第28話「王への報告と町の新たな統治者」
アルフォンスの敗北は決定的だった。彼は今や捕えられ、城の地下牢に幽閉されている。鋼鉄の格子の奥で、疲れ果てた表情を浮かべながら、ただじっと地面を見つめていた。かつてこの町を治め、権力を振るっていた男の姿は、もはや見る影もない。
鬼頭は牢の前に立ち、アルフォンスを冷徹な目で見下ろした。
「……もう終わりだ、お前の負けだよ」
アルフォンスはゆっくりと顔を上げ、虚ろな瞳で鬼頭を睨んだ。
「……何をする気だ?」
「決まってるだろう? 王に報告し、お前を処刑する」
アルフォンスの顔がわずかに歪んだ。
だが、もはや反抗する気力も残っていないのか、何も言い返さなかった。ただ、敗者としての沈黙が牢の中に響くばかりだった。
鬼頭はアルフォンスのことを放置し、次の計画を練るために執務室へと戻った。
アルフォンスを倒した今、この町の未来をどのように築いていくかを決めねばならない。だが、そのためには、まず国王へ報告し、正式に町の支配権を確定させる必要があった。
「国王に使者を送れ。そして、アルフォンスの罪状を報告し、処刑の許可を求める」
鬼頭の指示により、速やかに使者が派遣された。
国王がどのような反応を示すかはわからなかったが、アルフォンスがこの町で行っていた悪行は明白だった。
魔物を操る指輪を使い、住民を脅かし、裏では様々な違法取引を行っていたのだから、処刑は免れないはずだった。
そして、もう一つの問題があった。この町を誰に治めさせるのか。
鬼頭は考えた末、アルフォンスの娘・レイナを新たな統治者に据えることに決めた。レイナは父親と異なり、町の人々に信頼されており、また彼女自身も町を守ることに尽力していた。何より、彼女を新たな領主にすることで、貴族の地位を維持しながら、自分の影響力を及ぼすことができる。
「レイナを町を救った英雄として扱い、貴族の地位を継承させる。国王にもその旨を伝え、正式に認可をもらうように手配しろ」
家臣たちはすぐに動き出した。レイナ自身はまだ何も知らされていなかったが、鬼頭が彼女を選んだ以上、拒否する選択肢はない。
さらに、町の復興には莫大な資金が必要だった。
戦闘による被害は大きく、インフラの修復や経済の立て直しが急務となる。そこで鬼頭は、国王に復興予算を出させる計画を立てた。
「戦でこの町は大きく傷ついた。だが、これはアルフォンスの暴政によるものだ。だからこそ、王国は責任を負い、復興のための予算を拠出するべきだ」
こうした理屈を掲げ、国王に要求を突きつけるのだ。
もし国王が渋るようならば、別の手段を使うことも考えねばならなかった。
鬼頭の指示のもと、すべての準備が整えられていった。
数日後、国王からの返答が届いた。内容はこうだった。
『アルフォンスの罪状を確認した。よって、処刑を許可する。また、レイナを新たな領主とすることを認可する。復興費用については、一定額を拠出するが、詳細は追って協議するものとする』
この知らせを聞いた鬼頭は、薄く笑った。
「計画通りだな……」
こうして、アルフォンスの処刑が決定し、レイナは正式に町の新たな領主となることになった。そして、鬼頭の次なる狙いは、王国にさらなる影響力を持つことだった。
(まだ終わりじゃない……次は国そのものを手中に収める番だ)
彼の野望は、まだまだ終わらない・・・。