ロマンと門番と今後の方針確認
ロマンと門番と今後の方針確認
ロック鳥との遭遇から1時間ほど空を飛ぶとそこには城壁に囲まれた町があった
門のところでは門番に止められて審査を受けているのが見える
もちろん肉眼で確認できる高度ではないので、魔法による確認だ
「さて、勢いで町まで来たのはいいが、ここで問題がある」
「私たちの言葉が通じるかどうかですね?」
優秀な相棒の言葉に俺はうむ、と頷く
直観は言っている、たぶん何とかなるんじゃね? と
だがここは石橋をたたいて渡りたいところだ
「ちょっと、姿隠しを使って確認してくる」
「マスターここは私にお任せください」
そういうと風は自分の体を本来のサイズである、俺の手のひらサイズまで小さくなる
「この状態で姿隠しを使えばほぼ見つかることはないですから、ちょっと行ってきますね」
「わかった気を付けてな」
偵察を風に頼むと俺は着陸するための場所を探す
さすがに町の近くに空から降りていくのはまずい
力を隠す気はないが、だからといって不用意に力を見せつける必要もない
そう思い、人に見つからずなるべく町の近くで降りれる場所を魔法≪天眼≫を使って探す
これはもともとゲームでは周囲のモンスターや採取ポイントを探す魔法なのだが、これも≪魔術改造≫によって自分の周囲を見ることができる魔術へと改造することに成功した
「これでいつでも女湯がのぞけるな、そもそも風呂があるのかも微妙だが」
女湯覗き、それは男のロマンである
「絶対にさせませんけどね?」
「なんだと…! って戻ってたのか風」
俺が一人男の、いや漢のロマンへと思考を沈ませていたらいつのまにか風が戻っていたようだ
やはり、風には理解できぬか
「普通に犯罪ですし、この世界では犯罪ではなくても私の中では犯罪ですのでギルティです」
俺が言おうとした詭弁を先読みしたように潰す風さんのその姿はまさしく鬼であった
「それで下の様子はどうだった?」
これ以上は何を言おうと無駄だと悟った俺は白旗を上げながら、話題を転換する
まだ日が落ちるまでは時間があるとはいえ、できれば早いうちに町に入って今日の宿を確保しておきたい
「どうやら大丈夫なようです、若干、なまりなのか聞き取れない言葉がありましたが、基本的には聞き取れました」
「そっか、それじゃあ、こっちで降りようか」
風を連れて≪天眼≫にて見つけた着陸ポイントへと向かう
門から歩いて30分ほどの林のへと降り立った俺と風は改めて人型へと戻る
「小さいままのほうがよかったんじゃないか?」
「マスターに変な虫がつかないように警戒しないといけないので」
俺の言葉に風は笑顔で答える
変な虫って、俺としては風の見た目に騙されて変な男が寄ってくるのを懸念してるんだが
「大丈夫ですマスター、この世界は一夫多妻が認められているようですし、私も奥さん仲間が増えることについて文句はありません」
ニコニコと笑いながら言っている風さんの言葉がよく理解できない
というか、風さんすでに自分は奥さんだといっているように聞こえたんだが
「何? 聞こえない」
ここは鈍感系主人公を演じることで回避しよう
「それは残念です、きっと後悔なさることでしょう」
風さんの笑顔が怖いです
「うむ、この話題については後日ゆっくり話すとして、そろそろ門のほうへと行こう」
実際男の子ですし、興味がないわけではないんだが、今はそれよりも考えることはいくらでもある
お約束で言えば俺が呼ばれたことには理由があり、その理由はとても面倒な理由というのが定石だ
ならばそれについてこれるだけの能力を持った相手じゃないと俺も安心して連れて歩けないしな
だから、まずは町に入ろう、そして宿をとってゆっくりと考えるのだ
「あっさり入れたな」
「そうですね、正直問題の一つくらい起きることを予想してたんですが…」
あの後、門の前の列に並び、風を見るおっさんたちの視線に殺気を返しながら少し待つと自分の番がきた
身分証や入門料が取られるかと思ったらそんなこともなく、あっさりと入ることができた
商人や馬車持ちは危険なものや取引禁止物などが入っていないか確かめるために審査をするが、それ以外については基本的にスルーらしい
「さて、まずは宿にいこう、その後は何か金を稼ぐ手段を探さないとな」
「お約束の冒険者ですね!」
俺の言葉に何が楽しいのか風が楽しそうについてくる
改めていうが風は美女である
