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忌子物語  作者: あむ
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【27話】趣味

──深い夜、うっすらと敷かれた暗い照明の部屋の中。


「ねえ、早く脱いでよ。」

純粋で、澄んだような綺麗な女の子の声。

だが、その声が紡ぐ言葉は妙に艶めいていた。


「え……でも……今日もするの……?」

もじもじと同じ年くらいの少女の声が返事する。


「もう待てないわ!私が脱がしちゃうからジッとしてなさい。」

「えっ。」


ついに、しびれをきらした一人の少女がもう一人の少女の服を脱がし始めた。


「ダメだよ…怒られちゃう…。」

抗いながら、拒む少女。


「ふへへ、ジッとしていなさい!」

何故か変な声を出しながら、脱がしていく少女。


しばらくして、一人の少女が下着のみを残して軽い吐息でベッドに横たわっている。


「さあ、ルナ!今日はこれよ!」

ルナの前でティアラはまるでドーンと音がしたように何かを見せた。


見せたものは淡いピンク色のドレスだった。

胸元と裾には白いフリルがたっぷりとあしらわれ、腰には大きなリボンが結ばれている。

いかにも女の子らしい、可愛らしいデザインだ。


「はあ……。」

諦めたように、服を着るルナ。

そして椅子に座らされ、髪を結われていく。


髪のセットまで終わると、ルナをクルンと一回りさせるティアラ。


ツインテールに結ばれた黒髪に、ピンクのドレス。

確かに可愛い。


可愛いのだが──

漆黒の髪と白い肌には、どこか浮いて見える。


「はあはあ…やっぱ何を着せても可愛い!」

妙に興奮した様子で、ティアラがご満悦そうに笑う。


「そうね、次はこれを着てみようか!」

「…!?」


──そう。

これはルナが来て以降、ティアラに新しくできた趣味である。


元々一人で人形で遊んだりしていたものの、やはり動かない人形を相手にすぐに飽きてしまった。

それに隠居地での人形の服にも限りがあり、色々と着せ替えをしても、結局は飽きてしまう。


だが、ルナを手に入れた(?)日から彼女は新しい世界を見ることになった。


この隠居地にはローバが仕入れの際に大量の服も仕入れていて、

お陰でティアラの服は数え切れないほどたくさんある。

しかもティアラも一度も着たことない服もごまんとあった。


その服の中でルナに似合いそうな服を選び、ルナに着せる。

そして髪の毛をセットする。

まだ子供だった故に化粧はできないが、とにかくそれを見て大満足する。


そう、ティアラにとってはルナとの女の子同士(?)の密かな遊びだった。



数日後──

この日も、この密かな遊びを楽しんでいた。


この日、ルナが着せられていたのは淡いラベンダー色のドレス。

袖にはレースがあしらわれ、スカート部分はふんわりと広がっている。

髪は高い位置で一つに結ばれ、大きな紫のリボンが揺れていた。


バァン!!!


「何をしているの!?」

部屋のドアを荒く開けられる。

ローバだ。


ローバの表情はとても険しく、まるでルナとの初日の時如きの顔をしている。


ズンズンと近づくローバ。

そして、思いっきり怒鳴った。


「あなた達!」

ビクンと怯えるルナとティアラ。

そして二人は思わず両目をギュッと閉じる。


「違うわ!それではルナちゃんのいいところが全くアピールできないじゃない!」


「「…?」」


怒りのピントが違う気がする。


そっと目を開いて、ハテナマークをたくさんつけたまま、放心しているルナとティアラ。


「ルナちゃんは長くて黒い綺麗な髪なんだから、ドレスならピンク色よりも別の色の方が似合うわよ!」

一喝するローバ。そして──


「それにルナちゃんは可愛いというより、綺麗系だから……ブツブツ」

放心状態の二人を完全無視で、タンスを漁り始める。


「ルナちゃん、この服を着てみなさい。」

ポイッと渡される服。


ローバが取り出したのは、クリーム色のドレスだった。

フリルやレースはなく、すっきりとしたノースリーブのデザイン。

襟元には小さな金色のリボンが、裾には控えめな金糸の刺繍が施されている。

ティアラが選んだものとは、まるで雰囲気が違う。


逆らうことができず、着始めるルナ。

その間にローバは顎に手を当てルナを観察しながらブツブツと独り言を言っている。


「この服だと……そうね。……うーん、違うわ。やっぱりこれにしましょう。」

少し考えた後、着終えたルナを座らせ、髪までセットし始めたローバ。


長い黒髪を片側にまとめ、金色の細いリボンで緩く結ぶ。


鏡に映るルナは、先ほどとは雰囲気が違った。

クリーム色が白い肌に馴染み、黒髪の艶を引き立てる。

金色のリボンは、琥珀色の瞳とさりげなく響き合っていた。


「ほら、ルナちゃんの髪の色と綺麗な瞳にぴったりでしょう?」

ドヤ顔でティアラに評価を促すローバ。


「ティアラも可愛いけど、こういう雰囲気の子も着せてみたかったのよね」

両手を頬に当て、うっとりしているローバ。


「むう…次は私が選ぶ!」

ティアラは悔しそうに見ながら、服を選ぶ。


「……。」

こうしてティアラに続き、ローバにも新しい趣味ができた。


──ルナは、この日。

初めて『挫折』というものを知る。



____________________


──一方、ラークの部屋。


「……?」

晩酌片手に夜の静けさを楽しもうとしたラーク。

だが、遠くから聞こえる騒ぎ声に、それは叶わなかった。

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