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忌子物語  作者: あむ
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【設定集】伝書鳩と通信鳥

1. 通信手段の概要

1)定義

伝書鳩(でんしょばと)】とは、鳥の帰巣本能を利用した長距離通信手段の総称である。

太古より存在する最も普及した通信手段であり、書簡や小型荷物の運搬に広く用いられている。


2)背景

この世界において、魔法による遠距離通信は実現していない。

その理由は明快である。

体外に放出された魔力は空気中へ絶えず霧散する——これが魔力の物理法則である。

近距離(同じ建物内や戦場内)であれば魔力信号の伝達は可能だが、距離が遠ざかるほど魔力は拡散し、届く前に消滅する。

水中に墨を垂らすようなものであり、近ければ色は見えるが、遠ければ薄まって消える。

仮にこれを補おうとすれば、経路全体に魔力凝集装置を設置する必要があるが、その費用は伝書鳩の数千倍に及ぶ。

故に、鳥による通信が最も合理的な長距離通信手段として太古から定着しているのである。



2. 通信鳥の分類

通信に用いられる鳥は主に三種存在し、それぞれ用途・利用者層・性能が異なる。


1)はと——大衆の翼

■ 概要

最も広く普及した通信鳥である。

一般市民から国家機関に至るまで、あらゆる階層が日常的に利用する。


■ 帰巣と運用

二つの拠点(A地点とB地点)を「巣」として認識させる訓練が可能であり、この二拠点間を往復できる。

ただし、訓練された二拠点以外の場所(C地点など)への飛行は不可能である。

新たな拠点の追加訓練も行われない。

長距離の場合、複数の鳩が中継地を経由するリレー方式で書簡を届ける。


■ 性能

- 最大運搬重量:約100g

- 飛行時間帯:昼間


■ 運搬物

- 書簡(最も一般的)

- 粉薬、乾燥薬草、種子、香辛料

- 魔力結晶粉末、小型スクロール

- 主に研究機関や魔法協会間の研究資材交換に用いられる


2)ふくろう——貴族の密使

■ 概要

貴族層あるいはそれに準ずる財力を持つ者のみが運用する高級通信鳥である。

高い知能を有し、夜間飛行による隠密性が最大の特長である。


■ 帰巣と運用

巣(A地点)を基点とし、最大三箇所の目的地を認識できる。(A⇔B、A⇔C、A⇔Dは可能だが、B⇔DやD⇔Cは不可能)

知能が高く、自ら危険を察知・回避する判断力を持つ。悪天候の迂回や天敵の回避も可能である。

長距離飛行が可能であり、中継地を必要としない直通便として機能する。


■ 性能

- 最大運搬重量:約300g

- 飛行時間帯:夜間

- 飛行距離:鳩を大きく上回る


■ 利用実態

最も多い用途は、同じ都市内の貴族間における秘密書簡のやり取りである。

遠方の貴族間(婚姻先、同盟先など)での私的通信にも用いられる。

伝書局を経由しないため、第三者に内容が漏洩する危険がない。これが最大の利点である。


■ 維持費用

基本飼料が生肉であるため、維持費用が極めて高い。

所有者自身が訓練を行うか、専門の調教師に依頼する。


3)からす——冒険者の相棒

■ 概要

三種の通信鳥の中で最も高い知能を持つ。

冒険者、特に熟練の狩人型弓士の間で通信鳥兼狩猟補助として運用される。


■ 最大の特徴:魔力追跡

鴉はこの世界において特異な能力を有する。生物の魔力痕跡を追跡できるのである。

この能力により、発信と帰還で異なる方式をとる:

【発信】伝書局や鳩の集まる村など、場所を目標として飛行する。

【帰還】主人の魔力を追跡して戻る。主人がどこにいても帰還可能である。

鳩や梟が「場所から場所へ」飛ぶのに対し、鴉は「場所から人へ」帰る。定まった拠点を持たず移動し続ける冒険者にとって唯一の通信手段となる。

また、高度に育成された鴉であれば、場所ではなく人を目標とした発信も可能である。発信者が受信者のおおよその所在を把握しており、かつ鴉がその受信者と面識がある場合、顔認識と魔力追跡を併用して受信者のもとへ直接届けることができる。