そんな美女が俺というさえないとまではいかないが、決して普通の域を出ない人間と楽しそうに歩いている光景は周りから見れば、嫉妬ものである
現に周囲からは舌打ちや敵視の視線が飛んでくる
喧嘩を売ってきたら路地裏に連れて行ってお小遣い稼ぎと案内板代わりにするがな
そんなハプニングを期待半分で街中を歩くも残念ながら誰も絡んではこなかった
「しかたない、その辺の店で買い物をして宿屋のおすすめでもきくか」
「そういえばマスターお金とかあるんですか?」
今更の風の質問に俺はズボンに手を突っ込んでそこからアイテムボックスを発動させ銀貨を一枚取り出す
最初に確認したときアイテムボックスには銀貨が10枚ほど入っていた
これは日本円にしておよそ10万円であり、銀貨1枚あれば2部屋とっても3泊程度はできると書いてあった
「しかし、ヘルプが便利すぎて、異世界のお約束のいくつかがないな」
回避してしまったイベントをいくつか思い浮かべる
「面倒なことは起きないほうがいいですし、それにさっきの鳥を売れば宿に泊まるどころが宿ごと買えてしまうのではないですか?」
鳥とは先ほど上空で戦ったロック鳥のことだろう
あれもアイテムボックスで一瞬でバラバラにしたが普通なら解体するなど不可能なサイズである
「正直売らないで済むなら売りたくないがね」
どう考えてもトラブルの元だし
「そうですねー、それにマスターの≪クリエイト≫の材料として色々使えそうですし
≪クリエイト≫ゲーム中ではクリエイターという職業のスキルである
その名の通り様々な材料から薬や装備を作り出すというスキルだ
将来的に面倒なしがらみから抜け出すために小さな村とかで工房を立てて過ごすことも考えている
というか、風と相談してこの先の生き方の最有力候補だ
「光風のアトリエですか?」
「そこはカタカナだろ、まぁ、俺が女性ならそれも考えたがな」
そんなくだらない話をしながら近くの屋台へと足を向けた
屋台の料理は香辛料がしっかりと効いてて美味しい串焼きでした
「いらっしゃいませ、猫の足音停へようこそ」
宿屋のドアを開けると看板娘であろう女の子がこちらへと向かって歩いてきた
猫の足音とか、某ゲームなら神器の材料になりそうな名前だな
「泊りです、3日ほどで部屋は一つでお願いします」
俺がどうでもいいことに思考をとられていると風が話を進めていた
いや、待て一部屋だと…
「わかりました、一部屋ですね「待った、二部屋」「一部屋でいいです」」
ここに俺と風による仁義なき戦いが始まった…
「風さんには勝てなかったよ…」
俺は部屋の隅でうなだれている
あの後、風との舌戦は、風による二部屋借りるなんてお金の無駄ですし、夫婦なんだからいいじゃないですか、が決まり手となり、結局1部屋ということになった
ベットは2つの部屋で頼むという俺の最後の抵抗だけは受け入れられたが、それでも年齢=彼女いない歴の俺にはきつい
「今夜寝れるんだろうか…」
自分のベットでうなだれる俺とは対照的に楽しそうな風は
「そんなに激しくですか…、どんとこいです」
「そういう意味じゃねえから!」
性的な意味で言ったわけではない、大体しばらくそういったことはするつもりはない
「? 何でですか、私は準備オッケーですよ?」
「風さんが肉食系過ぎて辛い、現状自分たちの状態が安定してるとは言えないし、落ち着くまではそういった行為はなしだ」
そもそも精霊である風と俺が交わって悪影響がないのかだとか、色々と調べなくてはいけないことには安心もできない
「そうですか、わかりました、では早くお金をためて隠居≪桃色≫生活にはいれるようにしましょう」
「待て、今変なルビふらなかったか、隠居に!」
「気のせいです、さぁ、マスター行きましょう冒険者ギルドに、そしてお約束の絡まれイベントを起こしてぶっとばして、Aランクとかに登録されましょう」
「待って、率先して面倒事を起こすのやめて!」
こうして俺と風は宿も確保したため次の目的地である、金稼ぎの手段、冒険者ギルドへと向かうのだった…
天眼
MMOじゃないので索敵とかで時間取られるのは超だるいという要望でできた魔法
魔術改造による魔改造により、ロマンスキルになった
姿隠し
ストーカー御用達呪文
クエストなどでNPCを尾行する際などに用いられる
クリエイターとクリエイト
武器や防具薬などを素材から生み出すスキル
さすがに巨大飛空艇とか天地開闢砲とかを作る予定はありません