【第八話(後編):支配の罠】
クラリスの扇動によって、町は混乱していた。
俺は屋敷に戻り、机に広げた地図を見つめる。
「……反撃の時だな」
このままでは、せっかく築いた支配が崩れてしまう。
だが、俺にはスキルがある。
俺はスキルポイントを確認した。
──現在のスキルポイント:3──
「……使うしかないな」
俺は新たなスキルを獲得する。
──【暗示】を獲得しました──
これを使えば、相手の思考に干渉し、俺に有利な決断をさせることができる。
さらに、もう一つスキルを取得する。
──【影縛り】を獲得しました──
対象の動きを一時的に封じるスキルだ。
「……クラリス、お前の意志は強いが、それでも人間だ。揺らぐ心がある限り、俺の支配からは逃れられない」
俺は微笑みながら、行動を開始した。
翌日、俺は部下たちに命じて町の広場を封鎖した。
さらに、孤児院も掌握。
子供たちを一箇所に集め、完全に俺の支配下に置く。
「さて、クラリス……どんな顔をするか」
「皆の者! 聞け!」
俺は堂々と宣言する。
「この町を統治する者として、お前たちに伝えたいことがある!」
群衆はざわつく。
クラリスが先頭に立ち、俺を睨みつけた。
「まだ何か企んでいるのね!」
「企む? 俺はただ、話し合いをしたいだけだ」
俺は彼女に近づき、そっと手を伸ばした。
「クラリス……お前は父を失い、絶望の中にいる」
「……黙れ!」
「だが、俺はお前に道を示そう」
その瞬間、俺はスキル【暗示】を発動した。
──『お前は俺の言葉を信じたくなる』──
クラリスの目が一瞬揺らぐ。
「……何を……?」
「お前の憎しみは理解できる。だが、俺に従えば、孤児院は守られる。町も発展する」
──『私が抵抗しても無駄なのかもしれない……』──
クラリスはゆっくりと息を飲んだ。
「そんなこと……」
「俺はお前を敵にしたくない」
──『彼の言葉が……本当にそうなら……』──
クラリスの手が震える。
だが、彼女はまだ抵抗を見せようとしていた。
そこで、俺は切り札を見せる。
「……そうか。ならば、これを見ろ」
俺は手を叩いた。
すると、部下たちが孤児院の子供たちを連れてくる。
「!!」
クラリスの表情が一変する。
「何をするつもり!? その子たちに手を出さないで!」
「お前次第だ、クラリス」
俺は冷たく言い放った。
「お前が俺に従うなら、こいつらは安全だ。だが、もし俺に逆らうなら……どうなるか、わかるな?」
クラリスは拳を握りしめ、震えていた。
「……卑怯者……!」
「何とでも言え。俺は結果を求めるだけだ」
沈黙が広場を包む。
クラリスは目を閉じ、深く息を吐いた。
そして、静かに跪く。
「……わかったわ」
俺は勝利を確信した。
「これで決まりだな」
俺は彼女の肩を優しく叩き、広場を見渡した。
「町はこれからも安定を続ける。俺が支配する限りな」
群衆は静まり返った。
支配は、確実に進んでいく。