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初戦闘とお約束と

初戦闘とお約束と


VRの中では何度も経験した空を飛ぶということも実際にこの体で体験するのはまた感覚が違った

空の青さも空気の抵抗も全部がよりリアルに感じることができる



「これが飛ぶということなんですね」

俺の腕につかまっていた風も同じことを考えていたようで、感動したよう声をあげる

AIだったころの記憶はあいまいなようなのでこれが初飛行ということになるのだろう

雲よりも上へと至ったところで一度上昇を止める

眼下には雲の海、どこまでも続く青い空に、柔らかい太陽のひざし

異世界でも空も元の世界と同じなんだなと思うと少しだけ胸にちくっとした痛みが走った

強い未練があるわけではないし、両親も俺が若いころに他界している、兄妹も居らず、友達もさほど多いわけではなかった

それでも、元の世界にもう戻れないのではないかと思うと、少しだけ胸に痛みが走る



「マスターは元の世界に帰りたいのですか?」

俺の相棒がまるで心を読んだかのように話しかけてくる

「いや、そんなことはないがどうしてそう思った?」

「なんとなく、マスターが元の世界のことを考えているような気がして、以心伝心のスキルのせいでしょうか?」

以心伝心、ゲーム時代は相棒にこちらの意図した行動をとらせるためのスキルだったはずだが、そういえばフレーバーテキストにそんな効果が書いてあったな

「確かに、元の世界に未練がないわけではないが、それよりもこっちの世界でのこれからにワクワクする気持ちのほうが強いな」

これは偽りのない本音である

剣と魔法のファンタジーの世界で、圧倒的な力を持ち、隣には可愛らしい相棒がいるのだ

これで興奮しないほど、中二心を失ってはいない



「それなら、よかったです、私だけマスターと一緒に入れて喜んでいたのかと思って…」

そう言う風の顔は赤く染まっていた

以心伝心さん仕事しすぎじゃね?

「漠然とした感情しか流れ込んではきませんけどね」

つまり、風はエスパー的な力で俺が言葉にしていない部分まで読んだと申すか

精霊女帝恐ろしい子…!



「それはそうと、どちらに進みますか?」

風の言葉にそういえば今日の宿を探すために空に上がったんだったなと思い出す

空の感動にすっかり忘れていたぜ

「棒でも倒して決めるか、風が」

魔力で木の棒を作り出すと風に手渡す

俺が倒そうかと思ったがよく考えると俺の運がEランクである

果たしてどこまで運が悪いのかわからないが隣にいるAに任せたほうが確実なのは間違いない



「それはいいですが、ここ空ですけど、どうやって棒を立てるんですか?」

「安心しろ、俺の魔力で作ったその棒は適当に立てたいところに置けばそこに浮く」

天然系主人公でもあるまいし、そのくらいのことは考慮してある

冷静沈着スキル先生は伊達ではないのだ!



「マスター、それだと倒れないと思うんですけど…?」

風が言いづらそうに棒を宙に浮かせた状況で意見を述べる

……そんな馬鹿な!

