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街の噂と新たな狩場

蓮はフィールドでフェルノクシスの調整を終えると、肩のリィに軽く触れながら街へと戻ってきた。


 


街路は相変わらず賑わっていて、プレイヤー同士の談笑や露店からの呼び込みがあちこちで響いていた。


酒場の前を通りかかると、中から大きな声が聞こえてくる。


 


「またあの《アッシュバイソン》かよ! あれ範囲スタンプやら突進やら厄介なんだって」


 


「でも逆にいま狙い目だろ? 討伐報酬はそこそこ良いし、ドロップの黒鉄角が鍛冶屋で人気らしいぜ。

防具や武器の強化素材になるから、ギルドでまとめて狩ってるとこも多いってさ」


 


「中型レイド扱いだしな。ソロはきついが少数でもちゃんと動けりゃ行ける。最近だと敏捷特化の連中がよく挑んでるってよ」


 


蓮は思わず足を止めた。


(中型レイド……アッシュバイソン。黒鉄角が素材……か)


 


肩のリィが小さく「キュッ?」と鳴いて蓮を見上げる。

蓮は軽く笑ってその頭を指で撫でた。


 


「いや、ちょっと思ったんだ。お前とフェルノクシスの専用装備……作れるかもしれないなって」


 


リィは嬉しそうに虹色の羽を揺らし、短く「キュッ!」と鳴いた。


 


(それに……最近またちょっと周りがざわざわしてる。

専用装備を用意しておくに越したことはない。次のイベントや、どっかのギルドに仕掛けられた時に後悔したくないからな)


 


酒場の横に設置された掲示板を軽く眺めると、そこにも



◆ 《中型レイド・アッシュバイソン》 討伐推奨中 ◆

・ドロップ:黒鉄角、魔皮、暴走核

・鍛冶屋からの買い取り高値

・推奨人数:3~5名(敏捷・バランス型推奨)



と、しっかり貼り紙が出ていた。


 


蓮は剣の柄にそっと手を置き、小さく息を吐いた。


「……よし、決まりだな。行こうぜリィ、フェルノクシスにも声かけてまたすぐ出る」


 


リィは誇らしげに羽を広げ、小さく「キュッ!」と声を上げた。


蓮はその様子を見て満足そうに笑い、街の奥へと歩を進めた。

これから訪れる激しい狩りを前に、ほんの少し胸の奥が高鳴っていた。

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