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聴取

誤字脱字報告ありがとうございます。

あの場はすぐ解散になり、イヴェットは部屋へと戻って行った。

起きてすぐ無理をさせてしまったみたいで途中から辛そうにしていた。

心配だったが、今は部屋でぐっすりと寝ているとメイドから報告を聞いたので安心だ。


リック・コルベールも一度帰宅するとの事で先程別れた。

今日は忙しい合間を縫ってまで時間を作ってくれたようで、調査方針が決まってすぐ帰っていった。

後日、結果が分かり次第すぐ共有するという約束だ。



そして二人と別れたアドリアンはすぐさま調査をしようと皇宮の人間に聴取を行った。

本当は補佐官の二人に頼んでも良いのだが。


補佐官の一人であるカレン・タシェは今回の件の当事者でもあるので勿論頼めない。


ならばと思い、もう一人の補佐官のルイ・エトワールを呼び出す。

彼なら元々日記の件を任せていたので適任かと思っていたのだが。

事情を話した瞬間、顔を真っ青にさせ固まった。

イヴェットが記憶喪失になってしまったと聞いてショックを受けたみたいだ。


エトワール卿の珍しいその姿にアドリアンは責任を感じた。

二人も自分とカレンの様に幼馴染だと聞いている。

こんな事になってしまって本当に申し訳ない。


エトワール卿にこれ以上頼むのは酷かと思ったアドリアン。

自分が招いた結果なので今回の件は自らが動こうと使用人一人一人に聴取をしていた所なのだが。



「どういう事だ…。」



聞けば聞く程イヴェットが親しくしていた使用人がいないことがわかった。

確かに彼女は常日頃から使用人などいらないと言っていたし、専属なんて以ての外だった。

部屋からもあまり出ないし、出たとしても単独で行動している事が多い。


一人くらいは彼女と親しい者がいるのではないかと思っていた。

だが、アドリアンのその考えは甘かったようだ。


それどころか使用人はイヴェットにあまり良い感情を抱いていない。

普段のイヴェットの様子を聞いても誰もが「知らない。」と答える。

彼女の部屋にすらあまり訪れないようで、日記の存在すら彼女らは知らないそうだ。


その事を聞いたアドリアンは衝撃だった。

身の回りの世話すらも満足にしてもらってなかったのかと。


また、その事を一ミリも悪いと思ってもいない皇宮の使用人の多さに眩暈がした。


イヴェットは確かに社交的な性格では無かったが、嫌われるような人格でもない筈だ。

一体何がそこまで彼女を悪く思うのかアドリアンは理解できなかった。



「殿下、大丈夫ですか。顔色が悪いようですが…。」



傍にいたダンに声を掛けられる。

彼には聴取の際に色々と手伝ってもらっていた。


思えばイヴェットを悪く言わないのは彼だけだ。

一番最初に聴取した際も、イヴェットの事を「優しいお方です。」と言っていた。


彼が真っ直ぐな性格で噂に流されるような人物じゃない事はアドリアンが一番知っている。

その彼がイヴェットの事をそう言うのなら間違いないのだろうと思っていた。

他の使用人から話を聞くまでは。



「はあ、なぜこんなにも皇太子妃の敵が多いのでしょうか。」


「ん~。…使用人は殿下の事が好きすぎると言いますか…。」


「?それはどういう事ですか?」



ダンに濁されるようにして言われる。

アドリアンはダンの言った内容が今一理解できなくて聞き返すと、彼は言いにくそうに話した。



「その、殿下はタシェ嬢と特別仲が良いですし。」


「それは幼馴染ですから。」


「ですがその様子が恋人の様に見えると言いますか…。対して妃殿下には冷たくしていらっしゃったので余計に。」


「…つまりは使用人達からはイヴェットは私とカレンを引き裂いた悪女に見えていたとでも?」



ハッキリと物を言う性格であっても、こればかりは厳しいようでダンは自身の主人の顔色を窺いつつ話す。


アドリアンはダンの話している内容を頭の中でまとめ、間違いであってほしいと願いつつ彼に確認する。

しかし、静かに頷く彼の姿を見てアドリアンは顔色が悪くなっていった。



「確かに彼女に対して冷たい態度はとってしまったのは事実ですがそれはイヴェットも望んでいた事の筈。だからと言ってカレンに行くなんてあり得ません。」


「でも皇宮の人間はそうは思っていないみたいですよ。実際にお二人が密会していたという話も上がっていますし。」


「密会?私とカレンがですか?」


「はい。」



アドリアンはなぜそんな噂が出回っているのか不思議だった。

ダンの話を聞いている今でさえピンと来ていない。



「なぜそんな噂が…。」


「もしかして身に覚えがないのですか?」



これに関してはダンも驚いていた。

その様子だと彼もアドリアンとカレンが二人でいる所を見たことがあるようだった。



「ダンだってそれはわかっているじゃないですか。私の護衛をする時に傍にいるのですから。」


「それはそうですが。てっきり私が傍にいない時を狙っているのかと…。殿下から妃殿下の護衛を秘密裏に頼まれていましたし。」



益々謎が深まった気がした。

ダンとアドリアンの話がどうも嚙み合っていない。


ダンの言う通り皇宮の人間がそう誤解しているのなら、イヴェットもそう思っていたに違いないだろう。

不貞の証拠として記した日記の中身はもしかしてカレンと密会していた事が書かれてあるのだろうか。

であれば、誤解を解けそうな気がするのにそれが出来ないのがもどかしい。



「これは…早急に日記を探した方が良いみたいですね。」



ダンも同じ事を思っていたようだ。

二人で頷き合い、作業を開始した。



皇宮の使用人は当てにならなかった為、次に目を付けたのが騎士達だ。

イヴェットは彼らと関わり合う時間が圧倒的に少なかったので、情報はあまり得られないだろうとアドリアンは期待していなかった。

でも今は少しの情報でも良いから知りたい。

そう思い騎士達にも協力してもらった。


その結果。



「案の定、使用人達と一緒ですね…。」



深い溜息が口から漏れ出る。

予想していた通り、大した情報を得る事が出来なかったからだ。



「まあ、騎士の中でも一番関わっていたのが私くらいですからね。」



ダンもわかり切っていたのか乾いた笑いだ。



「次で最後ですかね。」


「そうですね。ええと、ケビン……ですね。」



アドリアンはダンが渋い顔をしたのが即座に分かり首を傾げた。



「どうしました?彼が何か。」


「あ、申し訳ございません。ただの私情でございますのでお気になさらず。」



社交的な彼にしては珍しい。

よっぽど苦手なタイプなのだろうか。


アドリアンは自然と身構えるようにしてケビンを待った。



「失礼いたします。ケビンです。」



そうして入って来た一人の背の高い騎士。


その騎士の顔を見てアドリアンはようやく思い出す。



(以前、イヴェットと一緒にいた事のある騎士?)



いつだったか、今まで大人しかったイヴェットが使用人を一気にクビにしたというあの件。

何か理由があるのだろうかと丁度ダンを護衛に付けた時だ。


イヴェットがある騎士と話していたと言う報告があり、顔を確認していたから覚えている。

確かこの男だった筈だ。



「あなた。以前、皇太子妃と個人的に会っていましたよね。」



いきなり確信を衝く質問に誰もが息を呑んだ。

それ程までに焦っているのが伝わってくる。


アドリアンのその気迫に押されたケビンは顔を真っ青にして震える。


その様子から何か知っているのではないかとアドリアンは急かそうとするが。

ケビンから放たれたのは全く違う事だった。



「全てお話しいたします、殿下。皇太子妃の…イヴェット様の悪事を!!」

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