【第十話:支配の深化】
町の掌握と新たな秩序
俺の支配が確立してから数日が経った。クラリスが俺の命令に従い、町の住民たちに「従順であれ」と説き続けたおかげで、町は表面上、平穏を取り戻している。だが、その実態は違う。
俺の監視隊が町の隅々まで目を光らせ、わずかな反抗の兆しすらも見逃さない体制が整いつつあった。
「よし……そろそろ次の段階に移るか」
俺は広場を歩きながら、町の様子を観察する。以前と比べて、住民たちの態度が変わったのがよく分かる。俺の姿が見えると、すぐに頭を下げ、無言のまま道を開ける。恐怖は、人間を最も効率的に支配する方法のひとつだ。
税制改革という名の搾取
俺が次に着手したのは、税の徴収システムの改変だ。
以前の町では、税は年に数回、ある程度の金額を納める形式だったが、それでは俺の求める利益には程遠い。そこで、俺は町の商人たちを集め、新しい税制を発表する。
「これからは、商売を営む者は全員、毎月の売上の一部を俺に納めることとする」
商人たちはざわめいた。
「そ、そんな……! それでは商売が成り立ちません!」
「今の税でも厳しいのに、これ以上……!」
「黙れ」
俺は冷たい声で言い放った。
「俺はお前たちから奪うだけのつもりはない。納めた税は、町の治安維持やインフラ整備に使われる。お前たちが安全に商売できるのも、俺のおかげだということを忘れるな」
事実、俺は町の警備隊の数を増やし、盗賊の取り締まりを強化していた。住民たちにとっては厳しい支配だが、それがあるからこそ平和も保たれているのだ。
「もし不満があるなら、俺の支配から出て行くがいい。ただし……出て行った先で、無事に生き延びられるとは限らんがな」
商人たちは沈黙し、やがて誰も逆らえないと悟ったのか、ただ静かに頷いた。
クラリスの役割
「次の演説の準備をしろ」
俺はクラリスに命じた。
「……また、私を使うの?」
彼女の目には、まだわずかに反抗の色が残っている。だが、そんなものは時間が経てば消える。
「そうだ。お前が表に立つことで、住民たちも受け入れやすくなる。俺が直接命じるより、お前の口から伝えた方が効果的だからな」
「……っ」
クラリスは悔しそうに唇を噛みしめるが、拒むことはできない。俺がその気になれば、孤児院の子供たちに「罰」を与えることもできるのだから。
結局、彼女はしぶしぶ俺の命令に従い、広場で住民たちに向けて演説を行うことになった。
「町の皆さん……鬼頭様のご決定に従い、新たな税制を受け入れましょう……」
クラリスの声は震えていたが、住民たちは逆らえない。彼らの表情には諦めが広がっていた。
反抗勢力の芽を摘む
支配を続ける中で、俺はある情報を手に入れた。
「……最近、密かに反抗を企てる動きがあるようです」
監視隊の一人が報告してきた。
「何?」
「はい、町の若い男たちの中に、一部ですが武器を集めている者たちがいます。今はまだ小規模ですが、放置すれば大きな問題になるかと……」
なるほど、予想通りだな。どれだけ強固な支配を築いたとしても、必ず反抗する愚か者が出てくるものだ。だが、それもまた楽しみの一つ。
「ならば、早めに処理しておくべきだな」
俺は不敵に笑い、部下たちに命じる。
「彼らを捕らえ、広場で公開処刑にしろ」
「……よろしいのですか?」
「当然だ。俺に逆らう者がどうなるか、町の連中に思い知らせてやる」
翌日、捕らえられた男たちは広場の処刑台に並べられた。
「た、助けてくれ! 俺たちはただ……」
「黙れ」
俺は男の前に立ち、冷たく言い放った。
「お前たちは俺の支配に反抗し、町の秩序を乱そうとした。その罪は重い」
「違う、俺たちはただ……」
「お前たちの意思など関係ない。ここで見せしめになってもらうだけだ」
俺は部下に合図し、男たちは処刑された。
広場を埋め尽くした住民たちは、誰も声を発することができなかった。
「……これでいい」
俺は静かに呟く。これが支配というものだ。恐怖を植え付け、従わせる。それが最も効率の良い統治法なのだから。
クラリスは震えながらこの光景を見つめていた。彼女が次に何を思い、どう動くのか……それもまた、俺の楽しみの一つだ。