【第八話(中編):追い詰められた支配者】
クラリスとの対峙を終えた俺は、孤児院を後にした。
だが、町の雰囲気がどこかおかしい。
静かすぎるのだ。
俺の支配が進むにつれ、町の人々は沈黙を強いられてきた。
だが、これは単なる静けさではない。
「町の広場で何か起こっているようです」
部下の一人が報告に来た。
「ヴィクトール派の残党か?」
「いえ、それだけではありません。町民たちが何かを企てているようです」
俺は眉をひそめた。
町民が自発的に動くことは少ない。
誰かが背後で糸を引いている。
「……クラリスか」
俺は歯を食いしばった。
彼女は俺に従わないばかりか、町民を扇動しているのか?
広場に向かうと、そこには群衆が集まっていた。
彼らは怒りをあらわにし、俺の名前を叫んでいた。
「悪行を許すな!」
「我々の町を取り戻せ!」
先頭に立つのは、クラリス・レインハルト。
彼女は拳を突き上げ、堂々と演説をしていた。
「皆さん、目を覚ましてください! この男は、私たちからすべてを奪いました!」
「彼を許してはなりません!」
町民の怒号が響く。
俺は静かに息を吐いた。
「……なるほどな」
思った以上に厄介だ。
俺の支配が固まる前に、町民を完全に扇動するとは。
「どうしますか?」
部下が問う。
俺は目を細め、群衆を見渡した。
「……ひとまず退く」
「退く、ですか?」
「今ここで衝突すれば、無駄に被害が出る。クラリスが何を企んでいるのか、もう少し様子を見る」
俺は町の中心部にある屋敷へと戻った。
扉を閉めると、すぐに護衛たちが集まる。
「状況は?」
「クラリスを支持する者が増えています。このままでは、町全体が反乱を起こす可能性が……」
「ちっ……!」
俺は拳を握りしめた。
このままでは、せっかく手に入れた町の支配が崩れる。
クラリスを甘く見すぎた。
だが、俺はまだ負けたわけではない。
「クラリスを追い詰める方法を探る。弱点を見つけるんだ」
「了解しました!」
護衛たちが散っていく。
俺は椅子に座り、深く息を吐いた。
「……この俺を追い詰めるとはな、クラリス」
だが、ここからが本番だ。
俺は立ち上がり、反撃の準備を始めた。