第一話~墜落~
はじめまして。初投稿です。
空戦ロボものになります。よろしくお願いします!
「――撃たれる!ソラ、右!」
リネ・ヴァルカの声が、風を裂いて後席からプロペラの轟音とともに飛んできた。
「分かってるって!」
ミナト・ソラは叫び返し、操縦桿を強く引く。だが、機体は思ったように応えない。金属板に穴の空いた機体は、悲鳴のような音を立て大きく軋んだ。
脚部のフレームが空中でバランスを取ろうと揺れる。
「遅い!来る!」
乾いた銃声。
次の瞬間、敵機の銃弾が機体の下をかすめた。
「うわっ――!」
機体が跳ねる。高度が落ちる。
「被弾してる!左翼!」
「まだ飛べる!」
ソラは無理やり機体を傾ける。だが旋回は鈍い。重い。遅い。
ゴーグルに映る、
後方に敵影――。
「遅い!」
リネがトリガーを引き、
乾いた銃声が鳴る。
「当たった!」
敵機は大きな弧を描き静かに堕ちる。
全ての敵機を打ち落とした!
しかし安堵したのも束の間。
操縦桿を引き、無理やり機首を持ち上げる。
しかし、機体はびくともしない。
高度が下がる。
「不時着する!掴まってろ!」
「最初から、そうして!」
機体が大きく傾く。
空を下に森が、迫る。
全てが逆さの世界。
枝が折れる音が連続して響いた。
機体が木々に突っ込み、回転する。
板金が歪み、骨組みが軋み、視界がぐちゃぐちゃに揺れる。
「ソラ――!」
リネの声。
それが最後だった。
彼の意識は、そこで途切れた。
「……ソラ、起きて」
遠くで声がした。
「ソラ」
肩を揺さぶられる感覚。
「起きてって言ってるでしょ!」
「……っ」
重たい意識が、ゆっくりと浮かび上がる。
最初に見えたのは、空だった。
木々の隙間から覗く、細く切り取られた青。
「……生きてる」
「当たり前でしょ。私もいるんだから」
声のする方へ視線を向ける。
リネが、こちらを見下ろしていた。
額に小さく血が滲んでいるが、しっかりと立っている。
「……ここ、どこだよ」
「森の中。見れば分かる」
「それは分かる」
体を起こそうとして、鈍い痛みが頭を走った。
「っつ……」
「頭打ってる。無理しないで」
彼女の口調は変わらず淡々としているが、どこか少しだけ声が柔らかい。
「機体は……」
カナタの視線の先。
愛機の“楓”は情けない姿になっていた。
木の上からアクマグ特有の短い腕と脚が垂れ下がっており、左翼はプロペラが大破し銃弾の痕で穴ぼこになっていた、。
右翼は、翼が“く”の字に曲がり金属板一枚で繋ぎ止められている状態である。
肝心のコックピットである胴体は、木々が緩衝材になった為なんとか、傷も少なくダメージが軽かった。
無惨に壊れ果てた姿であった。
「任務は?」
「継続不可能。これは……もう飛べない…。というか…お前あの高さから俺を抱えてここに降ろしたのか…?」
「?そうだけど」
何がおかしいのと言わんばかりの表情を見せるが、16歳の女の子が、男一人抱えて木の上から降りるなど普通におかしいが。
まあそんなことはどうでもいいとして。
「“楓”がまだ動くのか、確認してくる」
「わかった」
そう言われた後、すぐに木に掴まりゆっくりと登り始める。
木登りは嫌いだ。
昔調子に乗って高いところまで登った後、足を滑らせて頭を4針縫った。
リネが俺の頭を見て笑い転げて、間抜けすぎるとからかったことを今でも忘れていない。
そんなどうでもいい記憶が頭を巡っている内に木の上に辿り着いた。
“楓”の胴体部分に掴まり、よじ登ってハッチを開けた。
金属が摩擦する音が響く。
内部に損傷はない。
「頼む…動いてくれ…」
