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櫻麻トキ  作者: 葉暮銀


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剣士番付

 夕食を食べ終わった後にもらってきた剣士番付を詳細に確認をした。


・剣士番付壱位(一位)(剣聖)・・宵闇厳三

・剣士番付弍位(二位)(剣王)・・十文字虎月(こげつ)

・剣士番付参位(三位)(剣王)・・東雲雪月(ゆきつき)

・剣士番付肆位(四位)(剣王) ・・有明海斗(かいと)

・剣士番付伍位(五位)(剣鬼)・・深更火月(かづき)

・剣士番付陸位(六位)(剣鬼)・・深更葉月(はづき)

・剣士番付漆位(七位)(剣鬼)・・曙和也(かずや)

・剣士番付捌位(八位)(剣鬼)・・十文字龍稀(りゅうき)

・剣士番付玖位(九位)(剣鬼)・・暁凛香(りんか)

・剣士番付拾位(十位)(剣鬼)・・曙次也(つぐや)


 うーん……。そこまで気になる変動が無いな……。

 アイシスが俺の隣りに座り、話しかけてきた。


「ねぇ、剣士番付の上位の人の特徴を教えてよ」


「あぁ、そうだな。剣魔の儀で対戦の可能性があるもんな。それじゃまずは剣士番付壱位(一位)の剣聖は宵闇家当主の厳三さん。剣術は質実剛健。一本気な性格をそのまま剣にしている感じかな」


「この弍位《二位》の十文字虎月(こげつ)ってどこの家に属しているの? 捌位(八位)にも十文字って人がいるわ」


今は(・・)曙家に属しているかな。まぁ十文字家が剣魔の儀に参加するはずがないから無視して良いよ」


今は(・・)ね……。なんか訳ありみたいね。まぁ良いわ。参位(三位)ってあの雪月(ゆきつき)さんで間違いないのよね?」


「あぁ、そうだね。アイシスの診察をしてくれた雪月さんだ。あの人の剣術は流麗で見惚れるしまう。幼少期に雪月さんの鍛錬は良く拝見したよ。厳三さんが剛だとすると雪月さんは柔だね」


「なんか憧れちゃうな……。あんな女性になりたいわ」


 楚々(そそ)とした不知夜美人の雪月さん。月夜のような静けさを感じさせる女性だ。品があるんだよな。

 それに対してアイシスはちょっと違うな。決して(おか)してはいけないような神々しさを感じさせる女性だ。高貴な雰囲気があるんだ。


「うーん。ちょっと無理じゃないかな。アイシスと雪月さんは完全に系統(・・)が違うだろ。目指す方向を間違うととんでもない事になるぞ」


 口を尖らすアイシス。

 たまに見かけるアイシスの不満顔だ。実際に尖らす人がいるんだから世の中は広いもんだ。


「憧れるくらい良いじゃない。どうせ私はガサツな女よ……。自覚しているんだから態々(わざわざ)指摘して(けな)さないでよ」


「おいおい、勘違いするなよ。誰がいつアイシスを貶した? 雪月さんには雪月さんの良さが、アイシスにはアイシスの良さがある。どちらも魅力的な女性だけど、太陽は決して月にはなれないんだよ」


