第2話 目が覚めると
そこは戦場の後方、フィルス教保守派の拠点地、
仮で張られた天幕の中に、直登はいた。
直登は空間の裂け目に引きずり込まれ、なぜか交わるはずのないこの世界に来てしまった。
そして直登は目を覚ます...
「...ん、ここは?」
直登がゆっくりと体を起こすと、そこは天幕の中の布の上に横たわっており、手には手錠がはめられている。
バタバタと音を立て、周りにいた兵士たちが手に持った剣を向ける。
「まて」
その場にいた将校のような人間が他兵士を制止する。
「どこだ?ここは?」
「動くな!」
直登が動こうとすると剣を構えた兵士の一人が声を荒げる。
直登は驚き、動きを止める。
「すみません状況がわからないんですが。」
直登は静止したままそう伝える。
すると将校のような人物が口を開く
「すまないが、こちらも貴殿が何者かわからぬ故、動揺している。
剣を構え取り囲むこの状況を許してくれ」
「は、はぁ」
「まずは一つ聞かせてほしい。貴殿は国軍革新派の人間か?それとも我ら側の人間か?」
直登はそう聞かれて黙り込む、何を言っているのか理解ができないからだ。
「すみません。こくぐん..派というのも、あなたたちのことも何もわかりません。」
将校はそう答えられ、動揺した様子を見せている。
「ここはどこですか?」
「・・・ここはフィルス神の加護を受けし魔法の国、フィルスアリアの西の地、アルバポリスだ」
「魔法..?」
何もかもがおかしいと直登は思った、フィルスアリアという国は聞いたことがない。それにこの男はこの国を魔法の国と言った。本気ならば気が触れているとしか言いようがない。
だが、もう一つの可能性にも直登は気づいていた。
〈ここは地球上のどこでもない、別世界なのではないかと〉
その後も将校からいくつか質問を受けたが、当然答えられるものはなかった。
「埒が明かないな。おい、魔術師殿を呼べ」
「はっ」
男ははそういうと、その少しあと兵士が魔術師と呼ばれる女を連れてきた。
「なんじゃ、こんな狭いテントに...むさくるしい。ぬし達は出ていけ」
「魔術師殿、困りますな。このものがまだ何者かわかっておらぬのです。」
「大丈夫じゃ、反抗の気配があればわしがすぐ気づく、この者からは〈動揺〉と〈恐怖〉の気配しかせん。あんな武装した兵士どもに囲まれては逆効果じゃ。」
「わかりました。では私だけは同席させていただきますぞ。」
「仕方ないのぉ」
その女は見た目は30歳前後くらいの女だが、老人言葉をしゃべり、〈魔術師〉にイメージ通りの服装をしている。
「む、おぬし、何者...」
魔術師の女は直登の目を見るなり、不思議そうに近寄り、そう呟く。
「ぬし、この世界のものではないな?」
直登はその言葉に驚いたとともに、やはりそうだと腑に落ちた気持ちになった。
「はい。俺は地球という場所の日本という国にいたはずですが、気づけばここにいました
「ふむ。チキュウ、ニホン...、おいダグラス、ぬしは聞いたことがあるか?」
「いえ。まったくありません。」
魔術師に聞かれダグラスと呼ばれた将校は答える。
「ではおぬしは違う世界の住人で気づけばこの国にいた。そしてここの事情は何も知らない。そういうことでよいかな?」
「はい。その通りです。」
「そんなバカな..」
話を聞く将校は驚きの表情を浮かべる。
「躁魔・承炎之煌」
魔術師がそう言うと、彼女の持つ杖が光だし、直登にかけられた手錠が一瞬赤く光り、墨と化す。
「魔術師殿、勝手なことをされては困ります!」
「大丈夫じゃダグラス、この者に嘘はない。暴れるようならわしが責任を取ろう」
「この者をどうするつもりですか?」
「いずれにしてもこの戦地で開放するわけにもいかない。ひと段落するまでは我らヘリオサマナで預かろう。」
「あの..ひとついいですか?」
「なんだ?」
直登はダグラスの方に向いて話す。
「私が眠っている間、どこにどのように現れたのですか?」
「空から降ってきたのだ。」
「え?」
「我らの拠点の空中より落ちてきて、兵が私のもとへ連れてきた。」
「9歳の女の子、私の妹はいませんでしたか」
「いや、そのような報告は受けておらぬな。少なくともこの戦場 アルバポリス(西の荒野)のフィルス教保守派の領地にはいないであろうな。」
「そうですか。」
直登はそれを聞いて俯く。自分の今の状態にも困惑していたが、何より柚希のことが心配だった。きっと同じようにこっちの世界に来ているはずだ。
「じゃあ、行くぞぬし」
魔術師はそういうと直登を連れて、天幕を出る。
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