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忌子物語  作者: あむ
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【22話】朝の平穏

ルナは目を覚ます。


ティアラは自分の隣でぐっすり寝ていた。

気を失ってどれほどの時間が過ぎたのだろうか。

そしてどうしてあの殺意から生き延びれたのか疑問に思う。

ふと、自分の左足首についているアンクレットに気付く。


簡単に外せそうにないと思いつつも、とても綺麗だったためしばらく見たり触れたりしていた。

しばらく悩んでいたらドアが開いた。


「あら、起きたのね?おはよう。ルナちゃん。私はローバと言う人です。一応、ティアラの保護者よ。」

ローバが部屋に入ってきながら挨拶する。

ルナは状況判断が出来ずに、態度も曖昧にしていた。


「相手が『おはよう』って挨拶したら、あなたも挨拶するのが礼儀よ。

ほら、挨拶してみ?『おはようございます』って。」


「お...はよう...ご...ざいます...」

たどたどしく挨拶するルナ。

それを見てニッコリ笑うローバ。


「ティアラって朝すごく弱いでしょう?もしよかったら一緒に朝ご飯の準備、手伝ってくれないかな?」

そしてこう言ったのだ。


不器用な手付きで朝ご飯の準備をするルナ。

それを見ながら優しく教えてくれるローバ。


場所は食堂。

ティアラの部屋から二つ横の部屋であった。

奥のドアの向こうにはキッチンと食糧庫がある。


大きなテーブルがあり、そこに香ばしい焼きたてのパンが入っているバスケットやお茶を淹れたティーポット、果物やよく焼かれたベーコンが並ぶ。

皿とフォークも椅子の前に並べる。

そしてテーブルの真ん中にローバが作った野菜スープの鍋が置かれた。


朝ご飯の用意が終わり、ローバはティアラの部屋に行く。


「ティアラ、もう朝ご飯の用意が出来たわよ。起きなさい。」

「うーん、もう少しだけ....」

「ダーメ!ルナちゃんは先に起きて朝ご飯の用意も手伝ってくれたのよ?いい子よね~」

「....ルナは男の子だよ...ローバ...」

「知っているわ。でも女の子っぽいし、かわいいから『ちゃん』付けでもいいんじゃないかしら?」

「...もっと寝る...」

「ダーメ!」

無理やり起こされるティアラ。


────────


一方、ルナは一人で食堂の椅子に座っていた。


気を失う前の事を思い出す。

ラークは感じた通りの男だった。

その場で生きる術はなかった。

それでも少しでも長く生きるべく行動をとった。

しかし失敗した。

飛んだ瞬間、腹部に激痛が走り、そのまま意識が吹き飛んだ。


骨で守られている部分は最も痛い。

お腹に一撃くらいは息ができないくらいで済むと思っていた。


その後の事は無計画だった。

そこまで思考を回す事はできなかった。

それぐらいその場が緊迫していて、ただガムシャラに場面だけを凌ごうと思ったのだ。

しかしラークの力は思ったよりも強くて、そのまま意識を刈り取られた。

そして気を失う直前にルナは自分の死を直感していた。


だがルナは生きていた。

目覚めたら、隣にティアラが寝ていて何事もなかったようにローバと名乗る知らない大人の女の人が自分に付けられた名前を優しく呼ぶ。

そして気を失った際の気持ちや思考の整理ができないまま、ローバの言う通りに手伝いをした。

そんな事を考えていたらドアから誰かが入って来る。


ラークだ。

ラークを見たルナは反射的に椅子から飛び起きる。

反動で椅子は後ろに倒れ、大きな音を出した。


──ガタン!


一瞬にして食堂の中は険悪になる。

ルナは思いっきり睨んでいた。

そんなルナを見たラークはどうでもいいように言う。


「おうおう、朝から殺気立て大変よろしいな。それで?どうしたいんだ?俺にまた殺されるか?」

と、ルナにケンカを売りながら平然と食堂にある椅子の中で一つ選び座る。

そして焼きたてのパンを適当に選ぶように弄りながら続ける。


「今はどうする事もできないんだろう?

昨日も感じただろうに俺は強いし、お前は弱い。

悪いが今のお前には俺は絶対殺せない。

そして今は俺もお前を殺す気はない。

腹減ってるんだ。まずは座れ、食え。

しっかり栄養を体に押し込め。

思う事は色々とあるだろうが、一先ずは考えるな。

言う事を聞け。俺を殺したかったらな。」


そう言いながら片手を椅子の背もたれにかけて、横柄な姿勢で選んだパンを一口大きく噛み切る。


ラークの言い分は随分荒いものである。

しかしルナは敵意丸出しではあったが、何故か納得したらしく大人しく倒した椅子に立て直し座る。

そして自分もパンを取り、少しずつ食べ始めた。


────────


しばらくしたらティアラとローバが食堂に入って来た。

そしてすでに食事を始めているラークとルナを見てティアラは言う。


「ああっ!もう食べている!大人なのに随分とお行儀が悪いの!ルナもまだ人も集まってないのに食べてはダメじゃない!」

「...知るか。」

「...」

ヘンとラークをあざ笑いながらルナを叱るティアラ、それを無視したまま良くない態度で食べ続けるラーク。

そして悪い事だと知り、きまり悪くなって食べていたパンをそっと降ろすルナ。

隣でローバがティアラに一言言う。


「それはティアラが寝坊したからでしょう?だからティアラは何も言えません。」

「ぶー...」

大きくむくれるティアラ。

またラークにも一言言う。


「ラーク様、これからは食事の際には一緒に集まったら食べるというのはどうでしょうか?まだ幼い子が二人もいますので、この子達によくない癖をつけるのはどうかと。」

素っ気なくラークの行動を指摘する。


「おう、すまない。次からはそうするよ。」

人が変わった様に急に椅子に座り直し行儀よく食べるラーク。

さすがは貴族の出ともいうべきだろうか。

品のある食事の仕方に変わる。

それを見たローバはほくそ笑んだ。

そしてルナの隣に座り丁寧に食事の際の礼儀作法を少しずつ教えながら食事をしていく。

ルナは不器用に真似しながら一生懸命習う。


ティアラはそんな二人を楽しそうに見つめながらそっとスープのグリーンピースをローバの皿に移す。

間もなくローバにバレて全部食べさせられる涙目のティアラ。


そんなごたごたした朝食だった。

そしてこの日の朝食はルナにとっては最も特別な思い出の一つになった。

朝食が終わり、ルナはローバに従い後片付けを手伝う。

ティアラはグリーンピースを無理やり食べさせられた事でテーブルの上にうつ伏せで悶えていた。


片付け終えたルナはラークに配当された部屋に向かった。

────────

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