表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

現実

このお話は重めの話と少し残酷な表現があります

後半にありますので、ご注意ください

厳しい現実


西の森へと歩くこと1時間ほど、目の前には大きな森があった

セシルさんが言っていた通り他にも複数のハンターがいたため、あまり無理なダッシュや空を飛んでの移動が封じられているため、結構な時間がかかってしまった

森へと向かうものもいたが、その他に手前の平原でウサギなどの小動物を狩ったり、薬草を採取している人達もいた

そういった人達はほとんどがまだ若く、恐らく10代前半だろうという顔つきをしていた

装備についても皮の鎧を付けていればいいほうでほとんどの人が厚めの服という格好だった


「さてさて、索敵と行きますか≪天眼≫≪天眼改≫」

「私は精霊に聞いてみます」

森に入って少し歩き、周りに人がいないことを確認して俺は魔術を発動させる

≪天眼≫で空から見上げるように森を見渡し、≪天眼改≫を気になるところへと飛ばす

風のほうは、周囲にいた精霊にこの森にいる魔獣の分布図などを聞いているようだ


「おや?」

気になるものを見つけた、10人ほどのチームが周りから見つからないように森の奥へと進んでいるのだ

一人がレイオスに次ぐ実力者、他は酒場でからんできた奴らと似たり寄ったりといった実力のチームだ

≪直感≫が告げる、こいつ等は僕に面倒事を運んでくると


「マスター、この先に3匹ほどのオークが狩りをしているそうです」

どうしたものかと考えていると、風から声がかかる

とはいえ、さすがに感に従って彼らを撃退するなどという行動にとれるわけでもないため、少し迷ったものの、二つの≪天眼≫を解除し、風が精霊から聞いたオークのほうへと向かうことにする


この時、彼らに対して接触していれば、この後に起きる出来事を回避できたかもしれない




少し先に3匹のオークが歩いている

上半身は裸、下半身には腰ミノのようなものを巻き付けて、手には槍を持っている

「モンスター鑑定」

俺はオーク達にばれないように、スキルを使う

なんとなくCランクのステータスの基準を知りたかったからだ


オーク

Lv32

身体能力D 魔力D

戦闘技術D 魔力操作E


「弱くね?」

「アルファベットが1つ上がるまでの幅が結構広いのではないでしょうか? 他の冒険者の能力値を知らないので何とも言えないですが」


そうなのだろうか、例えば1~100までがE 101~1000がDとかか?

それなら確かに、Cランクの魔物がこの能力値なのも頷ける

残りの2匹も調べてみたが、30と28レベルだった

能力値も大体D~Eと変わらないし、風の推測が当たりかな?

それとどうやら、MPが表示されないのはどのモンスターも共通なようだ

ロック鳥とこいつ等3匹だけしか調べてないが、全員MPの項目は存在しない


「さて、さくっとやってしまうか」

「了解です、マスター」

返事をすると同時に風から膨大な魔力が放たれる

手加減無しの≪炎翼砲≫である

「燃える、森が燃えちゃう!」

「大丈夫です、接触対象の接触部位だけに熱が集中するようにしましたから、≪魔術改変≫便利ですね」



3匹のオークは膨大な数の炎の羽により消し炭すら残らず消滅した

もちろん、討伐部位も、魔石と呼ばれる魔物の核も含めて…


「やりすぎちゃいました」

僕に向かって晴れやかな表情を向けてくる風を見て思った

早急にストレスを発散させないと、あかんと

「次からはウェルダン位で勘弁してあげてくだしあ」

これが僕に言える精いっぱいだった



その後、5匹ほどのオークを倒し、魔石と肉をアイテムボックスへと放り込む

討伐部位は尻尾で豚の尻尾そっくりであった(しかし、味は鳥である)

