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365日のアマリリス

雪の中のガラクタ

作者: 紫藤くらげ
掲載日:2026/03/26

暖かい。いい日向ぼっこ日和だ。

私は家路に着きながら、春らしい陽の光を浴びていた。

今日は定期通院の日で、1日休みを貰っていた。ここのところ年度末ということもあって休みの申請をしにくかったのだが、快く私の分の仕事を職場の皆が引き受けてくれた。半日の休みと思っていたのだけれど、1日休んでも平気だと上司が言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。


受診から処方の受け取りまで、全ての行程が終わった頃には、とうに正午は過ぎていた。一日の休みにしておいて良かったと、バスに揺られながらぼーっと考えていた。

バスのステップを踏んで外に出ると、空気はとても暖かい。雲ひとつない快晴で、じんわりと額に汗が滲んだ。アウターを脱いで腕にかけ、ここから5分程の自宅へ足を向ける。


冬の間は雪に埋もれて通れなくなる小さな公園には、もう雪はあまり残っていなかった。この公園を通ることで、家までの道のりをショートカットできる。

耳を澄ますと雪の溶ける音がして、地面は雪解けの水で濡れている。

そして、これはあるあるだろう。溶けた雪の下からは、かなりの確率でゴミが出てくる。ペットボトルだったり、ティッシュだったり、片方だけの手袋だったり。見た目は綺麗に見える雪景色でも、あら不思議、雪が溶けるとガラクタの山なのだ。時折男子学生が群がっているのを目撃するが、その時は大抵、誰が捨てたか分からない大人向けの本が落ちていることが多い。

この公園も例外ではなく、あちらこちらに地面にゴミが落ちている。そのうち、春の大掃除とかで綺麗になるだろうと、私は落ちているガラクタ達には目を向けないことにした。


公園の出口に着く頃には、靴はドロドロになっていた。洗えばいいかとアスファルトに無駄な抵抗だと言わんばかりに靴の底を擦り付けた時、ふと視界に黄緑色を見つけた。小さなふきのとうが、ひょっこりと顔を出していたのだ。

汚れた白に土の茶の中で、その黄緑はやけに明るい色をしていた。もう春なんだなとしみじみとしていると、ふわりと風が吹いた。春の匂いを乗せた風は暖かくて、先日まで吹いていた北風とは大違いだった。


もう春が来るんだ。


別れの季節と出会いの季節。2つの季節が訪れる。私に訪れるのは1つだけなんだけれども。


私もいつか、あのふきのとうの様に芽吹くことが出来るだろうか。冷たい季節を乗り越えて、使い古されたガラクタだけれども、いつか芽吹いて、誰にも摘み取られることなく、花を咲かせられるだろうか。


残り1週間。雪の中でじっとしながらもがいたけど、もうお別れ。これから先はどうなるのかはわからない。何も決まっていないし、何も決めていない。ガラクタのまま朽ちていくのかは分からないけれど、小さな花くらいは咲かせたい。


また暖かい風が吹いた。

帰ったら、もらった薬を飲まなくちゃ。

今日はとても暖かかった。日向ぼっこしたら気持ちよかっただろうな。


春が来ますね。

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