第8話 恩を返すため戦地へ
マージ・アリアに向かうとき、残る団員たちとはお別れの挨拶をした。
「アリダラさん、色々とありがとうございました。」
「いいんじゃ、最後まで送ってやらずすまぬの。」
「とんでもありません。」
「あんた、次会うときには、私の魔法を見て驚かせてやるんだから、あんたもせいぜい頑張りなさい。」
「ははは、頑張るよミリス」
「妹ちゃんのことは私の方でも探してみるわ」
「ありがとう。」
「おーい、行くぞーナオトー」
向こうの方でマージ・アリア組のクレインが呼んでいる。
直登は居残り組のみんなへ別れを告げ、歩き出した。
「おーい、ナオト」
ジーダが遅れてナオトを追ってきた。
「すまない。バタバタしててな。」
「ジーダさんも残られるんですか?」
「ああ、私は副戦士団だからな。最後まで見届けるさ。
それより..ナオトにこれを渡そうと思ってな。」
「これは..?」
ジーダに渡されたのは一本の剣だった、剣先は弧を描くように曲がっており、切れ味のよさそうな格好の良い剣であった。
「私の体格では少し小さくてな、お前には丁度良いだろう。なかなかの剣だ。使ってくれ。」
聞けばこの国、いやこの世界では各地を回るのであれば多少なりとも武力を持っていなければ危険だそうだ。場所によって、夜は魔獣なども湧くらしい。
「ありがとうございます。」
「ナオト、お前には力がある。力があるものはその力を人のため、周りの仲間を守るために使わなければならない。いいな?」
「は、はい」
「これからできる仲間や妹の為に、もっと強くなれ。負けるなよ。」
「ありがとうございます。頑張ります。」
それはジーダなりの最大限の激励だった。おそらくこの広い国で生き別れた妹を探すことの過酷さを案じてのことだったのだろう。
その後、直登はクレインと共に馬に乗り、マージ・アリアに向かった。
「なー、クレイン」
「なんだ?」
「ヘリオサマナのみんなはこれからどうするんだ?」
「まずは、団長たちをマージ・アリアで待って、そこから任務に就くかな?」
「任務?」
「そう、戦士団は戦の際には召集を受け戦地に赴くが、そうでないときは複数のグループに分かれ、各地の依頼を受ける。依頼はフィルス教の本部だけじゃなく民間の依頼もあるんだぜ?」
「へーそうなんだ。」
「戦争はもうからないしな。任務を受けてる方がいいよ。」
「そういうもんなんだな。」
「あとは戦士団にもクラスがあってさ、」
〈躁級・奇級・天級・界級・豪級〉に分かれてるんだ」
「あっ魔術の強さのやつ」
「そうそう。それと同じ」
「ヘリオサマナは?」
「天級」
「それって結構すごい?」
「結構すごい。界級はいるらしいけど、豪級なんか言い伝えでしか聞いたことないからな。まーでもうちが天級なのは当たり前なんだけどな。」
「なんで?」
「アリダラ様が天級の魔術師だからさ。率いている戦士団も天級ってこと」
「なるほど。」
そんなことを話しながら、馬を走らせ数時間が立った頃、ある知らせが入る。
「報告-、報告ー聞け!」
「なんだ?」
どうやら、フィルス教保守派の伝者の様だった。
皆、一度馬から降り、伝者の話を聞いた
「国軍革新派の軍が突如、沈黙を破り、全兵力にて侵攻した!」
「なんだと?」
「我軍の大部分は壊滅状態にあるとのこと、撤退した我軍はそのまま撤退せよとのこと」
「なっ、なぜ!?」
「もう手遅れ、ということだろう。」
戦士団のメンバーの一人ヤクモが冷静な口調で言う。
「ヤクモ!てめえ見殺しにするのか?」
クレインは怒り口調でヤクモに問う。
「お前こそ命令に背き、今から一人で戻るつもりか?」
「っく!」
「落ち着けクレイン、どういう状況かもわからないんだ今は命令に従うべきだ。」
「悪いが、俺は、仲間がやられてるかもしれないときにお前みたいに冷静じゃいられない。」
そういうとクレインは馬に飛び乗り、来た道を戻る様に走り出す。
「おい!クレイン」
「っくそ、あいつ...」
「あの..すみません。俺にも馬を1頭かしてくれませんか?」
「なっ」
直登は進もうとする戦士団の人たちにそう告げた。
「ナオト、お前も行くつもりか?」
ここにいる戦士団で年長者のガルムが直登に尋ねる。
「はい。俺も皆さんにはお世話になりましたので。クレインと共に戻ります。」
「そのまま撤退せよというのが軍の命令だ。」
「私は軍の人間ではありませんので。」
「っく」
「それに俺は、フィルス教保守派外の人間として、アリダラ様の庇護下かつ監視下にあります。軍的にも俺は戻った方がいいでしょう。」
「お前は妹を探すんだろ?こんなところで命を無駄にするな。」
「俺もそう思いました。でもこうも思ったんです。俺が転移した場所に、あの人たちがいなかったら、それこそ生きてなかった。
だから今見殺しにすれば、この世界の〈ナオト〉は死ぬんです。」
「お前が言っても状況は変わらないぞ?」
「わかっています....」
ガルムは直登の目を見て黙り込んだ後、やれやれとため息をついて後ろを向く
「馬を一頭かしてやれ」
「っな!」
「ガルムさん、いいんですか!?」
「どうせ、かさなくても、いくんだろ?」
「はい。」
直登は馬にのり、来た道を戻る。自分にできることはないかもしれないが見殺しにすることはできなかった。
直登はジーダから言われた言葉を思い出していた。
〈力があるものはその力を人のため、周りの仲間を守るために使わなければならない。いいな?〉
まさかジーダもこういう事態になるとは思っていなかっただろうが..




