いいよ、その方が手っ取り早いし 『シーン』
リリーナと別れた後
シーン率いる30名の傭兵団「タブラの矢」は、ノリスの外壁に集結していた。
そしてシーン達だけでなく、ウェンバリーズの私兵一団が合流して一気に100人程の隊となったのだが
ウェンバリーズ兵達の先頭にいる人物が、強張った面持ちでシーンに近づき言い放つ。
「君達がリリーナ様の私兵か?」
「まあ、そうかな?」
声をかけた人物は、細身だが鍛えられた体つきの男性
若々しい青年であった。
金色の髪は綺麗に束ねられていて、美しいと表現しても違和感の無い顔つきをしており
爽やかな雰囲気だが、その目は鋭くシーンを見つめていた。
「なんだい?」
シーンは睨むように見るその青年に問いかけた。
「いや、すまない。今は敵ではないのはわかっているのだがな。帝国人を見るのは戦争以来だ…許して欲しい」
軽く頭を下げる青年、そして青年は自らの名を名乗る。
「私はエリック、エリック・ロン・ウェンバリーズだ。ウェンバリーズ家の次男でノリスの治安維持部隊の第一部隊の隊長をしている。リリーナ様は私の姉のような存在だ、助けてくれてありがとう。」
手を差し出したエリックに、返すように手を握りシーンも自己紹介をする。
「シーン・タブラだ、シーンでいい。この傭兵団の団長をしてる。礼なら君のお父様から十分されたよ。こちらも仕事でしたことだから感謝されるほどでもないさ。」
「こちらもエリックと呼んでくれ、シーン。我々の隊は君たちの指揮下に入れと父から言われている…だがその前に」
エリックは剣を抜いた。
「我々はノリスで一二を争う精鋭の部隊だ、自分達より弱い輩にはついて行かない。たとえ父…領主の命令であろうとな。手合わせを願おう。私が勝ったら我々の指揮下で動いてもらう。負けたら命令通り君に従う。すまないが受けてくれるか?」
丁寧な
状況を理解したシーンは、少し笑うとこう返した。
「いいよ、その方が手っ取り早いし。やろうか、手合わせ。」
剣に手を掛けて抜剣の構えをするシーン。そしてエリックの部隊の一人に声をかける。
「すまないが、君。合図を出してくれ」
「は、はい…では両者構えて…」
突然指名された男は少し動揺したものの、シーンとエリックの私闘の号令をかける。
「始め!」
素早くエリックが踏み込みシーンに切りかかる、細身の刀身だがその分振りも早く
見物している者達の中でも見切れない者達が多かった。
だが、シーンはあっさりと受け止める。
そしてシーンの抜剣の瞬間は、誰も見切れなかった。
「エリック、まだやるかい?」
「いや、十分だ…私の負けでいい」
互いに剣を鞘に納めると、二人は握手を交わした。
「凄まじい剣技だな、シーン。いったいどこで学んだ?」
「おさない頃は父から、11歳からは戦場で仲間の兵達から教わり戦場で場数を踏んできただけさ」
「そうか…君も苦労したのだな…」
エリックは自分の部隊の方へ振り返ると、仲間達に宣言した。
「いいか皆!この勝負!私の負けだ!これよりシーン隊の指揮下に入る!これ以上の異論は認めん!!」
堂々とした敗北の宣言に部隊は困惑したが、少し間が空くと皆一斉に敬礼をした。
「シーン団長、よろしく頼む」
「こちらこそよろしく、エリック」
こうして、元敵国同士の部隊たちはかろうじてまとまった
だが
彼らに待ち受けていたのは、運命を狂わす
『鬼』であった




