EP、2 ワンダフルクリスマス!
クリスマスが近いのでちなんだお話をおひとつどうぞ。
子供達と追いかけっこをしてはしゃいでる犬太を眺めながら熱いお茶を啜っていました。
「探偵」をやるなんて、殺人事件の調査とか犯人の尾行とかそういうイメージだったのだけど犬太曰く「人助けなら何でもいい!」との事。なので今はこうして僕の住んでいる街の孤児院で子供のお世話という依頼をこなしている所です。
「ダーリンも一緒に走ろうぜ!二足で走るのも意外と楽しいぜ!」
「人間ならそれが基本だよ!運動はあんまり得意じゃないから犬太に任せるよ」
折角の誘いだったが僕は体力が極端にない事を自覚している為に断りました。僕は頭を使う事の方が好きだからね、孤児院でも年長者な子と一緒に将棋を打つのも楽しいものさ。
「お兄さん 王手です」
おっと詰んだ。僕は何も出来ない負け犬です。
「今日も楽しかったな!でも本当に報酬受け取んなくって良かったの?」
「お金に困っているわけでもないしね あの孤児院そこまで裕福なわけでも無いし頂くのも悪いよ」
「それもそうだな あの子達が大きくなれば出世払いしてくれるかも知れないし」
「そんな先まで考えてないよ!」
夕焼けで赤く染まった道を僕達は漫才みたいな会話をしながら帰っていました。道の途中犬太はある店のショーウィンドウに足を止めます。クリスマスツリーが飾ってあって、そういえばクリスマスも近い事に今更気づきます。
「ねぇダーリンクリスマスの予定は?」
「何にも考えてなかったね 犬太は?」
「今予定を作った!クリスマスパーティーをしよう!」
暫く存在を忘れていたクリスマスが、今年は賑やかになってしまうことが決まりました。
パーティーをするにしても何から始めれば良いのでしょう。部屋の飾り付け、クリスマスにふさわしい食材の調達、プレゼントの用意という所でしょうか。僕と犬太だけなのにそこまで豪勢にやるのもどうなのだろう。
「昨日の孤児院もクリスマスになんかやるだろうしそこにお邪魔するのはどうかな 賑やかな方がきっと楽しいよ」
犬太は少し考える素振りを見せた後、あまり納得のいかない表情ながらも了承してくれました。二人っきりなんて僕からしたら気まずいだけだし何されるかもわかんないから助かったと、胸を撫で下ろした僕に突如唇を重ねる犬太。あまりに驚いて尻もちをつく僕を見て何やら満足したみたいです。
「よし!なら早速孤児院に連絡だ!俺に企画を任せて貰う以上つまんねぇクリスマスにはさせねぇぜ!」
「やる気に満ち溢れてくれたのは良いんだけど今のキスは何だったの!?」
僕の問いに答える事無く早速電話を取り出す犬太。ドキドキしている胸を落ち着かせるよう強く抑えて僕にも出来そうな事を探し始めます。人手があるなら作った方が楽しいと思いまして、加工前のケーキやチキンの材料を大量にかき集めたり、無理の無い範囲で大きいツリーを用意したりしました。皆と楽しく準備出来ていたのですが、いつもならどんな時でも隣にいてくれる犬太の姿があまり見えません。あちらも僕の知らない所で頑張っているのでしょうとあまり触れずにいました。そして僕が考えていた理想のクリスマスを実行する当日を迎えるのでした。
サンタのコスプレをした犬太はまた子供達と追いかけっこをしています。頑張って皆で飾り付けしたツリーを中心に、偶に変な飾りにツッコミを入れつつ走り回っていました。僕は料理の出来る子供達と一緒にクリスマスディナーを準備します。誰かと料理をするなんていつぶりでしょうか、結構楽しいものです。
皆で作り上げたチキンやケーキを食べて、プレゼント交換をして、中々楽しいクリスマス会にできたと思います。しかし帰り道を歩く犬太は何やらそわそわしている様子。何か満足できなかったのでしょうか。
「俺ちょっと先に帰るわ 寄り道せず帰ってこいよ!」
犬太は目も合わせず走り去っていきます。そういえば準備に夢中で全然家に帰って居なかった事を思い出し、例え二人でも何か用意したほうが良かったのかな、でも寄り道しないで欲しいと言われた手前早く帰ってあげた方がいいのかと腕を組んで悩んでいるとあるショーウィンドウが目に止まります。犬太の目を奪ったクリスマスツリーがありました。これに遭遇したおかげで楽しいクリスマスを過ごせたんでしたっけ。
(これなら犬太も少しは喜ぶかな)
その店で簡単な買い物をした後、軽く走るように家に帰るのでした。
我が家の扉を開けるなり響くクラッカーの音。犬太が楽しそうに出迎えてくれました。
「メリークリスマス!こういうサプライズ憧れてたんだよね!」
なるほど、だから一緒に帰らず先に行ってしまったのか。今まで姿が見えないことが多かったのもこちらでの準備も並行していたと考えると頷ける。
「妙な詮索はしないで楽しもうぜ!」
手を引っ張られリビングに案内されると一人で準備したとは思えないほどの飾り付けを施した部屋に驚愕しました。
「これ…すごいね犬太!」
「頑張っちゃったぜ 後はツリーも用意したかったんだけどさ」
そう言われて思い出す。犬太へのプレゼントとして小さいツリーを買っていた事。そのツリーを見せると犬太はぴょんと飛び跳ねて僕に抱きついて来ました。
「信じてたぜダーリン!」
2本の尻尾を振って楽しそうな犬太。クリスマス会はこちらも大成功のようです。
「そういえば飾り付けするにあたって家を一回りぐるっと拝見したんだけどよ」
楽しそうなテンションのまま話す犬太。そしてある部屋の事を思い出します。
「『立ち入り禁止』って貼ってある扉 あれなに?」
見られたくなかった我が家の秘密。説明しないといけなくなった事に深く溜め息を吐きます。
「見ちゃったか 隠せそうに無いから説明するけど今はまだクリスマス楽しもうよ」
テーブルの上に用意されたケーキに視線を移し、今日はまだ説明したくないとアピールをします。察しの良い犬太は「そうだな」と言ってくれました。そうして我が家のクリスマスは無事に終えたのです。
「その件も気になるけどさ この飾りの後片付けも明日手伝ってくれる…よね?」
無事にクリスマスを終えたのでした。
犬太は可愛いなぁ。
この先が不穏?ばっかお前、犬太に何かあったら許されませんから大丈夫ですよ。