「そこはほら、運Aの力で何とか!」

「さすがにそれはどうにもならないかとおもうんですけど…マスター!」

下方、雲の海から何か大きなものが突っ込んでくる気配を探知する

わずかに遅れて風も気づいたようだが、そのころにはすでに魔力を推力にその場を離れている

雲の海を割って飛び出してきたのは…巨大な鳥だった

ただし、その大きさは異常で、嘴だけで俺より大きい、全長はどれだけになるのか…

ゆっくりと、いや、高速で飛び出してきているのだが、大きさが大きさだけにまるでゆっくりと全身を表したのかのように感じる



「スキル発動、モンスター鑑定!」

こんな巨大な鳥モンスター、見たことがない、そのためにまずは情報を得るためにスキルを使う

モンスター鑑定、その名の通りモンスターのデータを見れるスキルだ

ゲームじゃない以上使えるかは微妙だが…



ロック鳥

LV193

身体能力 B 魔力 B

戦闘技術 D 魔道技術 C

空の覇者とも呼ばれる鳥形モンスター

その戦闘能力から現地では都市喰らいなどと呼ばれる

巨大なものでは20メートル級が存在し、ワイバーンですらエサとすることがある

空を飛ぶために魔力を常時使用しているため、実際に使用できる魔力はC相当



「わーぃ、お約束だー」

「転生者はなぜかとんでもモンスターに襲われるお約束ですか…」

「飛んでも回避できなかったな!」

俺のドヤ顔に風は、そういうのいらないですからと、胸にツッコミを入れる

「風はさがってろ、俺がやる」

「わかりました、でも危険だと判断したら打ちますからね?」

ハストゥールを発動待機状態の風に心配するなと手を振ってロック鳥へと近づくと迎撃するように風の魔術が飛んでくる

おそらく切断力を持たせた風を飛ばす魔法だと判断した俺は右手一本でそれを打ち払う



「なんだこんなもんか?」

馬鹿にするようにロック鳥に言うと言葉は理解できなくても馬鹿にされたことは雰囲気で察したのだろう、一度に数十発の風の弾を打ち込んできた

一発一発が地面に大穴を開けるような威力のそれも俺から見たら子供の遊びでしかなく



「オッケーオッケーこの世界の基準はなんとなくわかった、もういいよ」

都市喰らいなどと呼ばれ、恐れられているモンスターがこの程度だと分かったので、もう十分だ

打ち込まれた風の弾は風の魔法壁で防御し、右手を鳥へと向け

「風牢陣」

ロック鳥の周りを風の障壁で囲み内部に空気が入り込まないようにする

元々は敵の動きを封じ、Dotダメージを与えるものなのだが、スキル≪魔術改造≫によって、内部を真空状態に近づけ、さらに周囲の空気を取り込めないように改造したのだ

結果巨体を維持するために必要な酸素なのか、それ以外の何かなのかわからないが、内部の空気を吸い尽くしたロック鳥は激しく暴れ、1分ほどたつとその動きを止めた…



「こんなもんかねえ」

動きを止めた鳥の嘴を掴みあげてアイテムボックスに収納し自動解体の機能を使うと、肉、爪、羽と言った有用そうな部位に分かれていく

「お疲れ様でしたマスター」

「…思った以上に俺達の戦闘力は異常なのかもしれないな」

「どうしましょう、力を隠して生活しますか?」

「様子を見てだな、この世界が単一国家なら国から逃げ回るのも面倒だし、隠すがそうじゃないなら、面倒事に巻き込まれるたびに世界中旅して暮らすのも悪くないしな」

どうせ異世界転生のお約束で力を隠しても隠し切れないっていう展開が俺にも起きるだろうし、それなら初めから見せつけて俺たちに敵対する気を起こさないほうだいいだろう


「了解しました。 あ、マスター、棒が倒れてますよ!」

風に言われ棒がたっていたあたりを見ると先ほどの戦闘の余波で棒が北のほうへと倒れていた


「それじゃあ、行くとするか」

「何が待っているのか今から楽しみですね!」

この先で待っているものに心躍らせながら俺と風は北へと進路をとる

この世界に俺達を呼んだ神の思惑に図らずとも乗っているなどとこの時はまだ俺たちは知らなかった

以心伝心

ゲームではパートナー妖精やペットモンスターに自分の望むスキルや退避行動などをとらせるためのスキル


モンスター鑑定

人相手にも通用する

テキストの部分は地味に神様からの恩恵


今回のロック鳥

20メートルには満たないものの15メートルくらいのサイズ超大物

当然それを捕まえるための風牢陣も超巨大になったため地味にMPの負担が大きかったり

アイテムボックスへの収納は収納したいものを手に持った状態で収納と念じることでできるので、今回は嘴を掴むことで収納しました

肉はさっぱりとしているが油がとても旨みが濃い

そのため油を落とせばさっぱりと楽しめ、油を残した状態だと濃い鳥の味が楽しめる絶品調理素材

から揚げやステーキにしてどうぞ

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