13話 シュールで素敵なエキセントリックスター(非誤字)
???side
さて、今現在までの状況をありのまま整理しよう。
御織女之神を奪還した陰陽師の青年が、自ら囮となり追撃してきた天照大神と交戦し、これを撃退。
その後、月詠命になすすべなく敗北。おそらくだが、あの青年と別行動を取り御織女之神を逃がそうとしたもう一人の陰陽師も、追いつかれるのは時間の問題だろう。
月詠…………やっと見つけた。前世の私の記憶に由来する、狂おしい程の愛しさと、彼を残して先に逝く事に対する無念——。
私自身の経験ではないのに、まるで自分自身の事と錯覚する程の強烈に焼き付いた情念…………
『我死して幾星霜の後、大いなる波乱と新たなる時代の幕開けを齎す黎明の使者が現れる』
何度も繰り返し見た夢の中のこの言葉。おそらく近いうちにこの言葉は現実となる。
幼い頃からずっと悩まされてきた夢、私だけど私ではない誰かが最愛の夫と死別する悲劇——。
もしこの夢が、誰かが描いた物語だとしたら、少なくとも私は絶対に高評価なんて付けてやらない。星1つすらつかない駄作だ。
そもそも私はバッドエンドが大嫌いだ。
だがこの夢こそが私の前世に於ける最期の刻であり、黒月の抱える心残り——。
月詠と再び巡り合う事が前世の私の望みであるのならば、そこまで辿り着く事が私の役割であるのならば、必ず黒月を月詠と引き合わせよう。
その為に必要な状況も登場人物も、ご都合主義を疑うくらい完璧に揃っている。
あの陰陽師達が御織女之神を救い、月詠を打ち倒す事ができるかはわからない。
しかし私は、私達天生同盟はそれに便乗して必ずや月詠に会いに行く。
唯一の問題は、私自身がいつ限界を迎えるかわからない事だ。
源醒回帰、一時的に魂と肉体を前世の状態へと回帰させる輪廻転生の逆行プロセスとも言える秘術——。
この術を初めて使った時から私は、その重すぎる代償を現在進行形で背負い続けている。
そもそも私は、奇跡的な確率で生まれつき経絡を持っていたというだけで陰陽師ですらないし、少しばかり変わった術が使えるだけのただの人間だ。
陰陽師や神を相手取るには経験値も実力も足りない。
それでも、前世の私含めて私の周りの人には笑っていて欲しいから——、既に笑い方を忘れてしまった私の代わりに。
何の救いもない結末なんて悪だ。泣いた後、また笑えない人生なんて間違いだ。
笑いと救いは、可能な限り誰に対してでも与えられるべき物なのだから——。
???side 終
▷▷▷
リタside
「ヤコ〜……準備できたよ〜……聞いてる?」
「…………リタか、安心しろ。ただの考え事だ」
ヤコは、いつものポーカーフェイスかつ淡々とした口調で答えながら私に飴玉の包みを一つ手渡す。
「これ、またサルミアッキじゃないよね?前に何も言わずにしれっとサルミアッキ食べさせられたの忘れてないよ?」
「安心しろ。今度はサルミアッキじゃない」
コーラ味の飴玉の包みを見てから、私は警戒を解いて飴玉を口に含む。
あ、今なんかヤコが明らかに『かかった…………!!!!』みたいな事考えてる。そんな顔してた。
「うげ…………昆布飴〜…………なんて手の込んだイタズラ…………ヤコ、こういう変なイタズラ好きだね〜……まぁ、そんなところも可愛いけど」
やっぱりか…………全くこの娘は——。
「面白いか…………?面白いか…………?」
無表情かつ淡々とした口調で呟くヤコだが、イタズラが上手くいった嬉しさと興奮が隠しきれてない。
なんでわかるかって?
