第23話「策略と勝利の果てに」
歓楽街の支配を手にしたことで、鬼頭悪行の勢力は着実に広がりを見せていた。しかし、完全な支配にはまだ障害があった。騎士団や商業組合の残党が密かに反撃の機会を伺っており、アルフォンスの影響力も依然として残っていたのだ。悪行は、次なる一手を打つべく、スキルと策略を駆使して戦いを進めることに決めた。
「……さて、そろそろ決着をつけるか」
悪行は屋敷の一室で情報を整理しながら呟いた。騎士団の中にはまだ彼に完全に従っていない者がおり、商業組合も裏で抵抗を試みている。特に、アルフォンスが密かに接触している貴族の支援が厄介だった。彼らは表立って手を出すことはないが、影で悪行の動きを封じ込めようとしていた。
「だが、俺のスキルを駆使すれば、どんな手も封じることができる」
悪行は新たに得たスキルを確認する。
•《操心の言霊》: 相手の心に入り込み、感情を操ることができる。ただし、長時間の効果を維持するには精神力を消費する。
•《虚偽の真実》: 相手に偽の記憶を植え付け、事実を捻じ曲げることができる。
•《影縛り》: 相手の動きを一定時間封じる。
これらを使いこなせば、騎士団の抵抗も、商業組合の裏工作も打破できるはずだ。
反撃開始
悪行は騎士団の主要メンバーが集まる会合の情報を入手すると、そこに直接乗り込む計画を立てた。スキルを駆使し、彼らの心を掌握するつもりだった。
夜、会合が開かれている屋敷の一室に、悪行は闇に紛れて潜入した。すでに騎士団の上層部が集まり、今後の方針について議論をしていた。
「……このままでは奴の支配が進むばかりだ。我々はどうするべきか?」 「貴族からの支援があるとはいえ、正面衝突は避けるべきだろう」
その言葉を聞いた悪行は、にやりと笑った。
「ならば、今ここでお前たちの意見を変えてやる」
彼はスキル《操心の言霊》を発動した。
「お前たちは、すでに俺に忠誠を誓っている」
言葉を発した瞬間、騎士たちの目が虚ろになり、一部は呆然としながらも頷き始めた。しかし、精神力の強い者は抗っていた。
「ぐっ……貴様……なにを……!」
「素直に従えと言っているんだよ」
悪行は次に《影縛り》を発動し、反抗する者の動きを封じた。そして《虚偽の真実》を使い、彼らの記憶を書き換えた。
「お前たちはすでに俺と手を組んでいる。アルフォンスは裏切り者だ」
彼らの意識がゆっくりと変わっていくのを悪行は感じた。騎士たちの表情が次第に穏やかになり、彼に向かって跪く者も現れた。
「……我々は、鬼頭様に従います」
その瞬間、騎士団の大部分は彼の支配下に入った。
商業組合の崩壊
騎士団の支配に成功した悪行は、次に商業組合を完全に掌握するための動きに出た。
商業組合の代表であるエドモンドは、彼の支配を受け入れるつもりはなかった。彼は最後の手段として、アルフォンスと接触し、貴族の力を借りることで悪行の支配を阻止しようとした。
「鬼頭悪行は、悪魔のような存在だ。奴を止めなければ、我々の街は終わる……」
だが、それを察知した悪行は、エドモンドの元へ直接乗り込んだ。
「エドモンド、裏でこそこそと動いていたようだな?」
「貴様……!」
悪行は《虚偽の真実》を発動し、エドモンドの記憶を操作した。
「お前はすでに俺に忠誠を誓っている。アルフォンスこそが敵なのだ」
「……そうだった……。アルフォンスが全ての元凶だ……」
エドモンドの表情が次第に変わり、彼の意識は完全に書き換えられた。
こうして、商業組合も悪行の支配下に落ちた。
勝利の果てに
騎士団、商業組合、歓楽街──すべてが悪行の手中に収まった。もはやアルフォンスが彼に抗う術はなかった。
「ようやく、これで準備が整ったな」
悪行は勝利の余韻に浸りながら、次なる標的であるアルフォンスの完全な支配に向けて動き出すのだった。