【第七話:支配の礎】
ヴィクトール・レインハルトが失脚した後、町は混乱に陥った。
長年の統治者を突然失ったことで、役人たちは右往左往し、住人たちの間でも動揺が広がっている。
しかし、この混乱こそ、俺にとって絶好の機会だった。
まず、俺は混乱する役人たちを集め、冷静に言い放った。
「お前たちに選択肢はない。この町を支配するのは俺だ。従うか、それとも俺の敵になるか、好きな方を選べ」
ほとんどの役人たちは、自らの立場を守るために俺に従う道を選んだ。
ヴィクトールの信任を受けていた者たちは反発したが、すでに俺の手は回っていた。
「ここにヴィクトール派の裏取引の記録がある。お前たちの汚職も含めてな」
俺は用意していた偽の証拠を見せ、彼らを脅した。
「このままいけば、お前たちは町民から吊るし上げられることになるぞ」
それを聞いた途端、彼らの顔色は青ざめ、俺に従うしかないことを悟った。
こうして、俺は町の行政機構を掌握した。
次に、俺は騎士団を取り込む必要があった。
ヴィクトールの統治下では、騎士団は町の秩序を守る存在だった。
だが、彼らの忠誠心は町長に向けられていたわけではなく、秩序そのものに向けられている。
そこで俺は、騎士団の幹部たちと個別に接触し、買収を持ちかけた。
「この町を混乱させたくなければ、俺に従え。俺はお前たちの利益を保証する」
金と地位をちらつかせると、一部の幹部たちはすぐに俺に寝返った。
また、彼らにとって最大の懸念は、町民の不満が暴動に発展することだった。
俺はその点も利用した。
「俺が支配することで町は安定する。お前たちも、面倒事を避けたいだろう?」
こうして、騎士団の上層部を取り込み、彼らを通じて兵士たちを掌握することに成功した。
町の支配基盤を固めた後、俺は商人ギルドに目を向けた。
商人たちは金に敏感だ。俺が町を支配した以上、彼らも新たな権力者に従うしかない。
そこで俺は、商人ギルドの長に会い、言った。
「俺は町の経済を活性化させる。お前たちには利益を保証しよう」
彼は慎重な表情を浮かべていたが、俺がヴィクトールを失脚させたことを考えれば、抵抗するのは無意味だと悟ったようだ。
「では、新たな支配者としてのあなたの条件を聞かせてもらおう」
俺は微笑みながら答えた。
「税制を改定し、商取引を活発化させる。もちろん、俺に従う限りはな」
こうして、商人たちの協力も取り付けた。
俺の支配は、もはや揺るぎないものとなった。
町の行政、治安、経済のすべてが俺の手中にある。
だが、まだやるべきことはある。
ヴィクトールの娘、クラリス・レインハルト。
彼女は今も孤児院に身を寄せ、俺に対する敵意を燃やしているはずだ。
彼女をどう扱うか……それが、次の課題だった。
俺は不敵な笑みを浮かべ、彼女に接触する計画を練り始めた。