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忌子物語  作者: あむ
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【20話】人質

ティアラは自分の部屋のドアを開けた。

そして堂々と立っているラークとその前に倒れているルナが見えた。


「ルナ!」

ティアラは激怒した。

どうやって魔法を使ったのかも覚えていない。

ただ反射的に魔力を集め、放った。


彼女の手と身の周りから数々の種類の魔法陣が現れ、そこから無数の結晶が放たれた。

大きさはそれぞれだが、大体は矢じりくらいだろう。

その結晶は正四面体から正二十面体まで、色々な形をしている。


魔法陣の構成図も似ているが少しずつ違っている。

純粋に魔力を引き出し魔力をそれぞれの属性ごとに結晶化する為の魔法陣であった。


しかしこれを見た魔導士達は俄然として魂消ちゃうだろう。

魔法陣の数だけではない。


これは厳密にいえば生身の生物が駆使する正式な魔法とは言えないのだ。

つまり普通の生身の魔導士なら不可能な魔法だ。

魔力を結晶化させた物を魔力結晶と呼ぶ。

そして魔力結晶を作るという事はどんな魔法駆使よりも圧倒的に難しい。

従って魔力の結晶化は魔法工学に基づいた精密度の高い高度な魔法機具のみで抽出ができる。

また保管もとても難しく、特別な魔法工学に基づいた容器が必要だ。

故にとても高価な物であり、研究もあまり進んでない物質であった。


しかしティアラは平然と生身で結晶化をさせたのだ。

実際、自然魔力を持つティアラ自身にも魔力の結晶を放出する事はとても非効率であった。

例えるのなら石炭を石の様に投げているだけの様なものだった。

ティアラが放った魔力結晶の大きさの火属性或いは光属性の魔力結晶一つあれば、松明など不要であった。

しかもその持続性も松明と比べるとずっと長く、大体十日~二十日くらいは発動させっぱなしでも灯りが消える事はないのだ。

つまり、ティアラが放っている数十の魔力結晶一つ一つが下級魔法の威力に値する。

戦闘経験のない故の結晶化ではあったが、魔導士達が見たら俄然として魂消ちゃうのは間違いないだろう。


ラークは反射的に巨剣を背中に納刀し、その巨剣を盾にするように背中を向けた。

そして少年を庇うように抱き締め小さく縮こまる。

そしてポケットから透明な宝石がついたアンクレットを取り出し、片手で器用にルナの左足首に付ける。

その間、大剣では防ぎきれない魔法の弾丸が彼の四肢を掠めて行く。

その中で一つの弾丸がラークが庇いきれなかったルナの腕を掠めた。

それを見たティアラは慌てて魔法を止める。


一通りティアラの魔法の矢が降り注いだ後、ラークは行動に出た。

気を失っているルナの首を掴み軽々と持ち上げた。

そしてベルトから短剣を抜き、ルナの首元に当てる。

生憎にも村で負った傷の近くに。


「お嬢ちゃん、さっき俺が大丈夫って言ったの...信じてないな。」

気を失っているルナの首元に刃物を突き付けるラークはどう見ても悪党そのものだった。

突き付けられた鋭い短剣によりルナの首元がやや斬られ血が滲み出ていた。


「ルナにそんな刃物を突き付けながら何を言っているの?

しかもさっき部屋から滲み出る怖いオーラもそうだったし、信じられるわけないじゃない?

いいからルナを放してよ!」


ティアラは叫びながら近づこうとする。

それをラークは阻止する。


「おっと、それ以上近づくな。それに殺そうとしたのは俺じゃない。むしろお嬢ちゃんの方だぜ?

なんせ俺が庇わなかったら、このかわいいお嬢ちゃんはそのままそっちのお嬢ちゃんの魔法で死んだだろうよ?」

ティアラはそれを聞き、その場で立ち止まる。

それを確認したラークは話を続ける。


「俺がこの子を人質にしたのは他でもない。

興奮したお嬢ちゃんを落ち着かせる為だ。

史上最強の勇者候補様とやり合うなんざあ割に合わなすぎる。

もう一度言う。俺はこの子を殺す気もないし、悪い事をする気は今はない。

落ち着け。深呼吸しろ。」


ティアラはラークの言う通り深呼吸をする。

そして興奮した気持ちを落ち着かせた。

興奮で止まっていた明晰な頭脳が働き始める。

そして今の状況やラークの行動から見てラークのいう事が真実だと判断する。


「ふう...もういいわ。ルナを放してちょうだい。」

短剣を納め、ルナをポイッと少女の方に軽々しく投げるラーク。


ルナの容態など気にせずに適当に投げたのだった。

地面に適当に転がせておけばいいやとも思った。

しかしティアラは風属性の魔力を使い優しく空中に浮かせたまま、別の風属性の魔法でベッドのベールを退かした。

そしてそっとベッドに降ろす。

魔力で何でもこなしちゃうその姿を見たラークは内心驚く。


「ちょっと危ないじゃない!気を失わせたのならもっと優しくしなさいよ!」

ティアラはベッドに寝かせたルナに近づきながら文句を言った。

そしてルナの状態を確認する。

幸い気を失っているだけで、安らかな寝息を立てていた。

顔色が蒼白なのはおそらく腹部への打撃のせいだろう。

それを確認してほっとするティアラ。


「それと、ルナは男の子だからね。」

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