願う気持ちで、バッテリースイッチをONにする。
数秒の沈黙があった。
5.2秒が経った時、“楓”は特有の機械音をあげ再び動き始めた。
「動いた!」
飛行は不可能だが歩行はできそうだ。
興奮気味でハッチから上半身を出し、親指を立てて、下にいるリネに動いたことを伝える。
リネも、良かった良かった、と同じグッドサインを返す。
再び中に戻り、操縦桿を操作し機体を立て直す操作を行う。
“楓”は体に纏わりつくように絡む木々を引き剥がし、ゆっくりとその巨体を自立させた。
巨体は左手をリネの差し出す。
「ほら、足場」
「相変わらず雑!」
リネは小さくため息をつくと、迷わず踏み込む。
差し出された手のひらに足をかける。
不安定に揺れる。
「落とさないでよ」
「信用ないな」
「あるなら言わない」
カナタが操作すると、腕がぎこちなく持ち上がる。
関節が軋み、金属が擦れる音が響く。
リネはバランスを取りながら、機体の、開いたハッチへと手を伸ばした。
「よっと」
中に入り後部の操縦席へ戻る。
「ふぅー、やっぱここが落ち着くわー」
「とりあえず、この森を出よう、これからどうするかはその後、こんなとこで野宿したら山犬の餌になるから」
「そのときはソラを置いて逃げる」
冗談めかして言う。
「はいはい」
機体はギシギシと音を立てながらも歩行を始め、森を闊歩する。
「さっきソラが訊いたけど、もう一回訊くわね。ここどこ?」
「計算したところ、デネビスの端のアゼオ山岳辺りだな。周辺に町があるはずだから、そこの近くまで行く。でも“楓”がこの状態だ。町に入ったら目立つ。途中で降りて残りは徒歩で移動しよう」
「了解」
機体はやはりギシギシと音を立て移動する。
歴史
(空式) Aerial
(戦闘) Combat
(機巧) Mechanized
(兵器) Gear
通称A.C.M.G
手足の生えたプロペラ飛行機のようなソレは、当初は名もなく人々の生活をより豊かにするために発明された。
しかし、デネビス帝国とアルヴェリ共和国、その他の加盟国との戦争が始まり軍事転用が決定、後にこの大空の支配権を奪い合う兵器と成り果てる。
被害は甚大で、この戦争を止めるために、 一つの組織が立ち上がった。
(Sky Liberation Organization)
通称S.L.O
空を解放するために戦争を仲裁する機関である――。
楓を停止させる。
「そろそろここで降りよう」
そう言うと、“楓”を降りやすいよう、前屈姿勢にした。
ハッチを開き、足元に気をつけてゆっくりと降りる。
先に降りたソラは、リネの手を取る。
リネはソラの手を握り小さく跳ねて地面に着地する。
彼女の銀髪がふわりと舞う。
「ここから5キロほど歩いたところに町がある。今日はそこで泊まって帰る術を考えよう」
言い終わったその瞬間――
ぴたりと後頭部に冷くて硬い何かを当てられた。
「ソラッ!!」
リネが叫ぶ
「動くんじゃねぇ、この坊主の頭に穴が空いちまうぞ」
そう言うのは野太い男の声。
横目で確認すると、不精髭の男が、自分の頭に銃口を突きつけていることが理解できた。
顔に幾つものツギハギがあり世間一般で言うコワモテの部類に入ると思われる。
飛行服の暗い橙色からデネビスの軍人だと言うことがはっきり分かった。
恐怖を感じながらも、頭に銃を当てられた状態でこれほど冷静に物事を考えられる自分を内心冷笑した。
「マジか…」
最初に口から出た言葉である。
第1話読んでいただきありがとうございます!
リネとソラ、二人の運命はいかに!?
次回へ続きます!




