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1・スペースポート

 一人で企画を実行する【セルフプランニング】シリーズ。

 今回の一人企画は「『空想科学祭』が終了した今、一人でもSFを書き続けます!」という心意気で『SF一人祭2013』を発動中、この『SF一人祭2013』は秋口までズルズルと何点かのSFを書きたいなぁと思っております。(あくまでも予定は未定)

 第二弾は、前に書いた時はチート風情で不人気だったけれども自分では割と好みのキャラである『CDF』を登用したスピンオフ・ストーリーで構想。更に今回もお題絡みで「朝陽 遥」さんのツィート「SFで女性がハタチそこそこくらいまでしか生きられない社会の話」をテーマとして、いくつかの仕掛けを組み込んで料理してみました。巧く活きましたら拍手喝采を!

「自動管制発令。大型航宙船がポートエリア内を進行中」

「船名及び船籍を確認せよ」

「船名は『TSS・クラリス』、GSFギャラクシースペースフォース(宇宙軍のこと)の船籍ですが、識別信号はなぜか民間船になっています」

 オペレータとやり取りをしながら、チーフは入港船予定の一覧表をパラパラとめくった。

「あった、あった。これだな。特殊軍用船か。何となく厄介な予感がするなぁ。こーゆーのはさっさと処理するに限る!」

 しかめっ面のチーフは顎に手を当てた。

「『TSS・クラリス』が入港許可を求めています」

 オペレータが速やかに報告する。

「入港許可を伝達せよ。ポート・セブンへの接岸指示が出ている。速やかに誘導せよ」

 チーフはオペレータに淡々と指示を出す。しかし、オペレータはチーフの指示に驚いていた。

「えぇ? この、図体があんなにでかくて、しかも薄汚れた汚らしい軍艦なんかがポート・セブンに接岸しちゃってもいいのかしらん?」

 オペレータの独り言にチーフが反応した。

「入港船書類によると、この惑星フェミニンの自治政府にとっては非常に大事なお客様らしい。それ以上のことはGSFレベルの機密扱いだ」

 チーフは吐き捨てるように言った。その反応にオペレータは薮蛇にならないようにとっとと作業を続行した。

「了解。『TSS・クラリス』に、ポート・セブンへの接岸を伝達します」

 ため息をつくオペレータにチーフが声を掛ける。

「何でも、この星を救うために来たらしい。この星の『風土病』を解決するとかなんとか。それが本当かどうかは判らない。お偉い様方の立ち話をそれとなく盗み聞きしただけだからな」

 チーフは既に、次に入港する航宙船の書類に目を向けていた。

「その『風土病』ってのは、二十歳以上の女性はすべて死んでしまうというヤツですよね? 原因はもちろん、その病状すらもはっきりと解っていないとか。病気なのかどうなのかすらもハッキリと解明されてないらしいって……」

 オペレータはひどく軽いトーンで呟いた。

「あぁ、それだ、それ。だから、この星に女性が降りることは禁止されている。その癖、惑星上で出産に関しては女の子しか産まれないし、女性だけが異常に老化が早くて十代前半で子どもを産むのがライフスタイルらしい。『惑星フェミニン』とはよく名付けたモノだと、赴任当時は感心したよ」

「私も女性ですから、当然のごとく星に降りることは許可されていませんしね……けど、この容姿ならギリギリ降りられないこともないはず。うふふふ……」

 オペレータのおどけた言葉に、チーフは静かに真面目に言い返した。

「止めておきたまえ。降りる前に風土病でやられてしまうよ」

「まっ! なんて酷い言い方なの!」

 オペレータはむくれて三次元ディスプレイの方を向いてしまった。

「おいおい、誘導だけはちゃんとやってくれよ。お偉い様方に叱られてしまうからな」

 チーフはオペレータに懇願した。

「分かってますってば」

 ふて腐れながらもオペレータは完璧に仕事をこなした。

「ポーターより入電。『TSS・クラリス』は無事に接岸。ボーディングブリッジを接続中」

「やれやれ」

 チーフはホッとして椅子に身体を預けた。


〔惑星フェミニンのポートエリアに到着。入港許可が下りました。コントロール(管制センター)は『ポート・セブン』に接岸せよとのことです。接岸後すぐにボーディングブリッジに接続します〕

