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忌子物語  作者: あむ
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【12話】洗身(2)

「ま、前は後ろを洗ったみたいに洗えばいいわよ!私は先に出ているから!入り口にいるから何かあったら呼びなさい!腕や前の部分ぜーんぶしっかりゴシゴシするんだよ!そして後ろにある大きな湯船に首まで入ってゆっくり百を数え終えたら出てきなさい!」

目を両手で隠したまま少女は慌てて言う。

そしてあたふたと出て行った。


少女は外からもう一度叫ぶ。

「全部洗ったら必ずちゃんと百数えたら出て来るんだよ!百は十を十回数えると百だからね!」

パニックになりながらも、少年を気遣う少女だった。


少年は立ったまま、不器用な手付きでタオルと石けんを取り体を洗った。

少女の様に器用にする事が出来ず、随分と時間がかかってしまう。

感覚をなくした足の裏はタオルの強い摩擦で再び感覚を取り戻し怪我をしていることを訴える。

それでも少女の言う通り足の裏や足指の間もゴシゴシ洗う。


水をかけて泡を洗い流した後、湯船に入った少年は十を十回数え始めた。

温泉のお湯で体が溶けるような気持ち良さにしばらく身を任せた。

しばらくしたら古傷や傷痕の部分、特に足の裏がツンツンとムズ痒くなってきた。

しかし初めて入るお風呂の気持ち良さの方が勝ったらしく少年はつい、数を数えることを忘れそのまま堪能した。


そして少年が風呂から出て脱衣場に来ると、少女は脱衣場の入り口の外から少年に言った。


「出てきたのならそこのタオルを使いなさい。水気がないようにしっかり体を拭くんだよ。髪もしっかり水が垂れ落ちないように拭きなさい。そしてあんたの服と靴はボロボロすぎるからもう燃やしたわ。そこに服も置いてあるからその服を着て。」


「……あ、それと下着はないから。」

間を置いて一言付け加える。


大きなバスタオルと共に真っ白いシャツ、白いスリッパが置いてあった。

サイズは随分と大きめであった。


それを着て少年は出て来る。

少女はいつの間にかネグリジェではなく、白いワンピースに着替えていた。

髪は一つに束ねてポニーテールにしている。

少年の髪はまだ半濡れ状態だったため、少女は少年の手を取り、再び脱衣兼洗面所に入った。

そして鏡の前にある椅子に座らせた。

少女は少年の後ろに立ち首元の傷痕を見る。


「よしちゃんと治っているわね。」

クワで出来ていた首の傷がやや薄れていた。


実はここの温泉には治癒効果があった。

即効性はすごく劣るが、ゆっくり日をかけて何度も浸かっていけば古傷等は痕跡もなくなる。


嬉しくなった少女は左手の掌を少年の髪に向けた。

少女の掌から魔法陣が現れ、そこから暖かい風が吹き出してきた。

その風を器用に操りながら右手でゴシゴシと髪の毛を乾かしていく。

そして最後には櫛を使い少年の長い髪を丁寧に梳かした。


────────

汚れが落ち、綺麗になった少年はとても見違えるものがあった。

梳かした真っ黒な長髪はとても清純に見えた。

体中はまだ傷痕だらけだったが、顔にはそういう傷がなく肌もスベスベしていた。

少年の肌は真っ白だった。

汚物を被せられ洗う事もしていなかったせいで日光から守られたらしい。

村では普段目立たないように常に影の下にいた事も作用しているのだろう。

長い前髪の合間から覗く大きな瞳は金色に輝いていて、真っ白な肌と鮮やかな対比を成していた。

鼻も形よくまっすぐに伸びていた。

唇も風呂から上がったばかりのせいか、ぷるんと艶をもっていて赤く染まっている。

やや長めの白いシャツは見方によってはワンピースにも見えた。

そう、誰が見ても可愛い女の子だった。


────────

そんな少年の見違えた姿を見た少女はとても自慢げに微笑んでいた。


「どう?これがあなたの本来の姿よ?」

鏡に映った少年はムズムズする感覚で気分が変になる。


「じゃあ、私の部屋に戻りましょうか!」

少年の手を取りハキハキと歩き出した。


────────




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