ヤコの頭って、猫……と言うより狐かな?ちょうど狐の耳のような形になってるアホ毛が左右にあるんだけど、これが感情の高まりによって動くから。
アホ毛とは?(哲学)
ヤコの前世が『神殺しの妖狐』黒月だって事は既に知ってるけど、何かしらの霊的影響によってあのキツネティックセンサー(アホ毛)が形成されているのかもしれない——。
「………………www、ハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
変な事考えてたらそれだけで面白くなってきた。
「もう最高!!!!今日もシュールで素敵!!!可愛い!!!!」
「ありがとう…………最高の褒め言葉だ」
ほぼ常に全く変わらないポーカーフェイスと淡々とした口調、そして無表情と裏腹に揺れ動くエモーショナルキツネティックセンサー(アホ毛)、そして極め付けは、悪意はないけれど人を笑わせる事に固執しており何の脈絡もなく奇妙珍妙なイタズラしてくる。
この小柄なエキセントリックスターの少女は可愛いけどとにかく言動がシュールなのだ。
他の世界のヤコとは随分違うけど、こんなヤコも新鮮な感覚でイイね——。
そりゃあね、私もヤコと天生同盟なんてワケアリ非日常サークル作ってるくらいだし、そもそもヤコを非日常の側に引き込んだの私だし、我ながらマトモとは言い難い(意味深)存在なのは理解してるけどさ…………今のヤコも庇護欲をくすぐられて可愛い!!!…………じゃなくて、色々心配になる訳ですよ。
挙げ句の果てには、今陰陽師の業界でキナ臭い事になってる『御織女之神』関連の厄ネタにまで介入しようとしてるし、これからどうなるやら——。
まぁ、何にせよこの世界線に転生してヤコに出会えた以上は、私が守るけどね〜………世界線は違えど、かつての私に再び翼を与えてくれたのは『月ノ宮 夜狐』である事に変わりはないんだから、並行同位体だろうがなんだろうが依然変わりなく私の最愛の人だ——。
「出発だ…………我ら天生同盟、泣いた後にまた笑える未来の為に…………」
「ヤコとイチャラブ三昧できる理想の明日の為に!!!」
「……………………」
ヤベ……………本音出てもうた……………
リタside 終
▷▷▷
夢を見ていた。ミオリを救えず、失意の底へと沈んでいく夢を…………
「……きろ…………起きろ…………助けにきた…………」
何者かに身体を揺さぶられ、眠りから覚める。
長門と惑楽葉は…………無事か。やがて二人も目を覚ました。
そして俺達の目の前には…………ポーカーフェイスかつ淡々とした口調で喋る狐耳のような髪型の少女がいた。なんか、『懲役100万年』と書かれた文字Tを着ている。懲役100万年ってフ○ーダムウォーズか?
「安心しろ…………私は味方だ…………私の名は……、フランダース=イヌフォックス=セントバーナード2世だ」
この野郎自己紹介の初手からあからさまな偽名を名乗りやがった!?
信頼関係の構築だとか、そういった人間関係のセオリー全てを、まとめて宇宙の彼方イスカンダルに放り捨てるかのごとき暴挙だ——。
「…………安心しろ、冗談だ…………」
もはや意味がわからない………………なんだこいつ?こいつの思考回路が理解できる気がしない。
「面白くなかったか…………?」
イヌフォックスさん(暫定的にそう呼ぶ)とやらは、ポーカーフェイスのまま淡々と尋ねてくる。表情からは読み取れないが、狐耳のように見えるアホ毛が「しょんぼり」といった感じで垂れ下がっているところを見るに、ただ単に面白い事を言って場を和ませたかっただけのようだ。…………ってちょっと待てや、そのアホ毛動くんかい!?
どうなってんだそのアホ毛…………
「我が名は惑楽葉!!!絶対悪である!!!よろしくなイヌフォックス」
「…………惑楽葉は素直で良い子だ…………飴をあげよう」
「くれるのか!?」
惑楽葉は貰った飴を何の疑いもなく食べようとする。
「待て惑楽葉!?知らない人から貰った食べ物を…………!?…………むやみやたらに食べちゃいけません、っていうはずだったが、もう手遅れのようだな……」
目の前のアホの子に呆れながら、俺は頭を抱える。
「ククク…………かかったな」
なんとも棒読み風味で抑揚のないイヌフォックス(偽名)の言葉。
次の瞬間、惑楽葉の表情が青ざめる。
「惑楽葉!?テメェ何食わせやがった!!!」
「…………安心しろ、…………ただのサルミアッキだ」
「まずいまずいまずすぎる〜〜〜〜〜…………貴様イヌフォックスぅぅぅぅぅ!!!!よくも我にこんな物をーーーーーー!!!!」
惑楽葉、激怒る!!!
