【第六話(後編):影に潜む悪意】
町長ヴィクトール・レインハルト。
正攻法では崩せない男。
ならば、俺の持つ最も卑劣な手段を使って、その権力の座から引きずり下ろすまでだ。
俺はスキルポイントを確認した。
【現在のスキルポイント:10】
ヴィクトールとの対決を見越して、ここまで温存していたものだ。慎重に選び、狡猾に戦うための力を得る。
【取得可能なスキル一覧】
●【偽証の囁き】……特定の相手に嘘を信じ込ませる。
●【暗影潜伏】……影の中に潜み、気配を完全に消す。
●【腐敗拡散】……相手の評判を大きく損なう風評を自然発生させる。
●【裏切りの種】……特定の対象の心に疑念を植え付け、関係を崩壊させる。
「……これで決まりだな」
俺は【腐敗拡散】と【裏切りの種】を習得した。
これで、ヴィクトールの信頼と名声を根底から破壊することができる。
まずは、町の住人たちの間にヴィクトールへの疑念を植え付ける。
俺は部下たちを使い、「ヴィクトールが裏で貴族と癒着し、町の税金を横流ししている」という噂を広めさせた。証拠がなくても構わない。人々は悪い噂には敏感だ。
「最近、町の税金が上がったのは、町長が貴族に金を流してるかららしいぞ」 「孤児院への支援金も減らされたって話だ……本当に善人なのか?」 「そういえば、彼が直接金を扱っているところを見た者はいないな」
一度広まった噂は、止められない。
次に、ヴィクトールの側近に【裏切りの種】を仕掛ける。
彼の右腕とされる役人、グレゴリーは忠実な部下だったが、俺は彼の周囲に「ヴィクトールはお前を切り捨てるつもりだ」という情報を流し続けた。
「最近、町長がグレゴリーの不正を疑ってるらしいな」 「もし本当なら、お前もそろそろ潮時じゃないか?」 「先に町長を売れば、お前が助かる道もあるぞ」
次第にグレゴリーは焦り始め、ヴィクトールの指示に対して疑念を抱くようになっていった。
そして、決定打を打つ。
俺は、ヴィクトールが孤児院に援助していた金を、不正資金のように見せかける偽の証拠を作成した。
さらに、賄賂を受け取ったかのような書類を役所にばら撒く。
そして、決定的な瞬間を迎えた。
町の中央広場にて、ヴィクトールに対する糾弾が始まる。
「町長! これらの書類は何ですか!? 孤児院の支援金を不正に流用していたのでは!?」「貴族と裏で繋がっていたのではないですか!?」
ヴィクトールは動じず、毅然とした態度で反論した。
「これは偽りだ! 私はそんなことはしていない!」
だが、すでに住人たちは疑念に染まっていた。
「なら証拠を見せろ! 清廉潔白だというなら、帳簿を開示してみろ!」
そして、ここでグレゴリーが裏切る。
「……町長、申し訳ありませんが、これ以上あなたにはついていけません」
彼は俺が用意した偽の証拠を広場で公開した。
ヴィクトールは顔色を変えた。
「なぜだ、グレゴリー!? お前は私の側近だったはず……!」
「あなたが信頼できる人物かどうか、わからなくなったのです」
完全に瓦解した。
町の民衆は怒号を上げ、ヴィクトールを糾弾する。
「町長のくせに、貴族と結託してたのか!」「もう信用できねぇ!」
そのまま、ヴィクトールは役人たちによって拘束され、町の統治権は失われた。
こうして、町長ヴィクトール・レインハルトは失脚した。
そして、俺は巧妙に手を回し、新たな町の支配者としての地位を確立した。
「さて……これで、この町は俺のものだな」
俺は笑みを浮かべながら、玉座に腰掛けた。
【経験値獲得!】 【レベルアップ:Lv.15→Lv.18】 【スキルポイント+6】
「悪行は、やめられねぇな……」
俺は、新たな支配の計画を練り始める。