9話 仕切り直しまして、ミオリ奪還作戦その2
服部迅蔵side
いったい何が起こった???闇色の邪狼に蹴り飛ばされたと思ったら一撃で全ての護符を砕かれて、クナイを投げたら触れる事すらなく軌道を反らされてあらゆる攻撃が通用しなかった…………
奴らは既に、陰陽寮の手に余る存在なのかもしれない。
だが、俺にも果たすべき責務がある。少なくとも、この呪詛による不利益なルールを強制する結界——、 これを打ち破れば少しは戦局を変えられるはずだ。
「幻妖の各員に通達する…………敵の探知をくぐり抜けつつ、この結界の起点を排除せよ」
他の部隊員に指示を出した後に救助を待つ。先程の戦闘で決して少なくないダメージを負い、護符も全て失った俺にできる事はもうこれしかない——。
服部迅蔵side 終
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長門side
旦那様が陰陽寮に突入してから、あまりにも時間が経ちすぎている。
それだけなら、『まぁ、そういう事もあるか』と考える事もできるけれども、一切連絡がないのが不自然だ。
もしも旦那様の身に何かあったら、陰陽寮の奴ら呪い尽くしてくれる。
呪圧殺して、呪焼殺して呪心壊してその他ありとあらゆる苦痛を伴う方法で…………
『テレレレレン♪テレレレレン♪』
聴く人によっては不安感を煽るような、またある人はタ○リを連想するようなやや不気味なメロディーの着信音。
私のお気に入りの着信音であり、このスマホの番号に明確な目的意識を持って電話してくるのは旦那様と惑楽葉くらいのものだ。
番号を確認………やはり旦那様だ。
「旦那様〜♡今回はどのような御用で?式の日程ですか?もしくは新婚旅行の計画ですか〜♡」
「長門、作戦は失敗だ!!!お前の感知をくぐり抜けた奴らがいる!!!すぐにでも襲ってくるかもしれん、気をつけろ!!!」
旦那様はそれだけを伝えて、その後すぐに電話は切れてしまった。ちょっと寂しい。(´;ω;`)
「あらまぁ、そのような些細な問題ですか…………呪怨領域内索敵方式を霊力探知から呪層揺らぎ検知方式及び思念波探知に変更、検知対象絞り込み、条件∶私に敵意を抱き接近する全ての生命体、該当反応∶12………………!!!呪圧愚!!!!」
膨大な呪いの力を物理的な圧力に変換した範囲圧殺攻撃は、12人全員を同時に捉える。
「あらあら、全員生きてますね。一撃で10回は殺せるくらいの威力のはずですが……………」
ひとまず行動不能にする事はできたが、どういう訳か生きている。
ふと、倒れ伏す敵の足元に砕けた護符のようなものが見える。あれがダメージを肩代わりしたのだろう。
とりあえず物理攻撃は効果が薄そうだし、あといくつ護符があるかもわからない。少し方針変更としましょうか。
「憎業苦………………」
私が敵に抱く憎しみと、敵自身が背負った業。この二つの深さと重さによって効果を増す精神干渉呪術——。
効果覿面即刻仏滅、あとは野となれ山となれ♪
長門side 終
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急いで長門のもとに戻らなければ……!!!
俺の馬鹿さ加減のせいで、迂闊さのせいで危うく惑楽葉を失いかけた。俺は仲間を誰も失いたくはない。
「間に合え、間に合え、間に合えェーーーーーー!!!!」
————、
「旦那様〜〜〜〜♡♡」
——って、無事なんかい!?
見たところ、特にダメージ受けてないし襲われた様子もない。とりあえず、無事なら良かった。それはそれとして——、
「長門、お前の所に索敵をくぐり抜けた敵が来なかったか?幻妖って言う特務部隊の奴らなんだが…………」
「その部隊かはわかりませんが、霊力探知をくぐり抜けてきた敵を想定して別の探知方式で捕捉、排除致しました♪」
…………もはやこの作品のタイトルを、『うちの嫁(呪物)が最強すぎる件』とかに変更した方がいいかもしれん——。
呪怨領域はひとまず破棄。さて、ここらで作戦の仕切り直しだ!!!
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作戦そのものを仕切り直しした俺達の次の手は…………、
「ヒャッハーーーーーー!!!闇色の邪狼様の復活だーーーーーーー!!!」
惑楽葉の背に乗り、大幅に削減された敵戦力に対して正面突破Go ahead.
なんか惑楽葉が頭世紀末になりかけてるけど、大丈夫だ問題ない。
惑楽葉は陰陽寮の総攻撃をものともせず進軍する。
攻撃が効いてないというか、攻撃の軌道が反れていくというか軌道を歪めているというか、よくわからないけどとにかくノーダメージ。
思いがけない戦力強化を経て、俺達は再度ミオリ救出作戦を決行する。
設定及び用語解説
七宮式呪怨領域
対象の空間内を長門の呪詛と瘴気で満たし結界と化して、結界内の敵を認識、捕捉する事で対象となる敵全てに『呪い』として何かしらのデメリット系ルールを付与する。
範囲系に見えて、広範囲の敵に対しても一人一人捕捉した上で対象を選択できる。




