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イベント前夜 ─ 現れる強者たち

街の中央広場は、夕暮れが差し込むころでも相変わらず混み合っていた。


 昼間に発表された幻獣素材の告知がまだホログラムに流れ続けている。

 それを眺めながら、街のそこかしこで声が飛び交っていた。



「なあ、聞いたか?あの“黒月のフィル”も今回のイベント参加するらしいぞ」


「黒月のフィルって……あのソロ専の暗殺者?PKランキングじゃトップ常連の?」


「ああ。欠片奪えないのに何のために出てくるんだって思ったけど、

 狩場潰して討伐数止めるには最適だろ。あいつの隠密奇襲にやられたら終わりだぜ」


「やっべぇ……マジで死ねるな。蓮とかリナだけがやばいんじゃねーじゃん」



 別の通りでは、武器屋の軒先で若い冒険者たちが怯えた顔を見せていた。


「それだけじゃねーぞ。聞いた話だと、《聖泉のマティア》もギルメン引き連れてきてるらしい」


「え、あのヒーラー集団?なんで?」


「素材がヤバいから、ヒーラー連中が自分らの防具強化のために最前線出てくるんだとよ。

 しかも全員自前で回復飛ばしまくれるから、普通に正面から潰すのも難しいらしい」


「いやそれもうヒーラーじゃねーよwww」



 SNSも既に大荒れだった。



【SNS】

「黒月のフィルはガチでPKしにくるらしい。欠片奪えなくても狩場潰し狙い」

「聖泉マティアのヒーラー隊が前に出るとか何事www」

「ブラッククロウは人数で潰しにくるし、リナは新スキルあるし、蓮は竜と組んで無双だし」

「マジで今回のイベント地獄すぎwww」


***


 さらに、街の酒場では別の噂が流れていた。


「おい、あの“アイゼル”見たか?」


「アイゼル?あの化物盾職か……挑発スキル極振りで物理も魔法もカウンターで返すっていう」


「そう。さっき酒場の前でギルドの連中と話してた。どうも今回、

 幻獣素材で鎧を一気に強化しようとしてるらしいぞ」


「マジかよ……あれにPKで当たったら終わりじゃん」


「逆にわざと攻撃してカウンターで即死する奴続出する未来が見えるwww」



 街は完全に戦場の前夜だった。


 普通の素材目当てならまだしも、今回の幻獣素材は武具の基礎性能を根本から塗り替える。


 PKしても欠片は奪えないが、狩場を潰されれば素材は取れない。


 街の誰もがそれを理解していた。



 石畳の隅で座り込んでいた新人冒険者の一団は、不安そうに顔を見合わせていた。


「俺たち、やっぱ参加やめとくか?」


「でも……幻獣素材なんて次いつ手に入るか……」


「死んでもいいから少しでも狩るしかねぇよな。リスク取らなきゃ、装備じゃ一生最前線に立てねぇ」



 そのやりとりを聞きながら、蓮は静かに息をついた。


 肩の上のリィは周囲の熱気に少し落ち着かない様子で、小さく羽を震わせていた。


「……大丈夫だ。お前がいる。俺たちは俺たちのやり方で行くさ」


 リィは短く「キュッ」と鳴き、誇らしげに胸を張った。

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