「この子がこちらを笑わせようとするたびに、むしろシュールな空気になるのはなぜなんでしょうか?」
長門は惑楽葉をなだめながら、そう呟く。
長門、頼むからそっとしておいてやれよ…………
「面白くなかったか…………すまなかった…………」
なんともいたたまれなくなるような空気が流れる。
それはさておき、
「ところであんた、俺達の味方と言ったな?少しばかり事情を説明してくれないか?」
「私達は、天生同盟…………一応、月詠命を止める為に活動している……詳しくは話せないが……、私には、月詠命に会わなければならない理由がある……互いの事情には不可侵とする事を約束するのなら…………私達は協力を惜しまない…………」
「なるほどね…………」
あくまでも俺の感想だが、こいつは嘘を言ってない気がする。話せない部分ははっきりと、『話せない』と答えているあたりも信憑性が感じられる。
「わかった、ひとまず信じよう。それはそれとして、そろそろ本当の名前を教えてくれてもいいんじゃないか?」
「私の名前は、月ノ宮 夜狐…………」
こいつ、日本有数の複合企業グループ『月ノ宮財閥』のお嬢様だったのか……
そんな奴がなんで協力してくれるのかわからないし、そもそも陰陽師ですらないけどもある意味では心強い。
「…………ここにも直に追っ手がくる。私が引き受けるから、あなた達は先に行け…………」
「わかった。死ぬなよ」
経絡すら失ったが、俺はまだ諦めるつもりはない。
ひとまず俺は月ノ宮にその場を任せて先に進む事にした——。
▷▷▷
道満side
月詠命があの憎き礼明を無力化したとの報告を部下から受けて、急いで向かって見れば…………
「…………彼らならば既にここを離れた…………追うというのなら、私が相手をしよう」
そこには既に礼明は居らず、代わりに妙な小娘がいた。
人形のように張り付いた無表情に、抑揚を削ぎ落としたかのような淡々とした声——。
随分と薄気味悪い小娘だ…………
「子どもの遊びのつもりなら、今の内に逃げた方が身の為だぞ」
「こちらも最初に言っておく、私はかーなーり、強い…………信じるか信じないかはあなた達しだいだ……」
「………………もういい、殺せ」
我は部下にそう指示を出した。
「そうか、残念だ…………」
次の瞬間、目の前の小娘がロングスカートで隠れた太もも部分のホルスターから、ハンドガンを2丁取り出した。
「!?」
「道満様!?あやつ、武器を!?」
「うろたえるでない!!!頭数も武器の質もこちらが上だ!!!拳銃ごときで式神を倒せる物か」
その間も、不気味な小娘はハンドガンを手持ち無沙汰にもて遊んでいて、やがてこちらに向けて引き金を引く——。
ポン、という拍子抜けするような音とともに、銃口から紙テープと紙吹雪が飛び出した。
「安心しろ、………………ただのクラッカーだ…………面白いか……?面白いか??」
全くもって理解ができぬ…………こやつはいったい何なのだ????
生きるか死ぬかの状況で、このような道化芝居を…………
狂っているのか?はたまた、最初から時間稼ぎの為だけに意味不明な振る舞いでこちらを翻弄しているのか?
「えぇい!!!!かまわん、一斉にかかれ!!!どうせこやつの手の内は道化芝居とハッタリだけだ!!!」
「…………そうか、残念だ…………」
薄気味悪い小娘は、今度はコインのような物を投げる。
一瞬の閃光の後に、投げつけられたコインが爆発した——。
「なっ!?馬鹿な!!!!」
「……安心しろ、ただのルーン魔術だ…………」
小娘はポケットから財布を取り出しておもむろに小銭入れを開けた。
「この小銭入れには先程のようなルーン魔術を秘めたコインが入っている。基本的に赤いコインが最初に投げたルーン爆弾、青は瞬間凍結のルーン、緑は茨のルーンを使用した設置式の罠…………それ以外の種類があるかどうかは、想像にお任せする」
「…………なお、コインの色と実際の効果が一致していない可能性も存在するかもしれないが、それも信じるかどうかはあなた達しだい…………」
「…………ククク…………ハハハハハハハハハ!!!性悪なトリックスターだったか。良かろう。ならば、その道化じみた小細工ごと踏み潰す!!!」
我は部下に指示を出し、総攻撃を命令した。
「「「光矢導符」」」
降り注ぐ退魔の光の矢は雨のように、目の前の小娘に殺到する。
しかし小娘は、瞬間凍結のルーンを複数配置して防御、そのまま走り去りどこかへと隠れた。
「周囲への被害を気にする必要はない。虱つぶしに索敵して見つけしだい確実に殺せ」
我は部下に指示を出しながら、自身も戦闘態勢に移行する。
「多重憑依変生、八咫烏、百目…………」
道満side 終
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月ノ宮 夜狐side
陰陽寮周囲の森。その奥に逃げ込み、足元にルーンのトラップ(コイン)を仕掛けていく。
実力では敵わないかもしれないが、トラップと不意討ちでテキトーに鬼ごっこして、敵が疲弊したところでリタと合流して脱出しよう。
それにしてもリタは……私と同じで何かしらの『転生』に関する出自を持っている筈なのだが、全く底がしれない。
知ってるようで、リタという存在について何も知らない事に今更気付いた。
「いたぞ!?」
見つかってしまった…………なら当然逃げるとも。これはまさに『リアル鬼ごっこ』だ。
背後でトラップが起動する。何人か引っかかったようだ。
さらにダメ押しルーン爆弾。キラーク○ーン!!!コインを爆弾に変えろ!!!
