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【第五話:腐敗の手を役人へ】

 俺の支配網は着々と広がっていた。賭博場を完全に掌握し、取り立て業と高利貸し業を回し始めたことで、裏社会での影響力は増している。しかし、これだけではまだ足りない。

 次なる標的は、役人たちだ。


 役所には、街の金の流れを管理する会計係、税金を取り立てる徴税官、そして治安維持を担当する騎士団の幹部がいる。どれも俺の邪魔になりうる存在であり、同時に利用価値のある連中でもあった。

「まずは会計係の弱みを握るか……」

 情報収集のために俺は部下を動かし、役人たちの私生活を洗い出した。すると、すぐにいくつかのネタが見つかった。

 会計係のグスタフは、公金を横領し、愛人に貢いでいる。 徴税官のバルナバスは、裏で金を懐に入れ、取り立てを緩めている。 騎士団の副隊長ライオネルは、貴族の娘を誘惑し、秘密裏に愛人関係を続けている。

「……どいつもこいつも、腐りきってやがるな」

 だが、それが俺には好都合だった。弱みがあるということは、脅せば思い通りに動かせるということだ。


 最初に手をつけたのは会計係のグスタフだった。

 ある夜、彼が愛人と密会しているところを、俺の部下が尾行していた。そして、決定的な瞬間を絵に収める。

 次の日、俺はグスタフのもとを訪れ、無造作に封筒を机に投げた。

「これは……?」

 封を開けた瞬間、彼の顔色がみるみる青ざめていく。そこには彼が公金を横領し、愛人に貢いでいる決定的な証拠が収められていた。

「お前の秘密を握らせてもらった。バレたくなければ、俺に協力しろ」

「そ、そんな……!」

「お前に拒否権はない」

 俺はグスタフに、賭博場の収益を税の帳簿から消すよう命じた。さらに、裏金の流れを操作し、俺の懐に流れるよう細工を施させる。

「従えば、俺はお前の秘密を守る。だが、裏切れば……どうなるかわかっているな?」

「……わかりました。あなたの言う通りにします……」

 こうして、俺は役所の金の流れを掌握した。


 次に狙ったのは徴税官のバルナバスだった。

 こいつもまた、公金を横領し、自分の懐に入れていた。そこで、俺は彼が隠し持つ金庫の存在を突き止めた。

「バルナバス、話がある」

「な、何の話だ?」

「お前の金庫の中身、全部知ってるぞ」

「なっ……!? ど、どういうことだ!」

「お前が役所の金をちょろまかしてるのは調査済みだ。だが、安心しろ。俺は告発するつもりはない……俺に従えばな」

 俺はバルナバスに、俺の手先となって税金の徴収を調整させるよう命じた。

「賭博場の客からの税は軽くしろ。その代わり、弱い立場の連中からもっと搾り取るんだ」

「くっ……そんなことをすれば……!」

「俺に従わなければ、お前の悪事をバラす。選べ」

「……わかった」

 こうして、俺は徴税官も支配下に置いた。


 最後に狙ったのは騎士団の副隊長ライオネルだった。

 こいつは剣の腕は確かだったが、女にだらしない。貴族の娘を誘惑し、秘密裏に関係を持っていたのだ。

 俺はその証拠をつかみ、ライオネルに接触した。

「ライオネル、お前には俺の仕事を手伝ってもらう」

「俺が? 貴様のような裏社会のゴロツキと?」

「まぁ、これを見ても同じことが言えるかな?」

 俺は彼の愛人との密会の証拠を見せた。ライオネルの顔が一瞬で険しくなる。

「くそっ……! 貴様、どこまで調べた!」

「全部さ。貴族の娘との関係がバレたら、お前は社会的に終わる。俺に従えば、秘密は守ってやる」

「……何をしろと言う?」

「俺のビジネスを守れ。賭博場の取り締まりを緩め、俺の事業を邪魔する奴を始末しろ」

 ライオネルはしばらく考えた後、低く唸った。

「……わかった。貴様の言う通りにしよう」

 こうして、俺は騎士団の一部まで支配下に置いた。


「ふふ……これで、役人どもは俺の掌の上だ」

 賭博場の経営はさらに安定し、税金の徴収も俺の都合の良いように調整された。騎士団の協力で、邪魔者を排除することも可能になった。

 俺の支配は、着々と広がっていく。

「さて、次は……この町のトップを狙うか?」

 俺の悪行に、限界はない。

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