 クラリスは静かにラリーとユジンに報告した。

「ほほう、ポート・セブンとはまた高待遇だな」

 ラリーはニヤリと呟いた。

「何なの、その『ポート・セブン』ってのは?」

 不思議そうに尋ねてくるユジンに、ラリーは優しく説明した。

「ポート・セブンっていうのはね、全銀河系共通で使われているVIP専用スペース・ドックの名称なのだよ。星間交流などの式典程度でも使われることは滅多にない。そこに迎え入れられることは高貴で貴賓だということの証明だな」

「あたし達は只の『便利屋さん』に過ぎないですわよ?」

 話を聞いてビビっているユジンにラリーは笑って答えた。

「そりゃ、このラリー様が宇宙の果てからわざわざやってきたのだからねぇ、くっくっく」

 今回のラリーはスラリと身長が高くて、しかも筋肉質のマッチョなスタイルだった。しかもGSFの制服をシッカリと着用した凛々しい姿だった。

「えぇ? そういう問題ですか? 解釈がかなり歪曲していると思いますけど」

 コーラルレッドの生地にレースをあしらったイーブニングドレスを着て、スラッとしたスリムなボディを晒している、ソバージュの赤毛で小顔の可愛いユジンが、腕を組んでラリーを怪しく睨んでいた。

「そう言いながら、ユジン、君はかなりのドレスアップをしているじゃないか」

 ラリーの言葉に、ユジンは更にムッとした。

「ラリー、あなたが正装しろって言ったからじゃない!」

 涼しい顔でラリーは言う。

「そうさ。惑星フェミニン政府のお偉い様方が歓待するんだ。こちらもそれなりの格好をしないとね」

 そして、ラリーはもう一言を付け加えた。

「それにユジン、君ほどにそのドレスが似合う最高の女性は、他にいないぜ」

 その言葉にユジンは赤く頬を染めながら、更にくるりくるりとターンをした。

「あら、そーお? あたしもなかなかいい感じじゃないかなぁって思ってるの、うふふふ……」

 そう言ってユジンがラリーを見た時には、既にラリーは仕事のファイルを眺めていた。

「もう! あなたはいつもそうなんだから!」

 ユジンはムスッと脹れた。


「今度の仕事は厄介だな」

 ラリーが呟く。

「いつも厄介じゃないの?」

 ユジンが皮肉めいた間の手を挟む。

「資料によると、惑星フェミニン上に居住する女性は全て二十歳で死亡するという『奇病』が蔓延しているらしい」

「嫌な惑星ねー」

「それに、女性だけ老化の速さが異常なんだと。だから、女性の殆どが十代前半で子どもを産まざるを得ない状況らしい」

「益々嫌な惑星だわー」

「何とかして欲しいと惑星フェミニン政府がGGギャラクシーガバメントに泣き付いたと」

「当然の成り行きよね、それは」

「かなり前にGGからGSFへと依頼が届いていたらしい。GSFも長い年月を掛けて地道な現地調査をしたそうだ」

「へぇ、そうなんだ。GSFも地味な仕事を頑張っているのね」

「ところがだ!」

 ラリーはファイルをパタンと閉じた。

「GSFはバンザイ。行き詰ってサジを投げたんだと!」

 ユジンは眉間にシワを寄せて苦笑いした。

「あらあら」

 苦味走った顔で、ラリーは言葉を続けた。

「そーゆー結果をGSFとしては表に出せない、出せる訳がない」

「それは確かにそうよねー」

 軽く受け流したユジンが言葉を続ける。

「それで、例の司令官を経てこちらに話が来たという訳ね」

「ああ、そうだ」

 ラリーのうんざりした顔にユジンも困った顔でうなずく。

「表向きは『契約』だが、実質は『命令』だ。いつもの通りのな、ははは」

 苦笑いをするラリーにユジンも苦笑いした。

「困った司令官さんですよねぇ、いつもいつも」

 でも、ラリーはくじけていなかった。

「まぁ、いつもの通りに『報酬は言い値で』を承認させたけどな」

 そう答えるラリーにユジンは微笑んだ。

「あなたもあなたね。うふふ」

 そう言った後、ユジンは切り返した。

「それで『勝算』はあるの?」

 ラリーは少しだけ眉をひそめた。

「行動してみないと何とも言えないが……」

 ユジンが追従する。

「言えないが?」

 ラリーは微笑みながらユジンを見つめて言った。

「何と言っても俺は『CDF』だぜ!『完全なる任務遂行者』だからな。この四次元時空で解決出来ないことは無いのだよ、ははははは!」

 腰に手を当て仁王立ちして高笑いをするラリー。

「頭痛が痛くなってきたわ……」

 そう言って頭を抱えるユジンだった。

 お読みいただき、誠にありがとうございます。

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