EP,1 「俺は犬太(ケンタ)!」
暗い話ばかりなので少しは楽しい話をしましょう。
自分らしく無い話に鳥肌立てながら書いています。
「シベリアンハスキー」という犬をご存知でしょうか。警察犬を想像して貰えると良く思いつく、白と黒がかっこいい犬です。
そして僕の前で元気に走っているそのシベリアンハスキーは僕の犬らしいです。飼い主…では無くて
「ダーリン!今日はどうしよっか!」
僕の妻…らしいです。認めてはいませんが。
妻が居なくなって少しが経ち、何事にもやる気が起きずただ惰眠を貪る毎日でした。愛していたあいつがいないこんな世界なんて僕にとって価値が無い。自殺は痛そうだから出来ないけど早く寿命が終えてしまわないだろうかと我儘を唱え続けていました。至って健康体であり、これからも長そうで退屈だと外を眺めている時です。色合いの珍しい犬がこちらを見ていることに気づいたのは。存在を認識して目が合うとその犬は一目散にこちらへ走り出します。そして突き抜けそうな勢いで窓にぶつかります。
「やっと見つけた!愛してるぜダーリン!」
犬に告白されました。いや喋る所に突っ込むべきでしたか。突然の事に君が悪く、勢いでシャッターを閉めます。犬は諦めずにドンドン窓を叩きます。
音が止み、どっかに行ったのかとゆっくりシャッターを開けると
「オオカミさんですよ?」
驚いて悲鳴あげてその場を離れました。オオカミさんは遂に窓を突き破り家の中に侵入してきます。
「冗談だから安心しろって 本当は犬だぜ?」
そっちの冗談は知りません。喋る気味の悪い犬が、窓を破って来たのです。怖がらない要素がありません。
「怖がらせて悪かったって この姿が怖いんだろ?仕方ねえな…」
犬はそう言うと、途端に光だしました。ツッコミが追いつかないからもうやめて欲しいと願う僕の気持ちと裏腹に、犬は光りながら姿を変えていくと怯えて目を瞑っていた僕の上の方から喋りかけてきます。
「これなら怖く無いでしょ」
恐る恐る目を開くと、犬ではなく黒いワンピースを来た少女が居ました。目をパチクリさせていると困った様な表情をして少女が語ります。
「なんか可愛いすぎねぇかこの体 ダーリンはどう思う?」
とても長い髪に犬の名残か頭頂部に生えている大きな耳。そしてワンピースから突き抜けた2本の尻尾。その姿に一瞬だけ、重ねちゃいけない様な、居なくなった妻のことを思い出してしまい感情のまま抱きついてしまいそうになりました。
「良いんだよ 感情に正直に抱きついてしまえ てか俺が抱く」
謎の少女に抱きつかれました。何かを考える先に懐かしくって、嬉しくって泣きながら抱き返します。
「寂しかったよな…今度は一人にしないから…」
という出会いがありまして。犬の少女と共に暮らす事になったのですが、人間に近い姿をしているにも関わらず性格は犬寄りなのでしょう。振り回されっぱなしの毎日です。
「ダーリン!俺に名前をくれよ!」
「え…じゃあ犬だし『犬太』とか?」
「良いじゃん!俺は犬太!これからずっとよろしく!」
(良いんだ…かなり適当だったんだけど)
そうして名前が決まり、辛かった日常が少しずつ犬太のおかげで変わって来ました。
「犬太ってさ 結局何者なの?」
「それに答えるのはまだ早いかな まずは俺の友好度をあげてもらおうか」
まるでゲームのような提案に少し呆れます。
「その友好度ってのはどうすれば上がるかな」
「それはもう!デートしたりキスしたりそれから先も…」
「うーん犬太の事は嫌いじゃ無いんだけどそういう目で見れないというか…家族愛みたいな」
「本気で愛してる奴にそんな事言うなよ…好感度が0、1下がった」
「少なっ なんかごめん」
「それよりも気持ちはわかるぜ 居なくなった妻の事が忘れられないんだろ」
確かにそうです。居なくなってしまった妻を忘れてこんな性格も真逆な変な少女と付き合うなんて考えられませんでした。
「妻の事って言ってたっけ」
「俺は好きな人の事なら何でも知ってるぜ」
「ストーカーじゃんこわっ」
話の流れで妻がいなくなった事を思い出し少し悲しくなったはずなのに、犬太は明るく冗談を言ってくれる。やり方はどうあれ僕の心が救われているのは本当であることを犬太の笑顔を見て思った。
「あとは恋愛関係なく友好度上げたいのなら俺の夢を手伝ってくれる事かな」
「夢なんてあるんだ」
「馬鹿にしないでくれ 馬でも鹿でもなく犬だけど」
すぐ理解できない冗談に首を傾げます。
「俺は正義のヒーローに憧れててさ 弱き者の為に悪人を成敗していくような」
良くドラマや漫画で見るヒーローについて、目を輝かせながら説明されます。
「出来ればかっこいい姿に変身したいよな 『仮面ワンダー』みたいに!」
仮面ワンダー、子供向けのドラマで人々を困らせる悪と戦うヒーローの物語だ。戦う際に仮面を顔に当てて変身口上を叫ぶとかっこいい姿になり徒手空拳などで相手と戦っていくのが印象深い。
「『俺は夢を叶える 変身!』かっこいいんだよなこの口上!」
「犬太って意外に子供っぽいんだね」
「また馬鹿にしたか?何年経ってもかっこいいものには憧れるもんだよ男の子ってものは あれ俺女じゃん」
「そしたらその変身仮面を買ってあげれば友好度も上がるってこと?」
「そうじゃない!嬉しいけど!」
犬太は机に飛び乗り高い所から僕を指差す。
「人助けなら現実でも出来るだろ?だから『探偵』になろうぜ!」
色々と飛躍してしまった提案に困惑しながらも、机に乗るのは今後やめて貰いたいなと思いました。
己の性癖を詰め込んだ化物「犬太」の物語になります。
犬太可愛いので皆さんも是非可愛がって下さい。同担拒否はしませんから!




