【第十五話:新たなる支配】
ギルド支部長・グルドを支配下に置いたことで、俺はこの町を手中に収めるための第一歩を踏み出した。
だが、ここからが本番だ。
ギルド支部があるこの町は、単なる小さな町ではない。
交易の要所であり、多くの冒険者や商人が行き交う重要拠点だ。
そのため、支配するには慎重な計画が必要になる。
さらに、この町にはまだ俺に敵対する勢力がいる。
ギルド内部の反対派、元々の統治者である町長、そして俺の支配に不満を持つ住民たち……。
すべての勢力をねじ伏せなければ、完全なる支配は果たせない。
だが、だからこそやりがいがある。
俺はゆっくりと笑みを浮かべながら、次の一手を練り始めた。
第一段階:ギルド支部の掌握
「──では、これよりギルドの新たな方針について話し合う」
ギルド支部の会議室に、幹部たちが集められた。
俺はその場に姿を見せず、グルドを通して指示を出す。
「これまでのギルドのやり方は通用しない。新たな体制を整え、より効率的なギルド運営を目指す」
会議室がざわつく。
幹部の中には、当然この方針に不満を持つ者もいる。
「支部長、それはどういう意味ですか?」
「まさか、魔王軍に屈するというのですか?」
「我々の誇りを捨てるのか!?」
俺はその様子を隠し部屋で観察しながら、グルドがどんな対応をするのか見極めていた。
すると──
「黙れ!!!」
グルドが机を叩きつけ、大声を張り上げた。
「これ以上の抵抗は、町の未来を危うくする! 我々は町を守るために最善の選択をしなければならん!」
その表情には、かつての気迫が微かに残っていた。
だが、俺が仕込んだ呪詛の影響で、彼は自分の意志を持つことができない。
「よし、いいぞ……」
俺はニヤリと笑い、さらに策を練った。
第二段階:町長との交渉
ギルドを掌握しても、町全体を支配するには町長を従わせる必要がある。
この町の町長は、エリック・バルフォード。
堅物な性格で、正義感が強いが、保守的な考えの持ち主でもある。
俺は、彼を従わせるための策を考えた。
「……強引にやるのは得策じゃないな」
町長を無理やり脅しても、周囲の住民たちが反発するだけだ。
そのため、まずは周囲からじわじわと締め上げていくことにした。
第三段階:町の経済の掌握
俺はギルドの交易記録を調べ、町の経済を支えている主要な商人たちをリストアップした。
その中でも特に重要なのは──
・穀物を仕入れる商人
・鉱石を流通させる商人
・武器を卸す鍛冶屋
この三者が町の経済の中心だ。
彼らを俺の側に引き込めば、町長の力を削ぐことができる。
「さて、どう料理してやるか……」
俺は、各商人に刺客を送り、徹底的に交渉を仕掛けた。
第四段階:思わぬ反撃
だが、俺の計画はここで一つの誤算にぶつかった。
「お断りします」
俺の使いを通じて取引を持ちかけた商人の一人、グスタフが、あっさりと拒絶したのだ。
「……ほう」
「私はこの町を愛している。貴様のようなならず者に協力するつもりはない」
「なら……お前の家族はどうなるかな?」
俺が脅しをかけると、グスタフは眉をひそめたが、怯えなかった。
「私の家族を狙うのか? ならば、ギルドに報告しよう」
「……フッ、ならば報告してみろ」
俺はすでにギルドを掌握している。
報告したところで、何も変わらない。
だが──
「町長はそうはいかないだろうな」
グスタフは町長と密接な関係にあり、俺のやり方が広まれば、町長が本格的に動き出す可能性がある。
(……面倒なことになったな)
俺は冷静に対策を練った。
第五段階:計画の修正
俺は即座に計画を修正し、グスタフの信用を失墜させる策を実行することにした。
「簡単なことだ……奴を『裏切り者』に仕立て上げればいい」
ギルドに、グスタフが敵国と密通しているという偽の情報を流す。
さらには、彼の商店にこっそりと魔王軍の紋章を仕込む。
そして、その証拠を町長に送りつけるのだ。
数日後──
「グスタフが裏切り者だという証拠が出た!」
町中にその噂が広がり、グスタフは窮地に立たされた。
町長もすぐに動き、グスタフは監視下に置かれた。
「ハハハハ……これで一歩前進だな」
まとめ:支配の足掛かり
・ギルドは完全に掌握
・町の経済の中心人物を追い詰めることに成功
・次のターゲットは町長そのもの
俺は支配への道を着実に進んでいる。
だが、まだ苦戦は続く。
(町長の動きが予想以上に早い……)
油断はできない。
俺はさらなる策を考えながら、次なる一手を打つ準備を始めた。