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第21話 騎士団長の裏切りと貴族令嬢の恋

 アルフォンスの娘レイナは、町でも有名な美貌を持つ貴族令嬢であり、周囲からの求婚も多かった。しかし、彼女に最も熱心に求婚しているのは、町の騎士団長であるグレゴールだった。

 グレゴールは高潔な騎士として知られ、町の治安を守る立場にあったが、実は秘密裏に恋人を持っていた。騎士としての名声を保つため、公にはしていなかったが、主人公・鬼頭悪行の情報網はすでにこの事実を把握していた。

「ふむ……騎士団長がアルフォンスの娘を娶ろうとしているか。だが、奴にはすでに女がいる。それを利用しない手はないな。」

 悪行は椅子に深く腰掛け、指を組みながら作戦を練った。

 まず、彼はスキル【傀儡の囁き】を利用し、レイナに恋愛感情を植え付ける準備を整えた。このスキルは、相手の潜在意識に語りかけ、時間をかけて心を操るものであり、一度かかったが最後、強烈な恋愛感情が芽生えるようになっていた。

 しかし、慎重に進めなければならない。いきなり感情を操作すれば、不審に思われる可能性があるため、まずは接触の機会を増やすことが重要だった。

 ――数日後。

 悪行は、レイナと偶然を装って町の市場で出会う計画を実行した。彼は計算された紳士的な態度を見せながら、ゆっくりと距離を縮めていった。

「おや、レイナ様ではありませんか。お一人でお買い物とは、珍しいですね。」

「ええ、たまには自分の目で品物を確かめたくて。」

 レイナは警戒しつつも、悪行の巧みな会話に引き込まれていった。彼は市場で偶然を装いながら彼女をエスコートし、さりげなくボディタッチを織り交ぜることで、スキル【傀儡の囁き】を徐々に浸透させていった。

 その晩。

 レイナの中に、今まで感じたことのない感情が芽生え始めていた。

「どうして……あの人のことが気になるの?」

 彼女は自室のベッドの上で、ぼんやりと天井を見つめながら、自分の気持ちを整理しようとしていた。しかし、頭を振ってもその思いは消えることなく、むしろ強くなるばかりだった。

 そして、翌日。

 悪行はさらなる一手を打った。

 騎士団長グレゴールが密かに逢瀬を重ねている恋人の存在をレイナに知らしめるべく、彼の密会現場を巧妙に演出したのだ。

「……まさか、グレゴール様が……。」

 レイナは衝撃を受けた。求婚してくる男が、別の女を愛している事実を知った彼女の心は、怒りと失望で満ちていた。

 そこへ、絶妙なタイミングで悪行が現れる。

「レイナ様、どうされました? お顔の色が優れないようですが……。」

「……何でもないわ。」

 レイナは強がったが、彼の優しい言葉に心が揺らいだ。

(グレゴール様が裏切っていたなんて……。でも、この人は……。)

 スキルの効果も相まって、レイナの心は急速に悪行へと傾いていった。

 それから数日間、悪行はさらに計画を進めた。

 レイナの好きな香りを身にまとい、彼女の趣味を把握し、共通の話題を巧みに作り出した。彼の話す言葉の端々に、レイナを大切に扱うような態度を見せ、彼女の心の隙間に入り込んでいった。

 さらに、彼は騎士団内の部下を利用し、グレゴールに関する悪い噂を広めた。

「最近、グレゴール様の様子がおかしいらしい……。」

「貴族令嬢と結婚しようとしながら、別の女と密会を重ねているとか。」

 この噂は瞬く間に広まり、騎士団内でもグレゴールの立場が微妙なものになっていった。そして、レイナの耳にも再び届いた。

「そんな……やっぱり本当なのね。」

 彼女の心の中で、グレゴールへの未練が完全に断ち切られた瞬間だった。

 その夜、レイナは自ら悪行を訪ねた。

「……少し、お話できますか?」

 レイナはほんのり頬を紅潮させ、目を伏せがちにしていた。

(ふふ、順調に進んでいるな。)

 悪行は内心ほくそ笑みながら、優しく微笑んだ。

「もちろんです。お話、ゆっくりと伺いますよ。」

 こうして、レイナの心は完全に悪行に向けられ、騎士団長グレゴールの求婚は意味を成さなくなった。

 ――こうして、悪行は計画通りにレイナの心を手に入れ、次の支配への布石を打ったのだった。


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