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2話 デュアルブート

2/12 修正しました!

読みやすいように改良しました

ここは体育館裏……放課後ということで殆どの生徒は帰宅している、だが

バレットとデフラグは対峙している、そして放課後もとうに過ぎ、夜が訪れ始めていた

他の生徒は帰宅していくが、この二名は下校などに構っている場合ではなかった


デフラグ「てかよぉ……お前マジに頭悪ぃなぁ、つか最強の能力者であるこの俺に

     お前みてーな無能でしかねえ、一般人風情が挑んできちゃうとか、自暴自棄にでもなっちゃってんのか?

     脳無しの虫けらに俺の名を教えてやるぜ、ありがたいだろ? 俺の名はデフラグ・ブルーバック

     つかお前は、このさき一生この名前に怯えて過ごす事になるんだよなぁ……可愛そうだわ」


ニヤリと笑い自己紹介を終えたデフラグ、バレットは彼のそんな言葉には耳を傾けず、言い放った


バレット「名前なんて聞いてねぇ! エリスに何をした!」


デフラグ「あ? ただ石ころを刺してやっただけさぁ

     ま……俺の事を一生忘れないように、深く深~く切ってあるがな……クヒヒヒ」


バレット「ふっざけんな! この野郎!」


エリスが酷く苦しみうずくまっているというのに、ケタケタ笑うデフラグに怒りが爆発したバレットは、拳を振り上げ飛びかかった

一方のデフラグは、迫ってくるバレットに対し顔色ひとつ変えず、いや、笑顔が更に不気味になった


デフラグ「クヒヒヒ……馬鹿だなぁ"地面から離れて直進する"なんて、マジに"軌道に乗って俺に向かってる"状態じゃねえか」


確かにバレットは確実にデフラグに向かって直進していた、しかしながら結果として、全く違う方向の壁に追突していたのだ


バレット「ぐはあっ!」


左肩を壁にぶつけ地面に崩れ落ちた、明らかに普通ではない

怒りに任せたせいで忘れていた、今目の前に居るこの男は【勝者録ウィクトルナンバー】と呼ばれる

強力な能力者の中のトップに君臨する者だということを、充分に警戒しなければ余裕で病院送りにされるだろう

……これは奴の力が起こしたものだ、そう悟ったバレットはすっくと立ち上がり、デフラグを睨み付けながら言う


バレット「お前……何しやがった……!」


デフラグ「あぁ? まぁ、雑魚には教えても支障無ぇか、つうわけで特別に教えてやるよ

     俺の能力は、二色配線デュアルブート性質としては、とある方向に進んでいる力

     ……つまり慣性だな、それで動いてるモノの方向をいじれる能力ってワケだ」


バレット「慣性で動いてるモノ……?」


デフラグ「てか……体で理解すれば良いんじゃねえのか!?」


デフラグはあっさりと、そして丁寧に自分の手の内を明かし説明してくれた

しかしこれはバレットが無能力者、つまり全くの脅威にならない小物だからこその行動である

漫画だかアニメではありがちな、敵キャラの無意味な自己紹介とタネ明かし行為とは違うのだ

それでも疑問の表情を浮べるバレットに間髪いれず、横にあった体育館倉庫の窓を蹴り割るデフラグ

すると割れたガラスは全てバレットの方向へ向かった


バレット「なっ!?」


この攻撃を、すかさず飛び退き避ける……だが避けきれず足に二発ほど食らってしまった

このままでは奴にやられてしまう、そう思ったバレットはすかさず足元の石を掴み取り

デフラグに向かって力いっぱい投げつけた

……だがどういうことだろう、風ひとつ吹いていないこの状況で、投げた石は右方向に急カーブし、デフラグに当たることは無かった

バレットのコントロールが悪いわけではない、バレットはその昔野球部に所属していたこともあった、肩には自身がある

さて、ではあの石に自身がなかっただけか、なんて納得できるわけがない


デフラグ「……でよぉ、俺がその慣性ってのをいじれる内容なんだが、簡単な二択を選ぶだけなんだよなぁ