……安心しろ、冗談だ。
とりあえず、一度振り返ってルーン爆弾の赤コインを投げつける——。
「そこまでだ。陰陽師ですらないただの人間にしてはよく頑張った方だが……、結局貴様は道化に過ぎぬ」
「!?」
突如、私の足元の影から人の腕のような物……言うならば影の手が無数に出てきた。
抵抗する暇すらなく拘束されてしまう。
頭上から、鴉天狗のような姿へと変貌した陰陽師達の指揮官らしき人物が舞い降りてくる。
芦屋道満——、リタからの情報で話は聞いていたが、実際かなりの化け物のようだ。
どんな方法かわからないが、もう私の位置を特定するとは…………
道満が操る影の手は今この瞬間も私の全身を締め上げている。
もはや選択の余地はない。
こんな所で終わる訳には行かないから、私も切り札を使うしかないようだ。
「…………そうか、残念だ…………!!!!源醒回帰!!!!」
私が、私ではなくなっていく感覚——。
あくまでも一時的な術とは言えど、こればかりは何度経験しても慣れない。
肉体と魂が前世の状態へと回帰し、それに伴い霊力も跳ね上がる。
そのまま影の手による拘束を力業で振り払った。
意識が塗り替わり、肉体の主導権が一時的に黒月へと譲渡される。
今の私は、もう一人の私の意識を通して現世を垣間見る事しかできないが、明らかに流れが変わったのを肌で感じた。
「馬鹿な……!!!その姿は、その霊力は、『神殺しの妖狐』の……!?」
「ヤコも最初に言ってなかったか?『私は強い』、と……圏境怖界…………!!!」
このあたり一帯の空間を、私自身の霊力と闘気で満たす。これでヤコを追っていた陰陽師どもは今ごろ、プレッシャーに呑まれて失神している筈だ。フフフ……言うなれば覇○色のような物だな。
「私はヤコが源醒回帰を使わん限りは表には出られない。だが、自身を犠牲にしてまで我が願いを叶えようとするヤコの為にも、私は止まれない…………月詠に再び巡り合うまでは…………!!!」
月ノ宮 夜狐side 終
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道満side
「さて、ヤコから貰った時間はそう長くない。3分だ、3分以内で決着をつける」
「どのみち、今から逃げる事はできぬか…………」
とんだ貧乏くじだ…………性悪なトリックスターと思っていた小娘が、実際はテウメッサの狐だったとは…………
目の前にいる黒衣を纏った、一目見ただけで意識が飛びそうなくらいの美貌とプレッシャーだけで10回は殺されそうなくらいの威圧感を併せ持つ佳人は既に我を射程距離に収めている。
人を超え、不老不死となった我であってもこの状況は非常にまずい——。
なんとかして『勝つ手』ではなく『負けない手』を考えなければ…………その為の情報が圧倒的に足りない。
「その術、確か源醒回帰と言ったか?それは陰陽道の秘術である筈だ…………誰があの小娘に教えたかは後に調べるとして、貴様には最適な術だったと言う訳か」
ひとまずは、少しでも情報を引き出すべくカマをかけてみる。
「そうだ、普通に考えれば『まず使い所がない術、それ故にロクに研究されてない術』、ヤコはそんな欠陥術式に頼ってまで私の為に戦っている…………貴様にその覚悟がわかるか…………!!!」
黒月が放つ言葉に秘められた圧倒的な威圧感は、この私でさえ気圧されそうになる程だ。
だが、一つヒントを得た。源醒回帰の術式としての欠陥……これは、逆転を狙えるかもしれない——。
「どうやら、『源醒回帰の術式としての欠陥を利用すれば勝てるかもしれない』などとおめでたい考えを持っているようだからあえて教えてやろう。その欠陥とは、術式効果の不備ではなく術者自身の支払う代償の事だ」
