叔父様、どうやら私たちも… 『リリーナ』
ノリスの鉄鉱石の集積所の場所はノリスの城壁の側にあり、馬車で行くと複雑な町の構造故に農作物の集出荷場から1時間ほどかかってしまう。
なのでムーロンは徒歩で直線の狭い道を通り、買い付けだけを最速でこなす方法をとった。
だが、ムーロンが着く頃には。集積所の鉄鉱石の7割がカナル商会に買約されていた。
「はえーなやっぱり…」
頭をかくムーロンに声をかけたカナル。
「はぁ…はぁ…はぁ…、見たか…ムーロンとやら…はぁ…私の…はぁ…勝ちだ…」
今にも倒れそうなほど息を荒くするカナルを見ると、相当な無理をして近道をしたかが伺える。
カナルは幼き頃からこの都市で過ごした土地勘があり、この都市の『よそ者』に容赦無い町の造りが相まって
カナルとムーロンの競争はカナルの圧勝に終わった。
カナルは息を整えると、ムーロンに向かい直し言いはなった。
「見たか!私にこの街で勝てると思うなよ!貴様らのような高貴な生まれの者どもに負ける筈がなかろうて!」
「俺は平民だってーの…。もういいや…カナル会長…俺は帰るが、あんたは鉄鉱石の捌きかた考えとけよ…じゃ」
「?」
ムーロンの言葉を疑問に思いながらも、カナルは鉄鉱石を後から来た馬車に積めて行く。
そうしているうちにある人物がやってきた。
その人物とは、この都市の盟主ウェンバリーズ卿。
ウェンバリーズはカナルの貨物を眺めながら、カナルに問いかけた。
「カナル殿、貴殿はこの鉄鉱石をどうするつもりか?」
「これはウェンバリーズ卿、あなた様も知っているのでしょう?バルバトスが仕入れに来たと。」
ウェンバリーズはいつもの無表情でカナルの方を向き。
カナルの言葉にきょとんとした声色で答えた。
「はて?」
「…」
カナルは思考する。バルバトスが大規模な国政的理由の買い付けを、この都市の盟主ウェンバリーズに相談していないわけがない。つまりは
リリーナにはめられた。と
「青白い顔をしてどうしましたか?」
心のそこからどうでもいい顔をしながらウェンバリーズは言った。そしてどうでも良くないことを聞く。
「貴様、これだけの鉄鉱石を買う金がよくあったな。去年の納税額が少ないのではないか?ん?」
さらに青ざめる
「貴様の商会の金庫を改めた上で、差し押さえさせてもらうぞ。手始めにその鉄鉱石は置いていってもらおう。」
完封
リリーナ達が思うよりも早々に完封してしまった。
カナルの裏金は鉄鉱石に成り代わり、裏稼業の収益も今後堂々と調査される事になってしまった。
膝から崩れるカナルに、声をかけたのは
遅れてやってきたリリーナ達であった。
「ほんとバカね、あなた。なんで騙されるのよこんな分かりやすい手に。」
力なくカナルは答える。
「金が…金が必要だったのだ…、私が爵位を得てこの国で成り上がるにはな…」
「いずれあなたの悪事もすべてバレるわよ、違法薬に奴隷売買…どれも極刑は免れない罪よ!」
怒りを表すリリーナにカナルは困惑する。
「な、なんだそれは…?!私はそんな商売はしとらんぞ!調べればわかる!私はただ税金をちょろ…オッホン!ゲホッ!」
「?」
リリーナはこの後におよんでカナルが嘘をつき、極刑を免れようとしていると思ったが。どうにも腑に落ちない点が一つあった。
それは今回の騙し討ち
カナルは早々に引っ掛かり、金を出した
真っ当な取引をするために。
それはおかしい。
奴隷売買や違法薬の利益がカナル商会に入っていたのならば、このような取引に参加するのは無駄
あるいは蛇足
裏稼業で十分な利益が上がっていれば、そもそも介入する必要性があまりないのだ。
それでもリリーナはカナルを何とか挑発と目先に金を釣り、罠にかける算段であったのだが。
あまりにもあっけなさすぎる。
「これは、厄介ね」
リリーナは呟き、ウェンバリーズを見ると目があった。
「叔父様、どうやら私たちも…」
「…ああ。はめられたな」
リリーナは向かわせたシーン達の状況を気にしながら、集積所の扉に向かって歩く。
「ミローネ、ごめんなさい」
「?」
「シーン団長を迎えに行ってあげて」