     その二択ってのが”当たり”か”外れ”とどのつまり、お前の攻撃が当たるかどうかは俺が決められる

     俺の攻撃は、ミリ単位のカケラであろうと全部お前にぶち当たるってワケだ

     って、今適当に喋ってみたが理解してくれたか? 俺の能力ってやつを」


バレット「親切ご丁寧にどうも……って言いたいくらいにはな!」


するとバレットはデフラグに向かって走る、肉弾戦に持ち込む作戦だ

さっきは勢いで飛んでしまったが、地に脚をつけて走れば奴の能力で吹き飛ばされることはないはずだ

そう考え距離を詰めていく


デフラグ「はっはぁ! 無能力者は接近戦しかできねぇわな! ナイス判断だぜ虫けらぁ!」


そう言うと上着をバッと開くデフラグ、すると無数のボルトとナイフが姿を見せた

そして力任せにそれらを放り投げ、軌道を”バレットに当たる方向”に変化させた

バレットはとっさの事ではあるが、すぐに体勢を変え横方向に飛んでデフラグの攻撃をかわした


バレット「この野郎! あぶねーだろ!」


すかさず走り出し、デフラグに直進するバレットであったが

デフラグは懐から取り出したナイフをバレットに見せつけ、能力を使い、飛ばした

さっきよりは簡単に避けられるはずである、だが、バレットは避けることができなかった

左腕でナイフをもろに受け、深く刺さる


バレット「ぐああッ……!」


デフラグ「いやー、つかすげぇな、漫画でも見てるみたいだわ

     後ろに居る馬鹿女を庇って、ナイフを我が身で受けちゃうなんてよ

     感動巨編だなぁオイほんと泣けるわ、クヒヒヒッ」


そう、バレットの真後ろにはエリスが居たのだ、それで避けられなかった

デフラグの言うとおり漫画のような展開だが、バレットにとっては覚悟の要る展開であったのだ

……そんな中、気絶していたエリスは目を覚ました、まず目に入ったのは傷ついたバレットだ


エリス「バレット……そんな、私また……バレットに守られて……」


エリスは」なんとなく理解した、負けたはずの私の前にバレットが立っている理由を

では、「また」とはなんのことだろうか、では説明しよう

エリスとバレットは幼稚園からの幼なじみだった、そして体も弱く自分勝手でケンカ腰で男勝りなエリスは

色々な所でいじめを受けたり絡まれたりしていた、そんなときいつも助けてくれたのはバレットただ1人だった

バレットはケンカで額から血を流していても、どこを怪我しても"お前が無事なら良かった"その台詞と笑顔でエリスを助けていた

しかしいつからか、エリスはそんなバレットの優しさに、嫌悪感を抱き始めた

私がもっと強ければバレットは怪我をしないで済む、私がバレットに辛い思いをさせている、不幸にしてしまっている

そんな思いから、力が欲しいと思い続けてきた結果、彼女に能力が宿った

強さを手に入れた私は最強だ、もうバレットに守って貰わなくていいんだ

そんな彼女の安心はずっと続いていた、だがたった今ぶち壊れた、バレットにまた助けられてしまったからである


エリス「バレット……やめてよもういいよ、私が悪いんだよ! バレットには関係ないよ!」


バレット「何言ってんだ! お前を傷つけてこいつは笑ってんだぞ! 許せるわけあるか!」


エリス「バレットはもう傷つかないで! 私なんかほっといてよぉ!」


すごく心が痛い、何故だか分からないがエリスの心はすごく痛かった

デフラグに傷つけられた腹部の痛みなど吹っ飛ぶくらいに、心が爆発するほど痛い


デフラグ「おもしれーな! ほっといてとか言ってんぞ? どうすんだ?」


バレット「話しかけんな!」


再び突撃するバレットだが左腕の痛みでバランスを崩し、その隙を突かれデフラグに蹴り飛ばされた

そしてエリスの目の前にひざまづく形になった


エリス「バレット! 逃げて! 私なんか守らないで!」


バレット「何いってんだ! 全く聞こえねーぞ、そんな言葉!」


デフラグ「やべーよ! マジで! お前らをズタズタにすんのは面白そうだわ!

