静謐なる狩人
狩猟祭が終わった。
夜の森に、システムメッセージが透けるように浮かぶ。
《第一回 狩猟祭》 終了!
最終ランキング集計中……結果を発表します。
1位 葉山 蓮 & リィ(討伐数:2410体)
2位 リナ(討伐数:1580体)
3位 クロス(討伐数:1120体)
葉山 蓮 様には、限定称号《静謐なる狩人》と特別報酬を贈呈します。
「……はぁ、終わったな」
肩の上のリィは、俺の声に反応して小さく鳴き、尻尾をくるんと巻いて俺の頬に触れてきた。
森は変わらず静かだ。
さっきまで何百、何千と討伐していたのが嘘みたいに、虫や夜鳥の声だけが響いている。
「やったな、リィ」
「キュッ!」
リィは誇らしげに翼を広げる。
その瞳にはこの森のどんな光より強い輝きが宿っていた。
***
俺はログを呼び出して、そっとステータスを確認した。
Lv:32
HP:1040 MP:1950
STR:84 VIT:100 DEX:140
INT:310 MND:285 AGI:116
サモナースキル:
・契約魔法(Lv5)
・召喚制御(Lv4)
・魔力伝達(Lv3)
・エーテル感知(Lv2)
・護りの符(Lv2)
生活スキル:
・採取(Lv6)
・釣り(Lv4)
・調理(Lv1)
Lv:38
HP:4000 MP:5200
STR:240 VIT:200 DEX:390
INT:680 MND:560 AGI:430
スキル:
・フェアリーブレス(Lv7)
・翠光の渦(Lv2)
・癒しの鱗粉(Lv4)
・強化魔力障壁(Lv2)
・共鳴の煌き(Lv2)
「……お前がいなきゃ、ここまで絶対に来れなかったな」
言いながら笑う。
リィは「当たり前だろ」とでも言いたげに鼻を鳴らし、小さく翼をぱたつかせた。
(レベルだって……俺よりずっと先を走ってる)
そのことが不思議と悔しくもなく、ただ誇らしかった。
***
ログアウト前に、スマホに連動した通知が一気に雪崩れ込んでくる。
⸻
【公式SNS】
「#狩猟祭 最終結果発表!話題のソロサモナー葉山蓮が堂々の優勝!圧倒的討伐数2400超!」
【配信コメント】
「おいバケモンじゃねーかwww」
「リィ可愛くて強すぎるの反則でしょ」
「なんかもうNPCより強い説w」
「このサモナーのんびりとか言いながら一番狩ってるの面白すぎる」
【掲示板深夜スレ】
「静謐なる狩人って称号かっこよすぎ」
「運営これ次の調整で下方くるなwww」
「でもこういう奴が一人いるから盛り上がるんだよな」
「……まったく、みんな騒ぎすぎだろ」
俺はスマホを伏せて、夜の森に深呼吸する。
でも、そのざわつきをどこか心地よく思っている自分も確かにいた。
(これだけやったなら――もう誰に何を言われても恥ずかしくないな)
リィは俺の肩で小さく尻尾を揺らして、森の夜風をじっと感じていた。