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櫻麻トキ  作者: 葉暮銀


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変わる人生観

 お風呂から上がるとアイシスと手を繋ぎながら無言で俺の部屋に向かった。

 恥ずかしそうに俯いて歩くアイシスの姿は一生忘れない映像になりそうだ。

 これからの数時間はきっとそのような記憶がたくさん生まれるんだろうな……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 女性を知る前と後では人生観が変わると言う人がいたが俺は半信半疑だった。

 しかし横で幸せそうな笑顔で俺を見つめるアイシスを見ているとこれまで以上の愛おしさが込み上げてくる。

 この笑顔を守ること以上に大切な人生の目標なんてあるはずが無いと少しの疑問も持たずに思えてしょうがない。

 一年前まで有明泰山を殺そうと躍起(やっき)になっていたのが馬鹿らしく感じてしまう……。

 成る程、確かに人生観が変わったわ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なぁ、アイシスはなんで俺に身体を許したんだ? まだ出会って四日しか経ってないだろ?」


「日数は関係無いわよ。それより本気でそんな事を聞いているの?」


「当たり前だろ。俺は女性と付き合うのは初めてなんだ。アイシスには嫌われたくないから、アイシスの俺の評価を聞いた方が良いかなって。良いところは伸ばして、悪いところは改善していかないと」


 クスクス笑うアイシス。


「馬鹿ねぇ。トキは自然体で良いわよ。私の為に無理をしなくても良いわ。無理をすれば辛くなる。辛くなれば相手に不満が溜まるわ。自然体のままが一番よ。それに自然体のトキに私は魅かれたの」


 そう言ってアイシスは俺に身体を密着させた。(なめ)らかな太ももと柔らかな胸の感触に心の底から喜びが湧いてくる。先程、精を放ったばかりだというのに下半身の一部が硬くなってしまう。


「普通に考えれば私がトキに魅かれるのは当たり前だと思うけど。不知夜国までの道程は本当に大変だったわ。食べ物の確保も大変だし、寝る時も寒くて震えた。それに女性として襲われないように汚い扮装をしたの。四六時中、人攫いに捕まらないかと冷や冷やしてたわ。それでも一欠片(ひとかけら)の希望を持って頑張ったの。やっとの思いで不知夜国に着いた時は本当に嬉しかった。でも母の実家の深更家では厄介者扱いされて……」


 俺の指に指を絡ませるアイシス。


「未雪がここに連れてきてくれた時も途方に暮れてた。すぐにお風呂を借りたけど、お風呂の中で涙が溢れたわ。そしてトキから絶望的な事を言われて、目の前が暗くなったの。精も根も尽き果てかけてた。それでも何とか前に進もうとしたんだけど、あのまま櫻麻邸を出ていたら確実に野垂(のた)れ死んでいたわ。トキに『アイシスに雇われる人に心当たりがあった』と言われた時は意味がわからなかった。そうしたら満面の笑みで『君の目の前の男がそうだ』って……。もう嘘でも良い。この人だって。この人に騙されて不幸になるなら受け入れようって思ったわ。その瞬間、意識が飛んじゃった」


 絡み合った指に力が入る。


「そのあとも寝起きで震える私を優しく抱きしめてくれた。訳ありの櫻麻家も私だけの為に再興してくれた。勘違いで泣いていた私に話し難い内容でも丁寧に説明してくれた。私の背中の傷跡を見て自分の事のように(いきどお)ってくれた。震える私に添い寝してくれた。大枚を(はた)いて背中の治療をしてくれる。私が月読さんに魔術を教えてもらう対価として魔術を月読さんに披露した。いつも私を大切にしようとして、いっぱい考えてくれている」


 潤んだ眼で俺を見つめるアイシス。


「こんなに優しく、こんなに大切にされたら、女性なら誰でも惚れるわよ。それも美形の男性からなんだから尚更(なおさら)ね」


 美形? 俺の事を言っているのか?


「あの美形って俺の事? 俺の容姿は酷くは無いけど決して美形では無いと思うけど……」


「トキは無自覚だったのね……。たまにいるわよね、そういう人。今度確認してしてみたら。街を歩いていると多くの女性がトキに見惚れているわ。自分の容姿を客観的にわかっていないと、周囲に迷惑をかける時があるわよ」


「美形だなんて初めて言われたよ……。今まで俺に好意を持ってくれたのは未雪くらいだったし」


「そうなんだ。それならもしかして未雪がトキに近づく女性を排除していたのかもね。六大家の深更家の令嬢に威嚇されたらトキに言い寄る女性はいないわ」


 排除に威嚇!? マジですか? いやこれはアイシスの妄想だよな。


「やっぱり俺が美形っていうのは間違っていると思う。アイシスは俺に優しくされて現実より俺が美形に感じるだけじゃないか? 自分が美形だと勘違いしてたらただの痛い奴になるよ」


「ふふふ、じゃ、そうかもね。それより随分と元気になっているんだけど」


 アイシスは絡ませた指とは反対の手で俺の欲情を具現化した物を優しく(さす)る。

 背中から脳天にかけて甘い痺れを感じた。


「どうすれば良いか教えてね。いろいろと勉強するから」


 さすが理論派の魔術師だな。研究熱心で末恐ろしいや。


 俺は本能に任せてアイシスに覆い被さった。

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