表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/32

【第九話:完全なる支配】

 クラリスが膝をついた瞬間、俺の勝利は確定した。

 町の象徴であり、反抗勢力のリーダーであった彼女が俺に屈したのだ。

 広場に集まっていた町の住人たちは、息を呑んでこの光景を見守っていた。彼らの目には恐怖と絶望が浮かんでいる。だが、それでいい。支配というものは、相手に「逆らえない」と理解させた時点で完成するものだからな。

「……いい子だ、クラリス」

 俺は満足げに微笑みながら、ゆっくりと彼女の顎を持ち上げた。

「お前は賢い。無駄な反抗をやめて、俺の下につくというのは正しい判断だ」

 クラリスの唇がわずかに震える。だが、彼女の目には怒りの炎がまだ宿っていた。いいだろう。簡単に心まで折れるとは思っていない。だが、その炎もいずれは消えることになる。

「約束通り、子供たちには手を出さないわね……?」

 かすれた声でクラリスが問う。

「当然だ。お前が俺に従う限りはな」

 俺は手を振り、部下たちに命じて孤児院の子供たちを元の場所へと戻させた。子供たちは怯えた目でこちらを見ていたが、クラリスが頷くと静かに後退していく。これで人質は維持しつつ、無用な混乱は防げる。

「さて、これで決まったな」

 俺は広場に集まった町の人間たちを見渡した。彼らはまだ混乱している。だが、ここで畳み掛けなければならない。

「これからこの町は、俺の支配の下で生きていくことになる。クラリス、お前もそのために尽力するのだ」

「……何をさせるつもり?」

 クラリスは俺を睨みつけながら問いかけた。

「お前には、町の人間たちに俺の命令を伝え、彼らの管理を任せる。簡単に言えば、俺の代弁者として働いてもらうわけだ」

 クラリスの表情がこわばる。

「そんな……! 私に町の人たちを裏切れと言うの!?」

「裏切り? 違うな。俺はただ、町をより良く統治するための協力を求めているだけだ」

 俺は静かに言葉を続ける。

「お前が表向き町の代表を務めることで、住民たちも安心するだろう。だが、決して忘れるな。お前が俺に逆らえば、すぐにこの町は破滅する」

 クラリスは唇を噛みしめた。だが、孤児院の子供たちや町の人々の命を考えれば、もはや選択肢はなかった。

「……わかったわ」

 その言葉が俺の耳に届いた瞬間、俺は確かな支配の感触を得た。


 その後、俺は町の支配体制を強化するための施策を進めた。

 まず、町の主要な施設──食料庫、市場、井戸、警備隊の詰所──をすべて俺の管理下に置いた。これにより、町の経済と治安を完全に掌握する。

 さらに、新たに「監視隊」を結成し、町の動向を逐一報告させる体制を整えた。俺に歯向かう動きをする者は、すぐに摘発できるようにするためだ。

 もちろん、クラリスも徹底的に利用する。彼女には定期的に町の人々へ「演説」をさせることにした。

「……私は、この町の安定のために、鬼頭様に協力することを決めました。彼の統治の下で、私たちは生きていくのです」

 クラリスが震える声でそう語ると、町の人間たちは動揺しながらも、それを受け入れるしかなかった。彼女が俺の支配下にあると知れば、抵抗する気力も失われるというものだ。

 完璧だ。

 町の人間たちは俺を恐れ、そして従うしかない状況にある。

 俺はついに、この町の完全なる支配者となったのだ。


 夜、俺は屋敷の一室で静かにワインを傾けながら、クラリスを見つめていた。

「お前はよくやったよ、クラリス」

「……ふざけないで」

 彼女は俺を睨みつけるが、もはやその視線には、以前のような強さはない。

「これからも、お前には俺のために働いてもらう」

 俺はワイングラスを回しながら続ける。

「お前の役割は、町の人間たちに俺の統治を受け入れさせることだ。そして、俺の意向を忠実に伝え、従わせること。……わかっているな?」

 クラリスは沈黙する。

 だが、もはや反抗することはできない。

 俺は満足げに笑みを浮かべた。

「これで、この町は完全に俺のものだ」

 俺の野望は、まだ始まったばかりだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