自主性というのは摩擦係数ゼロの宇宙空間を漂うようなもので、自らを止めることができません。そこで必要となってくるのが第三者による関与です。簡単にいえば、S嬢による調教です。人類のM化こそが、効率的かつ平穏無事な生活を保障してくれるのです」


 意識を取り戻した田村はネクタイを締め直し時間をチェックする。

「〇x商事とのアポイント10分前だ。ありがとう。頭もクリアになったし、うまく商談がまとまりそうだよ」

 井上は差し出された万札の束を引っ掴むと足早にその場を後にした。

 幸福な社会の運営に必要なSM比率は2:8と言われていた。僅か2割に該当する貴重な真正S嬢である井上は、国からの補助金+調教人数に応じた形での給与もあり、何不自由ない生活を送っていた。しかし―

「私は、私だけの奴隷がほしい。量より質なのよ、大事なのは」

 井上の心中は穏やかではなかった。足下からの軋む音に視線をやると、ガラスのパンプスに、ヒビが入り始めていた。


  

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「ちょもらんま」 もう、朝から笑いました。 補助金が出るのだったら、S譲もいいかも……。あ、間違ったS婆でした。
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