■ 狩猟補助

魔力追跡能力を活かし、魔物や獲物の位置特定にも用いられる。

狩人型弓士の間では猟犬の代用として重宝されている。


■ 育成の困難

極めて高い知能を持つが故に、育成難度は最も高い。

単純な訓練では従わず、幼体から育て、主人との深い信頼関係を構築する必要がある。

知能が高いため、主に認められることすらも難易度が高く、もし認められたとしても不合理な命令には従わないこともある。

結果として、鴉を連れた冒険者は少数であり、保有していること自体が熟練の証とみなされる。


■ その他

雑食性であり、飼育費用は三種の中で最も低い。

顔認識能力を持ち、経路の記憶にも長ける。



3. 通信鳥の比較

1)鳩:利用者層は一般大衆。拠点はA⇔Bの二地点固定であり、昼間に飛行する。運搬重量は最大約100g。飛行距離は中距離だが、リレー方式により延長可能である。知能は低く訓練に依存し、隠密性も低い。飼育費用・育成難度ともに低く、伝書局やギルドが管理する。

2)梟:利用者層は貴族・富裕層。巣を基点に最大三箇所を認識し、夜間に飛行する。運搬重量は最大約300g。中継なしの長距離直通飛行が可能であり、隠密性が極めて高い。知能が高く判断力に優れるが、基本飼料が生肉であるため飼育費用は極めて高い。育成難度は中~高。個人が所有・管理する。

3)鴉:利用者層は冒険者・狩人。発信は場所を目標とし、帰還は主人の魔力を追跡する。昼夜を問わず飛行可能。運搬重量は書簡程度。飛行距離は中距離。三種の中で最も高い知能を有し、魔力追跡という唯一無二の能力を持つ。雑食性のため飼育費用は低いが、育成難度は極めて高い。個人が所有・管理する。



4. 伝書施設

1)伝書局

- 都市に設置される専用通信施設である。

- 大量の鳩を飼育・管理し、市民や機関からの書簡・小型荷物を受け付ける。

- 民間が運営しており、国家もまた利用者の一つである。


2)冒険者ギルド(町)

- 町においては、冒険者ギルドが伝書業務を兼任する場合が多い。

- 依頼書、報告書、連絡票など、ギルド業務に付随する通信需要が多いことがその理由である。


3)村

- 伝書施設を持たない村が多い。書簡は町から届くものを受け取る形が一般的である。

- ただし、個人や村長が自ら鳩を飼育している場合もある。これらの鳩は近隣の町までを往復するものであり、村から町への発信手段として機能する。

- また、町と町、あるいは都市と都市の間に位置する一部の村は、長距離リレーにおける中継地として鳩を飼育している。



5. 費用体系

1)算定基準

伝書鳩の利用料金は、使用される鳩の羽数によって算定される。


2)算定の仕組み

- 鳩は一羽につき、訓練された二拠点間(例:A町⇔B町)を一区間として往復する。

- 届け先がこの一区間内であれば、鳩一羽で完結する。これが最小単位であり、基本料金となる。

- 届け先がさらに遠方の場合、B町からC町への鳩、C町からD町への鳩と、区間ごとに別の鳩が引き継ぐ。

- すなわち、経由する区間の数がそのまま使用羽数となり、料金は羽数に比例して加算される。


3)距離と費用の関係

- 近~中距離(町⇔町、都市⇔町):鳩1~3羽。最も経済的である。

- 長距離(都市⇔都市):リレー方式により羽数が増加し、費用も比例して上昇する。

- 超長距離:十数羽のリレーが必要となり、費用負担が極めて大きい。



6. 距離別の最適通信手段

- 近~中距離(町⇔町、都市⇔町):鳩1~3羽が最速かつ最安である。

- 長距離(都市⇔都市):鳩リレーは速いが高費用。行商人に託す方法は遅いが安価である。

- 超長距離:伝令(人)が基本。鳩リレーも可能だが十数羽を要し、費用は極めて高額となる。

なお、全ての距離において鳩の使用は可能であるが、リレーによる費用増加が大きな負担となるため、長距離以上では代替手段が選ばれることが多い。



7. 特記事項

1)鳩の管理

- 定期的に経路を往復させなければ、拠点への帰巣感覚が鈍る。

- 季節の変化や地形の変化により迷うこともあり、継続的な管理が不可欠である。

- 紛失の危険は常に存在するが、厳格な訓練と選別により高い成功率が維持されている。


2)収益構造

- 伝書局の主要収益源は一般市民の書簡である(大量・低価格)。

- 小型荷物の運搬は研究機関・魔法協会が主要顧客であり(少量・高価格)、副次的な収入源となっている。


3)運営形態

- 伝書局は民間が運営する。国家は規制や管理を行わず、太古より自然発生的に定着した通信文化の一環である。

- 王宮・軍・行政機関も機密事項ではない限り、民間の伝書局を通じて通信を行う、一利用者に過ぎない。





遅くなりました。ごめんなさい。

体調不良で執筆自体が遅れちゃいました。

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