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忌子物語  作者: あむ
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【24話】日課(午前)

その日からルナは訓練を始めた。


この隠居地は上段と下段の二重の大きい天然の崖の上に作られ、その上に人工的に作られた勇者候補の為の色々な施設がある。

上段は普段生活をしている家として構成されている。

また、ティアラの部屋よりも更に奥に入ると階段があり、そこを降りると下段の崖に行くことができる。

そしてその下段の崖には大きな広場がある。


元々は勇者候補の修練が目的の場所である。

ティアラも自分の修練や運動の際に毎日入る場所だ。


故に「訓練場」と呼ばれていた。

入口には自然の岩で成された壁と言うべきだろうか、天然の塀が築かれている。

上段の崖が頭上に覆いかぶさり天井のようになっている。

その先、崖の縁の向こうには青い空と広大なティアレン森の樹海が地平線まで続いている。

広場の真ん中には丸く大理石で作られ内側と土場である外側と明確に区分されていた。


ルナは朝起きてすぐにその部屋に行く。

ラークの指導の下で柔軟体操をした後、ひたすら走る。

最後に筋トレをする。

その後、食堂に行き朝食をとる。


ローバは料理が得意で、毎日日替わりに色んなメニューがテーブルに並べられる。

王宮ほど豪華ではないが、成長期であるティアラやルナのために、また戦士であるラークのためにも肉や野菜は欠かさず、量も余すほどたくさん作る。

王宮の豪華な食事ほどではないが、一般庶民からしたら贅沢なものばかりだった。


ティアラは野菜よりも肉が好きらしく、偏食気味ではあるが、ローバは厳しく全部食べさせた。


ルナは今までカビが生えている固くてとても食べられないパンくらいしか口にしていなかった分、ローバの料理はとても美味しいものであった。

だから随分な量なのにも関わらず、また偏食することなく残さずに美味しく全部食べてくれた。

また、テーブルマナーは習って間もないのにも関わらずしっかり守ろうとしていて、何よりも口の中に食べ物を含んで一生懸命うむうむと咀嚼するルナは随分と可愛い。


ルナの美味しそうな食べっぷりを見たローバは、その分嬉しそうにしていた。


朝食後の午前中にはローバからの基本的な知識の教育があった。

今まで習った事のなかったこの世界の常識や文字、算術などを学んでいく。

ローバにはルナに教えるべき戦闘に関する心得はなかった。


その間にティアラはラークと訓練場で実践的な組手をする。

戦闘に当たって効果的な魔法駆使を身をもって習得する。

時折、ラークによる戦士と魔導士の組み合わせ、集団での戦術を学ぶ。

後には勇者の基本素養である戦術や指揮も学んだ。


一方、ルナにとって最も重要な事は表現力の拡張であった。

表現力が足りないからルナの話は長くなったり理解しづらくなったりする。

故に文字を覚えた以降は一日に必ず本を速読で一冊以上読ませた。

最初は簡単な文字が入った絵本から読ませた。

文字に慣れた段階になると絵本は卒業し、短編集を読ませた。

後には長編小説を読ませ、専門用語が入っている難易度の高い本まで難なく読ませたいとローバは思う。

元々、知識がなかったルナだが、明晰だ。

まるでスポンジの様に知識を吸収していく。


そしてラークと修練を終えて合流したティアラと議論させる。

例えば今日の夕食は魚と肉どっちがいいのか等の幼稚な内容から始めて、とにかく討論させる。

そうした事で話術を自然と習得させる。

それをローバは進行役兼仲裁者として見守りながら、意味もない言葉は指摘していく。

弱点になるような部分や相手の言葉で責める部分等を指導していく。

ルナはこの討論により次第に悠長に話ができるようになっていく。

話し相手がローバしかいなかったティアラにとってもいい訓練となった。


ローバは四六時中ルナに大きな錠剤の様な形をしている何かを食べさせた。

口に入れたら、甘酸っぱいフルーツの味がして、後味は非常に苦い。

これはラークが渡してくれたレシピーを基にローバが作った特製ゼリーであった。

ラークの特製レシピーは基に色んな薬草や生薬を混合して作ったものである。

一種の総合栄養剤であり、ルナの遅れた成長を促進させる。

また若干の疲労回復機能もあり、今後の訓練に持ち堪えられるような物であった。

だが、味としては、生で摂取するにはとても苦く食べれるようなものじゃない。

だからローバは普段ティアラが──今はルナもだが──好んで食べるゼリーを作る際に、この錠剤の外側も作り、包んだ。

全てはルナの痩せ細った体に肉を付ける為であり、一日の訓練に耐えさせる為だった。

体力を付ける前にその体力を溜める体を作る。

ちなみにゼリーの材料になるゼラチンは一般庶民にとっては比較的に高価な類の物だ。

しかしティアラが、王宮の支援を受ける勇者候補という事もあってその予算までも惜しみなく提供されていた。


昼頃になると、みんなで集まり昼食をとる。

そして食事が終わったら昼寝を一時間くらいさせる。

そうしなければルナは午後の訓練にはついていけない。


全ては虐げられ飢えさせられたルナのために。

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