第27話:魔の指輪の激突
アルフォンスが戦場の中心で指を掲げると、その手に輝く指輪が不気味な光を放った。
次の瞬間、地面が揺れ、裂け目が生じる。その隙間から現れたのは、5体の巨大な魔物。牙を剥き、咆哮を上げるその姿は、まさしく戦場に恐怖をもたらすに相応しいものだった。
しかし、その光景を見てもベルカは冷静だった。
彼は既にアルフォンスが魔物を操る指輪を所持していることを把握していた。
そして戦が始まる前から、自らの兵に市民の避難を最優先するように指示を出していたのだ。
「市民を巻き込むな! 避難が終わるまで持ちこたえろ!」
ベルカの兵たちは魔物と戦うのではなく、混乱に乗じて市民を戦場から遠ざけることに徹していた。
そのため、魔物が暴れまわっても被害は最小限に抑えられていた。
一方、主人公はアルフォンスの動きを見ながら、ゆっくりと右手を掲げた。その指には、5つの指輪がはめられている。
「お前だけが指輪を持っていると思うなよ。」
淡々とした声と共に、指輪に魔力を流し込む。
すると、彼の周囲にも5体の魔物が召喚された。
こちらも巨大な獣や異形の怪物たち。彼らは鬼頭の命令に従い、アルフォンスの魔物へと突進していった。
戦場は混乱を極めた。魔物同士のぶつかり合いは壮絶であり、周囲の建物すら巻き込まれるほどの威力を持っていた。咆哮が響き渡り、地面が砕け、爆風が巻き起こる。
人間など、この戦いの前では塵に等しい。
だが、時間が経つにつれ、鬼頭の召喚した魔物たちは徐々に押され始めていた。
アルフォンスの魔物は一体一体が強く、さらに指輪の力で強化されているのか、徐々に優勢になっていく。
「どうした? 貴様の召喚した魔物では、私の軍勢には敵わんようだな!」
アルフォンスが勝ち誇ったように笑う。
彼は自分の指輪の力に絶対の自信を持っていた。
そして、戦況を見て、鬼頭が劣勢に立たされていることを確信し、さらなる攻勢に出ようとする。
しかし、その瞬間だった。
鬼頭はゆっくりと左手を掲げた。
そこにもまた、5つの指輪がはめられていた。
「お前だけが奥の手を持っていると思うなよ。指は10本あるんだ」
再び指輪に魔力を流し込むと、今度は新たに5体の魔物が召喚された。
それらは今までの魔物よりも一回り大きく、さらに凶悪なオーラを纏っている。
「な、なに!? 貴様、まだそんなものを……!」
アルフォンスの顔が驚愕に歪む。
鬼頭の新たな魔物たちは、瞬く間に戦況を覆した。
今まで苦戦していた魔物を蹴散らし、アルフォンスの軍勢を粉砕していく。
たちまち彼の召喚した魔物は数を減らし、やがて全ての魔物が倒された。
「ありえん……! 私の指輪が負けるなど……!」
その瞬間、アルフォンスの指に嵌められていた指輪が砕け散った。
魔力の源を失った彼は、その場に膝をつき、呼吸を荒げる。
鬼頭はゆっくりと近づき、アルフォンスを見下ろした。
「お前の負けだ」
アルフォンスは悔しさに震えながらも、すでに戦う力は残っていなかった。
最後の抵抗を試みようとするが、鬼頭はすでに彼を捕える準備を整えていた。
「さて、貴族様。ここからが本番だ」
鬼頭の冷酷な笑みと共に、アルフォンスの運命が決まるのであった……。