夜狼神フェルノクシス
蓮の掌で脈打っていた古代召喚石は、虹色の粉を受け取るとわずかに光を強め――
次の瞬間、小さな音を立てて砕け散り、魔法陣へと光が走った。
石畳に刻まれた古代文字が強い光を放ち、低い振動が空気を震わせる。
やがてその中央から黒い靄が湧き上がり、長い脚、鋭い耳、漆黒の毛並みを備えた狼がゆっくりと姿を現した。
その背には青白い魔結晶が浮かび上がり、紅玉の瞳がじっと蓮を見据える。
呼吸と共に口元からは冷たい魔気が吐き出され、広間の空気をさらに張り詰めさせた。
(……やっぱりこいつ、普通の狼じゃない。これが古代の夜狼神……)
肩のリィが小さく「キュッ」と鳴き、虹色の羽を軽く揺らす。
狼はそれに反応するように一瞬だけ瞳を細め、次の瞬間ゆっくりと頭を下げ、尾を静かに揺らした。
「……そうか。お前も、俺たちと一緒に来る気か」
蓮はそっと歩み寄り、その黒鉄色の頭に手を置く。
狼は細く目を閉じ、軽く鼻を鳴らして額を蓮の掌へ預けた。
「これからは――フェルノクシスだ。
夜を駆けるお前に似合う名前だろ」
狼は瞳を大きく開き、嬉しそうに短く鳴くと、その場に座って尾を勢いよく振った。
肩のリィが虹色の羽を高く広げ、粉をそっとフェルノクシスへと降らせる。
狼はそれを浴びて満足そうに目を細め、軽く頭を下げた。
すると次の瞬間、蓮の視界にシステムウィンドウが複数同時に開いた。
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【システムメッセージ】
至高契約および古代召喚により、
召喚獣スキルが進化・新生しました。
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「……やっぱり、至高契約や古代召喚を経るとスキルまで変わるんだな」
蓮は少し息を吐き、肩のリィを見やった。
リィは誇らしげに虹色の羽を広げ、フェルノクシスは鋭い尾を左右に揺らしながら蓮を見上げる。
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【蓮】
【レベル】42
【HP】14,200
【MP】18,900
【STR】1,100
【INT】3,300
【VIT】800
【AGI】1,480
【スキル】
・サモン:フェアリードラゴン(リィ)
・サモン:夜狼神
・双魂律動(召喚獣と同調し能力が大幅強化)
・フェイントステップ(瞬間的に視界から消える高速移動)
・双魂閃撃(リィと魔素を共鳴させ、剣に虹色の魔力を纏わせて斬る連撃)
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【リィ(フェアリードラゴン)】
【レベル】47
【HP】18,900
【MP】22,600
【STR】1,250
【INT】4,400
【VIT】950
【AGI】1,780
【スキル】
・双魂律動(主と同調し一定時間全能力を大幅上昇)
・フェアリーレイン(範囲光魔法攻撃)
・ヒーリングエコー(継続回復魔法)
・七彩障壁(高位魔法結界)
・守護虹環(蓮を重点的に守る虹膜防壁)
・スウィフトフェザー(瞬間的に移動速度を極限まで引き上げる)
・七彩の息吹(近距離を薙ぐ高密度魔素ブレス)
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【フェルノクシス(夜狼神)】
【レベル】1
【HP】320
【MP】220
【STR】30
【INT】20
【VIT】24
【AGI】130
【スキル】
・影疾走(残像を残すほどの加速)
・裂爪(連撃を繰り出し、斬るたびに速度が上昇)
・暗紋領域(周囲の味方の移動・攻撃速度を強化)
・黒鉄の咆哮(敵の動きを鈍化させる魔声)
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さらにその下にもう一枚のウィンドウが開き、特別な連携効果を告げた。
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【特殊連携スキル:三魂連環】
フェルノクシスを召喚中、蓮・リィ・フェルノクシスが同時に行動することで
・三体全員の移動・攻撃速度が大幅に強化
・攻撃時、魔素が連鎖し追加ダメージが発生
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蓮は剣を軽く握り直し、小さく笑った。
「これなら、どこまでも速く――誰にも追いつけないくらい遠くへ行けるな」
肩のリィは虹色の粉をぱっと舞わせ、フェルノクシスは一瞬影を滑らせるように蓮の周囲を駆け、嬉しそうに尾を振った。
蓮はそんな二体を見て、満足そうに息を吐いた。
(これで……何が来ようと、俺たちは――絶対に止まらない)
虹色と黒鉄が交錯するその光景は、古代の祭壇でひときわ鮮烈に輝いていた。
三つの魂は確かにひとつとなり、新たな物語へと踏み出した。