オークの討伐は1匹につき銅貨3枚、魔石が銅貨2枚である

銅貨が10枚集まって銀貨なので、1匹5000円換算になる

それとは別にオークの肉は平均銅貨5枚で買い取りしてもらえるため、5匹で銀貨5枚程度である

「楽に稼げるとはいえ、これじゃあ隠居するには遠いな」

「Bランクに上がってもっと稼げるところに行きたいところですね、とはいえそのためには面倒な依頼を受けないといけないようですが」

採取は別として護衛が面倒である

もしも、風が貴族に絡まれたら、風が我慢できても俺が我慢できそうにないし

「宿代には困ることはなさそうだし、しばらくはオークを倒しながら、何か金策を考えるか」

「そうですね、マスターが薬草を回復薬にクリエイトして、設けるという手もありますし」

そういえば、この世界の回復薬はどんなものなのだろうか

ふと気になって、アイテムボックスから一つ取り出して≪鑑定≫を使ってみる


ポーションEX

種類 回復薬 ランク レア

振りかけることで、肉体の破損すら回復することができる

ただし、失われた肉体を回復するにはさらに上のランクのポーションを必要とする


「わぉ」

「もうアイテムボックスにある回復アイテムを売るだけで一生生きていけるんじゃないでしょうか」

しかし、メインイベントを終わらせてさらに、ここでお金稼ぎという目標まで失っては、俺は何を目的に生きていけばいいんだ…

さすがにニートライフはちょっと困る

ここが現代ならゲームをやり続けるという選択肢が取れるがこの世界は娯楽が少ないのだ

それこそ、食う、打つ、寝る(性的な意味も含めて)しか、娯楽がないと言ってもいい

御使い様が娯楽文化を残しては行かなかったのがなぁ


ふと、地面が揺れているような気がすると同時にスキル≪危機感知≫が警鐘を鳴らす

「マスター!」

ほぼ同時、風も気づいたようで、俺をかばうように立つと、魔術の詠唱を開始する

現在俺達がいる場所は森の中の開けた広場になっている

ここで迎え撃つと目で合図すると風も頷き詠唱を続ける

接敵するまでの時間は十分にあり、風が発動待機状態になった後、それは現れた

ズタボロになった子供オークを掴み、その後ろ、膨大な数のオークを引き連れたハンターだった

ハンターの男達へと向かってくる、数は5人ほどで、それは先ほど、天眼で見つけたハンターだった

どきやがれ等と怒鳴りながら必死の形相でこちらへと向かってくるハンターの眼前に俺は≪魔力障壁≫を生み出す

突然現れた壁に勢いよくぶつかった男達は尻もちをつく、衝撃は柔らかく設定した≪魔力障壁≫に吸収され怪我はないようだ

一瞬、何が起きたのかわからずにあっけにとられた男達だったが、後ろから迫るオークの足音に我に帰ると、絶望的な表情を浮かべる

だが、同じように後方から迫っていたオークも≪魔法障壁≫で防がれたのを見て、安堵の息をつく


「で、これはどういうことなんだ」

俺は集団の戦闘を走っていた男に問いかける

先ほど見た集団唯一のBランクの男だ

「おい、さっさとこの魔術を解除しやがれ、俺を誰だと思ってやがる俺は、貪欲なる飢狼のゴンゾ様だぞ!」

「貪欲なる飢狼というと、昨日絡んできた人たちと同じチームですね」


そう、昨日あの後セシルさんに聞いた話の中で出てきたチームだ

貪欲なる飢狼、乱暴な人間ばかりが集まりやりたい放題のチームらしい

しかし、リーダーがこの町で数少ないBランクのため他のチームの人間は逆らえず、それによりさらに増長していったとか

ギルドとしても何度も注意しているのだが、一向に改善が見られず、ハンターの資格没収の声も上がっているらしい


「おい、聞いてるのか、この俺に魔術を使ったことも今ならまだ許してやる」

俺の見た目が子供に見えるからだろうか、高圧的な態度をとってくるゴンゾ

冷静に考えれば、これだけの数を対象に捕まえたままにできる魔術師を相手に勝てるという思考には至らないはずだが、人間追い込まれると冷静な判断ができなくなるものだ

それよりも俺が気になっているのは、ゴンゾが持っているオークの子供とオーク達が浮かべている怒りの目である

いや、怒り等という可愛いものじゃないあれは、もっと恐ろしいものだ

自分が死のうともこいつ等だけは絶対に殺すという目


「チッ、ガキを殺してオーク共を呼び出して大量に殺していくつもりだったんだよ、それが馬鹿がヘマしやがって一度に大量に呼び寄せやがった」

その言葉に俺は目の前のこいつ等を許す気がなくなった

後ろにいるオーク達は子供を殺された親であり、その仇が目の前にいるのだ

ならば、子供の敵討ちをさせてやりたい

だが、それでいいのか? 殺したのは人間で、殺されたのは魔物だ

常識的に考えれば人間に味方するべきだ

だが、どうしても両親の最後が頭をよぎる