「そんなものかしら。なんか上手くはぐらかされたような……、でも上手く騙されるのが良い女かも。今後はもう少し上手く騙してね」


「人を詐欺師みたいに言うなよ。もう次にいくぞ。剣士番付肆位(四位)が有明海斗(かいと)。俺の異母兄(いぼけい)だ」


「あの少し芝居掛かった喋りをする人だよね……。自分の言葉に酔っちゃって、ちょっと残念な人だと思ったんだけど……」


 ざ、残念な人か……。辛辣だな。

 自分は気をつけるか。


「えっと、海斗は俺の6歳上だから今年で23歳だ。才気溢れる剣術で天才の名をほしいままにしている。この若さで剣王になったのは泰山以来だな」


「あれ? 雪月さんは20歳前半くらいでしょ? それなら海斗って人とあまり変わらないと思うけど」


「雪月さんは違うよ」


「違うってどういう事? どう見ても20歳前半……、まさか30歳にはいってないわよね?」


「俺の口から雪月さんの年齢は言えないよ。無用な恨みは買いたくないからね。ただし俺の幼少期から既に今と同じ外見をしていたけどね」


「!?」


 絶句するアイシス。まぁそうなるよな。


「雪月さんは月神の御子では無いんだけど、それに近いんだ。東雲家の人はそういう人が生まれやすいんだよ。市井(しせい)では遊女の愛の(ささや)きと東雲家の見た目は信用するなって言われているくらいだ」


「そうなのね……。気をつけるわ」


「説明の続きをするよ。剣士番付弍位(二位)の十文字虎月(こげつ)参位(三位)の東雲雪月(ゆきつき)肆位(四位)の有明海斗(かいと)、この三人が剣聖に次ぐ剣王になるね。剣士番付伍位(五位)から拾位(十位)が剣鬼だ。伍位《五位》が深更の当主の火月(かづき)さんで、陸位(六位)がその奥方の葉月はづきさんだ」


 アイシスが悲しそうな顔をした。


「火月さんも葉月さんも強いって聞いていたから力を貸してもらえないかなって思っていたのよ。伯父と伯母だからって期待をしてた。でも簡単に断られちゃった」


「火月さんは深更家当主だから家の利益を損なう行為は選択できないから余り気にするなよ」


 こういう時はあまり慰め過ぎず軽く触れるくらいが深刻にならずに済むかな。

 俺は空気が重くなる前に説明を再開する。


「深更家の剣術は正統派だ。火月さんは攻撃も守備も高い次元で融合されている。隙が少ない剣術だね。葉月さんも同様だ」


「深更家はもう良いから次に行ってよ。断られた時の事を思い出して嫌になっちゃうから」


「えっと、剣士番付漆位(七位)は曙和也(かずや)か……。拾位《十位》は次也(つぐや)。この二人は双子だな。28歳だったかな? アイシス、この二人には絶対関わるなよ。(ろく)でなしが服を着て歩いているよう奴等だ」


「何かとんでもない人物評ね。トキが関わるなって言うのなら注意するわ」


「和也と次也は本当にヤバいんだ。常識が通じないと思ってくれ。いつも数人の取り巻きを引き連れて悪さしかしない。極悪非道、傍若無人、無法千万(むほうせんばん)、冷酷非情、残忍酷薄(ざんにんこくはく)、奴等を説明するにはこれでも物足りない」


「何か凄いわね……。なんでそんな奴等が野放しになっているの?」


「曙家当主の曙銀次の息子だからね。それに立場が上の者にはしっかりと媚を売るんだ。だから現在の六大家の筆頭当主の海斗にはとても気に入られている。死んだ泰山にも気に入られていたよ。そして残念な事に、この双子は腕も立つ。常識にとらわれない自由奔放な剣術だ。生来の勘の良さがあるんだろうな」


「わかったわ。二人には近寄らないようにする」


「奴等が視界に入ったら逃げ出すくらいが丁度良いかな。気を付けろよ。和也と次也に捕まったら女性として生まれてきた事を後悔する事になるからな。奴等は(より)にもよって色情倒錯(しきじょうとうさく)精力絶倫(せいりょくぜつりん)だ」


「しきじょうとうさく?」


「いわゆる一般的な性的刺激では興奮しないんだよ。加虐嗜好が特に酷いらしい……。あいつらに捕まって廃人同様になった女性は数知れずだ」


 身震いするアイシス。


「わ、わかったわ……。必ず逃げる事にするわ」


 青褪めたアイシスの顔を見た時に軽く性的興奮を感じたが、俺はその衝動に蓋をした。

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