【第八話(前編):復讐を誓う少女】
ヴィクトール・レインハルトが失脚し、町の支配者となった俺は、次なる課題に直面していた。
ヴィクトールの娘、クラリス・レインハルト。
彼女はまだ若いが、父親譲りの強い意志を持ち、民衆からの支持も厚い。
放っておけば、いずれ俺の支配にとって障害となる。
クラリスは現在、町の孤児院に身を寄せている。
俺は数名の部下を連れ、孤児院へと向かった。
扉を開けると、中には数十人の子供たちと、厳しい眼差しを向けるクラリスの姿があった。
「……来たのね」
彼女は俺を睨みつけながら言った。
「鬼頭悪行……父を陥れ、町を奪った男」
「誤解だな。俺はお前の父を『正しく裁かれる』ように手を回しただけだ」
「ふざけないで! 町の人々を欺き、父を失墜させたくせに!」
クラリスの瞳には憎しみが燃えていた。
俺は肩をすくめ、部下たちに目配せして孤児院の入り口を封鎖させた。
「お前は、これからどうするつもりだ? 町の英雄として立ち上がるか?」
「そんなこと……」
彼女は唇を噛みしめ、視線を落とす。
「私には何もない……父も、家も、立場も……全部、あなたが奪ったから……」
「ならば、俺に仕えろ」
俺は冷静に言い放った。
「今ならまだ、お前に選択肢はある。孤児院に留まり、静かに暮らすか。あるいは、俺の元で生きるか」
クラリスは驚いたように俺を見上げた。
「……あなたの元で?」
「そうだ。お前が俺に従うなら、孤児院は保護しよう。むしろ、以前よりも良い環境を提供してやる。だが、お前が俺に牙を剥くなら……わかるな?」
彼女は拳を握りしめ、震えていた。
「あなたなんかに……従うくらいなら……!」
彼女の反応は予想通りだった。
俺は微笑みながら、静かに言った。
「よく考えるんだな。お前が選ぶ道次第で、孤児院の未来も決まる」
俺は背を向け、扉の外へと歩き出す。
「次に会うとき、お前の答えを聞かせてもらおう」
クラリスは悔しそうに俺を睨みつけていた。
この少女をどう利用するか……
俺の支配は、まだ始まったばかりだ。