≪弟を通り魔に殺され、その通り魔が社会的な責任能力がないからと言って、減刑された時の両親の目だ≫


「マスター」

「風か、俺はどうするべきなのかな」

この時の俺はきっとすごく情けない顔をしていたと思う

わかっている、常識で考えれば、オークを殺し、ハンターを生かすべきだ

だが、割り切れない、納得できない

だから風に決定権を委ねた、風が人間を生かすべきだと言えば俺はそれを受け入れることができる


「マスターのお心のままに、例え、世界が批判しようとも気にする必要はありません、私は、この件についてはマスターがどちらを選ぼうと肯定します」

もちろん、明らかに間違って言うと思った場合は否定しますけどね?と俺の目をまっすぐ見つめて告げた

「そもそもに彼らはハンターで、彼らの命は彼らの責任なのです、自分たちの実力を見誤り、彼らは死んだそれだけのことです、だから、マスターはマスターのお心のままに少しでも後悔が残らないほうをお選びください」


どちらを選んでも俺は後悔するだろう、ならば後悔の少ないほうを選んでほしいと

「そしてその結果、この世界が私達の決断基準を異端だというなら、それはそれで構わないではないですか。私達は、群れることなくこの世界で生きることができるだけの力を持っているのですから、2人だけで愛に生きるというのも楽しそうなものですよ?」

「おい、さっきから何を言ってやがる」

障壁が解かれないことに苛立ちを隠すことなくゴンゾがこちらを見てくる


「分かった解いてやる、ただし、彼らの憎しみを受けて生き残ることができたらな」

俺はオークとハンター達の仕切りとなっていた障壁を解除した

オーク達はハンターへと殺到する

「てめえ、なにしやg」

ゴンゾは最後までしゃべることはできなかった

もっとも強い憎しみをその目に宿したオークが彼を地面へと押し倒したからだ

そこからの光景は凄惨の一言だった

一撃で死ねた者は幸せだっただろうと、そう心から言える


全てが終わったあと、オークの目には満足があった、理解しているのだろう、この後自分達が死ぬことを

それでも、敵を打てたことで一定の満足感が持てたのだと思う

「マスター、ここは私にお任せください」

結界を隔ててオークの前に立った風が俺を押しのけるようにして、間に立つ

「だめだ、これは俺が終わらせないといけないんだ」

「既に魔法を発動待機状態なので、無駄にしないためにも使わせてください」

俺は知っている、既に一度目の魔法を破棄して、新たな詠唱をしていたというのを

それでも風の心が嬉しくて

「分かった、頼むよ、風」

こくんと、無言で頷くと、風がオークの群れに手を向ける

「せめて安らかな終わりが訪れることを≪聖天昇光≫」

本来なら、アンデットを浄化する呪文だが、≪魔術改変≫により改造したのだろう

オーク達は安らかな表情を浮かべると、一人また一人とその場に倒れていく

最後のオークが満足げな表情でその場に倒れると、後には俺と風だけがその場に立っていた


「討伐部位だけもらって、残りは埋めよう」

なんとなく、彼らの体を解体する気にはなれなかった、風も同様のようで、魔術で地面に大きな穴をあけると、そこに一人一人、地面へと横たえていく

50数匹分の遺体を横たえると、俺達は一礼し、その後、穴を埋めた

ハンター達の遺体はそのままだ、きっと誰かが見つけて、彼らの遺体とハンターカードをギルドへと運んでくれるだろう

精神的に疲れてしまった俺達は狩りを切り上げ、ギルドにも向かわずそのまま、宿へと戻り、布団へと横になった


俺達の異世界ライフ2日目は苦い思いと共に終了した

お金

半鉄貨(真ん中に穴の開いたお金に半とつく) 10円

半銅貨  100円

銅貨   1,000円

銀貨   10,000円

金貨 1,000,000円(円換算)

聖天昇光

某ゲームにおけるマグヌスと言ってももうあのゲームをプレイしたことのない人も多いでしょう

不死者や怨霊相手にのみ効果を発揮し浄化させるスキルだったものを魔改造したもの、相手は成仏する


ステータスについて

数字化するとこんな感じです


EX 50,001以上

S 25,001~50,000

A  10,001~25000

B  1,001~10,000

C  501~1,001

D  101~500

E  100以下

例として、コウのパラメーターだと

STR 76000 VIT 71000 AGI 9000の合計236,000(1000以下切り捨て)なのでEX

MAG 90000 MIN(魔法抵抗) 57000の合計が147,000なのでEX

技術系はまた別計算となります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