「なん…………だと………!?」
それでは…………あの小娘に戦いを挑んだ時点で最初から詰みだったという事か…………
「源醒回帰の最大にして唯一の欠陥、それは術者自身の自我に『前世の記憶とそれに付随した感情』という不純物が混ざり、この術を使えば使う程に『自分が自分ではなくなっていく』という残酷すぎる副作用だ」
「人を笑わせる事を喜びとしながらも自身は笑い方を忘れた哀れな娘、そんな純粋な娘にばかり重荷を背負わせながら私はここに立っている…………歯車となって戦う男にはわかるまい…………!!!」
黒月の神速とも言える踏み込み、我は次の瞬間には既に肉薄されていた。
「!?」
たまらず影の手を無数に展開して防御する。
そのまま、黒月を捕らえるべく影の手を伸ばすが——、
どういう事だ???
攻撃が、全て読まれている!?
布石として放った影の手も、それらを囮にした死角からの不意討ちも、足元からの奇襲も、全て全て全て…………!!!
攻撃はおろか、指一本触れる事すらできぬとは——、こちら側のあらゆる挙動が読まれて、全て後出しで回避されてしまう。
まさか……先程の圏境の効果なのか!?
「名付けて、第七感と狐の早足…………終わりだ、猛狐硬爬山……!!!」
馬鹿な…………陰陽道ですらないただの体術で我が負けるとは……我ごときには、これで充分と言う事か……
内臓まで破壊しつくすような物理的打撃と、霊力による衝撃波の殺人的マリアージュ——、我が不死でなければ間違いなく死んでいる。
意識が遠のいていく。全く、本当にとんだ貧乏くじだったな…………
道満side 終
▷▷▷
ヤコside
やってしまった…………他に手段がなかったとはいえ、また源醒回帰を————。
私に残された時間は、あとどれくらいなのだろうか?
いや、待て…………私とは、どちらの私だ?
「私は…………、ヤコ????私は…………、クロツキ????」
昏々、狂々、昏々、狂々————、
記憶が、ごちゃごちゃごちゃごちゃ混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって混ざって私と私の境界線が曖昧だ。
私は————、私は——、元々どちらの私だったのだろう?
ヤコside 終
設定及び用語解説
圏境怖界
『神殺しの妖狐』黒月の技の一つ。
通常、圏境というのは『気を使って周囲の状況を感知し、自身の存在を周囲に溶け込ませる技法』の事。
しかしこの技は逆に、自身の闘気や霊力で空間を満たす事により『霊力や精神の弱い物は勝手に威圧感に耐えきれなくなって気絶する』という非殺傷非物理範囲攻撃と同時に、空間中に散布した自身の闘気や霊力のレーダーで周囲の状況を視覚聴覚よりも鋭敏に察知できる。
天生同盟
『月ノ宮 夜狐』と『リタ』による非日常系女子中学生コンビ。二人とも何かしらの形で『転生』が出世に関わってくる。
今のところ、『ミオリを救う為に月詠と戦う礼明達………に便乗してヤコを月詠に引き合わせる』事を目的としている。一応味方。
人物紹介
月ノ宮 夜狐
幼少時の人格形成の時点で何かしらの問題や欠落が発生した世界線のヤコ(剪定事象?)
口癖は、「そうか、残念だ」と「安心しろ、○○だ」。
人を笑わせる事を喜びとしている割には自分は笑い方を忘れていて笑えないというなかなかに難儀な性格。
基本的に正直者だが、手の内や情報を一部だけ開示した後に煙に巻くなど根っからのトリックスター。
知能は高いと思われるが、全体的に精神年齢が実年齢よりも幼い。
リタ
正体不明で色々事情通。
どうやら、他の世界線から転生してきたようだが???




