15話 いざ、妖怪の隠れ里へ!!
『時速120キロ以上で千本鳥居を走り抜ける』って、この条件はやっぱり…………
「うむ、おそらく我が友の事だろうな」
でしょうね。惑楽葉の言葉に納得しつつも、妖怪120キロババアの事を思い出す。
というか、探せと言ったってそもそもどこで会えるんだ?
「お兄様、こういう時はゴーグレ検索です。この手の都市伝説の類ならば、だいたいネットで噂が流れているはずです」
そ、その手があったかぁ〜〜〜〜〜(盲点)
とりあえずナイス晴華。
そう言えば、120キロババアの都市伝説について少しくらいは知ってたけど、詳しく調べた事はなかったな。
すぐさまスマホを取り出して検索……結果、
•妖怪120キロババアは推定時速120キロ程のスピードで走る老婆の姿をした現代妖怪
•120キロババアは、神露町の峠近辺に現れる
と、だいたいこんな情報が出てきた。
って、神露町といえば——、
「俺の住んでる町じゃん…………」
そういや、何も言わずに出て行ったから大家さんも心配してそうだな。
着いたら軽く挨拶くらいしてくるか。
ちなみにここだけの話、大家の未鶴来秋葉さんはめっちゃ美人である。
まぁ、既婚者だが。
そうと決まれば善は急げ、全速前進DA☆
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という訳で、大家さんに挨拶に来たのだが——、
「これは東亰土産の鴉クッキーで、これは神露町の商店街からの頂き物の九尾饅頭…………」
なんか色々と貰いすぎて、逆に荷物が増えた。
とりあえず一部は妖怪の隠れ里に行く時の手土産にするとして、問題はこの後すぐにまた旅に出るという事だ。
ひとまず、大家さんに事情を説明せねば。
カクカクシカジカシカセンベイ、シカノコノコノココシタンタン、と。(事情説明中)
「そうですか…………では、私はワトソンと共に帰りを待ってます」
大家の未鶴来秋葉さんは、飼い猫のワトソン(猫又)を腕に抱いたまま微笑んだ。
「ワシからも一つ、面白い話をしてやろう」
それまで黙っていたワトソンが唐突に口を開く。
「その九尾饅頭、神露町の名物として知られているが、それには由来があってな…………そもそも、おかしいとは思わないか?特に観光名所も何も無い町の名物が九尾饅頭なんて…………」
「この町はな、遠い昔に戦いで傷を負ったとある妖狐が息絶えた地なのだよ」
「その妖狐は、死の間際に一つ予言を残した。『我死して幾星霜の後、大いなる波乱と新たなる時代の幕開けを齎す黎明の使者が現れる』と。まぁ、この町の民話の受け売りだがな」
「さて、ワシがわざわざ情報をくれてやったからには必ず帰ってこい。そいで、帰ってくる時にサーモンの刺し身も買ってこい」
ワトソン…………ありがとよ、絶対無事に帰ってきてサーモンの刺し身(値引き品に非ず)食わせてやるからな!!!
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決意も新たに、夜の峠に来た俺達。やはりというべきか、120キロババアはそこで待っていた。
「ヒョッヒョッヒョ……、少し遅かったが、ようやくここまでたどり着いたか。貴様は何を望む?何の為に儂に会いに来た?」
そう問いかけてきた120キロババアの眼光が鋭くなる。
俺は、その瞳を真っ直ぐに見据えて答える。
「助けたい奴がいるんだ。だけど、今の俺は経絡を失ってしまった。だからこそ、治療の為になんとしても九重十六夜に会う必要がある!!!」
「なるほど…………ならば、その決意を少しだけ試させてもらう。ここから亰都の伏見稲荷大社、その千本鳥居までいかなる手段を用いても儂に最後まで着いてくる事ができれば認めてやろう…………!!!」
120キロババアは、おもむろにクラウチングスタートの構えを取り始めた——。
何その熱血スポ根漫画的展開。
これはあれか、RPGとかなら唐突にミニゲームに突入して、120キロババアを追いながら落ちてるアイテム拾って一時的にスピードアップしたり点数を貯めるタイプのイベントか?
そしてゲーム内のやり込み要素として、クリアランクSを達成するとレアなゲーム内アイテムとか称号が手に入るやつか?(既少錯乱)
登場キャラクター解説
ワトソン
猫又。礼明達が生活しているアパートの大家、未鶴来秋葉さんの夫が飼ってる猫。
元々は都内で生活していたようだが、飼い主の結婚を機に秋葉さんの故郷である神露町で暮らす事になった。
好物はサーモンの刺し身。
未鶴来秋葉
礼明達の生活しているアパートの大家さん。
一応、神露町の大地主の家系らしい。
ちなみに既婚者だが、夫とは婿養子という形で結婚したようだ。




