【第十二話:討伐隊襲来】
俺がこの町を支配してから、しばらくの時が経った。住民たちは俺の恐怖政治に従い、静かに暮らしている。だが、外部からの脅威は消えていない。
──そう、隣町の冒険者ギルドだ。
先日、俺の部下が潜入して得た情報によれば、隣町にあるギルド支部が俺の討伐依頼を正式に受理したとのことだった。
「ギルドの討伐隊か……」
俺は椅子に深く座りながら、ワイングラスを傾ける。
「面白いじゃないか」
敵が仕掛けてくるなら、それを迎え撃てばいい。そして──潰せばいい。
俺は町で雇った傭兵たちを呼び寄せることにした。
傭兵団「赤銅の牙」
俺が雇ったのは、「赤銅の牙」と呼ばれる傭兵団だった。
リーダーのベルクは無精髭を生やした大柄な男で、経験豊富な戦士だ。彼の率いる傭兵団は、小規模ながらも実戦慣れしており、金さえ払えばどんな汚い仕事でも引き受ける連中だった。
「ギルドの討伐隊がこちらに向かってる」
俺がそう告げると、ベルクはニヤリと笑った。
「ほう、それは面白ぇな」
「お前たちには、町の防衛と討伐隊の迎撃を任せる。報酬は戦果に応じて追加する」
「いいぜ、ボス。その代わり、戦利品は俺たちの好きにさせてもらうぜ?」
「好きにしろ」
俺がそう答えると、傭兵たちは嬉々として武器の手入れを始めた。
──いい連中だ。こういう金で動く連中は、従わせるのが楽でいい。
ギルド討伐隊、町に迫る
数日後、俺の元に急報が入る。
「討伐隊がこちらに向かっています!」
「ほう」
俺は静かに微笑んだ。
「規模は?」
「およそ二十名。精鋭ぞろいのようです」
二十名か。数は多くないが、それなりの実力者が揃っているのは間違いない。
「傭兵どもは準備できているか?」
「バッチリよ、ボス」
ベルクが不敵に笑う。
「じゃあ、迎えてやるとしようか」
迎撃の準備
俺は傭兵たちを町の各所に配置し、敵がどこから攻めてくるかを監視させる。
そして、自らは町の奥にある館で静かに待った。
──案の定、敵は正面から突入してきた。
「ここが奴の支配する町か……」
討伐隊のリーダー格の男が低く呟く。
鎧を身にまとい、長剣を携えたその姿は、いかにも歴戦の冒険者といった雰囲気を漂わせていた。
だが、それもここまでだ。
俺はすでに、彼らが町に足を踏み入れた時点で策を巡らせていた。
迎撃開始だ。
罠と奇襲
「撃て!」
俺の号令とともに、屋根の上や建物の影に潜んでいた傭兵たちが一斉に矢を放つ。
「くっ!」
冒険者たちはすぐに反応し、盾で防御する者、魔法で迎撃する者が続出する。
だが、それは俺の狙い通りだった。
矢の雨が止むと同時に、「赤銅の牙」の傭兵たちが建物の隙間から飛び出し、一斉に襲いかかる。
「なっ!? 伏兵か!」
討伐隊は応戦するが、傭兵たちは戦闘慣れした連中だ。手加減なしに襲いかかり、敵を圧倒していく。
「おらぁっ!」
ベルクが巨大な斧を振るい、討伐隊の一人を真っ二つに叩き斬る。血しぶきが舞い、冒険者たちが一瞬ひるんだ。
「ぐあっ!」
別の傭兵が短剣を突き刺し、敵の喉を貫いた。
──この戦い、俺たちの勝ちだ。
決着
討伐隊は次第に追い詰められていった。
最初は優勢だったが、次第に仲間を失い、動きが鈍くなっていく。
「撤退するぞ!」
討伐隊のリーダーが叫ぶ。
だが──俺がそれを許すはずもなかった。
「出口を塞げ」
俺の命令で、町の入口には火が放たれる。
「馬鹿な! 退路を断つつもりか!」
リーダーの叫びが響く。
「そうだよ」
俺は建物の上から見下ろしながら、静かに微笑んだ。
「お前たちはここで死ぬんだ」
俺は合図を送り、傭兵たちが最後の攻撃を仕掛ける。
討伐隊は、全滅した。
戦いが終わると、ベルクが肩をすくめながら俺に言った。
「楽な仕事だったな」
「満足か?」
「ああ、いい稼ぎになったぜ」
俺は彼に追加報酬を渡し、戦利品の回収を許可した。
俺の支配は、ますます強固なものとなる。