     命乞いはしなくていいぜ! 死ねよオラァ!」


そう言うとまだ持っていた無数のナイフとボルトを上空に放り投げ、能力を発動しバレットに向かって放った

――避けられない、避けるわけにはいかない、つまりバレットは避けられないのだ


バレット「ここまでか……!」


目を強く閉じ、歯を食いしばるバレット

悔しい思いでいっぱいだ、目の前にこんなに憎い許せない敵が居るのに勝てやしない

やり場の無い奴への怒りが、バレットの身を巡り虚しさへ変わる

おわりだと確信したバレットであったがその瞬間、爆発が起きた、砂煙がデフラグに襲ってくる


デフラグ「あぁ!?……つか、なんだよこりゃ……ふざけてんのかマジで!

     一体何が起こったってんだ!? あいつ何をしやがった?」


砂煙が晴れ前方に目をやると炎が上がっていた、中にバレットが居る

バレット自身から出るその炎はまるで盾のようになっていた、ボルトとナイフ達は全て溶け落ちて消滅していた


デフラグ「は、なるほどなぁラッキーだなお前ぇ! 今この瞬間、能力覚醒ってわけかよ!」


バレット「これが俺の……能力! 炎……!」


すると炎はデフラグに向かい直進する


デフラグ「でもなぁ! ラッキーはこれまでだ! 炎の軌道が操れないなんて誰が言ったんだコラァ!」


すかさずデュアルブート発動

時速120km 重量96,7kg 距離にして半径10m以内であれば操作可能なこの能力、炎など簡単に操れるはずなのだ

だがデフラグは気付くと空を見ていた、分かりやすく言うと、炎が直撃して吹き飛んで倒れたのだ


デフラグ「は……?」


軌道が……なぜか変えられない、わけがわからなかった

あらゆる原因を探ってみたが、しっくりくるものがなかった、バレットは操るあの炎は、普通ではないようだ

普通ではないのが分かったが対処法が思いつかない、高校にて能力に関するメカニズムや原理の知識を頭いっぱいに付けているデフラグであっても

彼の炎が如何なる理由でデュアルブートを打ち破ったのか、理解できなかったのだ


デフラグ「なッ……んだよ、つか、意味わかんねぇぞ……やべえ

     発動する際の超加速? ……空気中のマイナー元素を利用しての不完全燃焼? ……高密度の火炎? いやどれも違ぇ

     ダメだ全然理解できねぇ……なんなんだよ! お前の炎はよォ!!」


バレット「うるせぇ知るか……そんなの!」


拳に炎を宿らせデフラグに向かい走り出す、デフラグはもはや一切武器を持っていない

立ち(すく)むしかできないのだ


バレット「うおおおおおぉぉぉ!」


炎を帯びた強烈なパンチが真っ正面からデフラグの顔面に当たった

何メートルか吹き飛び、デフラグの意識は途絶えた


数日後

~1A教室~


あの時俺に宿った炎は何故デュアルブートを撃ち破ったのか、それは全く分からないがエリスは無事だった

あのあとすぐに先生が救急車を呼んでくれたおかげで大事には至らなかったようだ

だが……何故だかエリスは能力を使えなくなった

この世界では、能力についての様々な部分は現代の科学では解明されていないらしい

医師によると"精神的なショック"が原因だそうだ


エリスは心を閉ざし、家族以外とは口を利かなくなった……勿論、俺とも

エリスは能力を手に入れてからだったか、心が弱くなったと聞いたことがある

ちょっとしたプレッシャーを感じるだけで体調が著しく悪くなったりと、まあ今はそんな話どうでもいいのだが

これからしばらくは入院して精神面をケアしていくそうだ、しばらくは会えなくなるんだろう


俺はあの日、デフラグという男を本気で憎んでいた、殴っただけじゃ収まらないくらいの怒りが宿っていたんだ

……しかしながら一発殴っただけで俺の怒りは消えた、これが俗に言うスカッとしたってやつなんだろうか

いや、でもこんな話もどうでもいいな、今はエリスが高校に早く復帰してくれるのを願うだけだ


バレット「はぁ……」


落ち込みなのか気疲れなのか分からないため息をつく彼にクラスメイトが話しかけてくる

だが、そんな言葉たちをまともに聞ける状態ではなかった

まぁ明日からまた頑張ろう、そうして自分を適当に慰め、また机に突っ伏して寝た

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