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キャラバンの騎士  作者: エンク
第一章 なりそこないたち
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あら頼もしい 『リリーナ』


ノリスの農作業集出荷場


ここにはノリスの郊外のウェンバリーズ辺境伯領内から取れた農作業を集めて市場に流すための取引が行われる場である。この時リリーナ商会幹部のムーロンは『指示』に従い麦の買い付けを行っていた。


「よし、次は鉄鉱石を…ん?」


小太りの中年の男がムーロンに話しかける。


「おやおや!これはこれはリリーナ商会の方ではありませんか」


用を済ませたムーロンの元に表れたのは、カナル商会会長のカナル・カータスであった。


「こんなに麦を買い付けて…パン屋でも始めるのですか?」


「ええ、まあ…そうです」


相手にしないムーロンに眉を潜めて、ふんっと鼻を鳴らして集出荷場の支配人に話しかける。


「ここの麦はどれくらい残っているのだ?」


「はい。ただいまリリーナ商会様の購入した分を差し引きましたら…残りは今年の集荷の6割が残っております」


「なに?そんなに売れているのか?」


不思議そうに聞いたカナルに、ムーロンは言葉をかける。


「ではカナル殿、私は急ぐのでこれで」


冷たく言いはなったムーロンは、早々に立ち去ろうと出入口へ向かう。すると出入口にはミローネとリリーナの二人がたっていた。


「あら、ムーロン。ずいぶん時間がかかってるわね」


リリーナがムーロンに発破をかける。


「会長…ここの麦は買い付けたんで次に行くとこですよ」


「あら頼もしい、次に行きなさい」


「人使いがあらくて涙がでるね」


走って行くムーロンに手をヒラヒラとするリリーナ。買い付けた麦を馬車に移すように支配人に指示を出して、カナルの存在に気づく。


「これはこれはカナル会長。農作物で商売なんて珍しいですね。てっきりお肉しか食べないからそんなに…おっと失礼しました。」


カナルの出た腹を見てクスクス笑うリリーナ。


「小娘がぁ…!」


顔を真っ赤にして拳を握るカナル。


「しかし、カナル会長。麦の買い付けをするなら早めにした方がよろしいですよ?まあもう遅いでしょうけど」


リリーナは出入口を振り返る、するとそこには。美しい長身の美女がたっていた。


そう


美しいが、それ以上にこの都市では『悪夢』と恐れられている。クララ・バルバトスであった。


支配人とカナルには覚えのある人物で、戦争中には敵として恐ろしい活躍をした戦士を前に息を飲んだ。


「バルバトス…?!なぜ…?!」


驚くカナルを尻目にクララはリリーナに声をかける。


「リリーナ様、言っておいた品は集まってるかしら?」


「ええ、バルバトス殿。麦の買い付けは順調ですわ。他の商会にも声をかけてますので、集まり次第帝国に送らせていただきますわ」


クララとリリーナの会話に驚き声をかけるカナル。


「麦を帝国に!?いったい何が起こっているのだ!?」


「うるさいわね…」


クララが声をあげるカナルを睨むと、カナルひっと怯えて静かになる。だが気になって仕方のないカナルは恐る恐る声をかける。


「あのー…バルバトス様?このノリスで麦をお探しなのですか?」


「ん?見てわからないかしら?」


「い、い、いえ!わかりますとも!ですが私めにはその理由がわからないので、よろしければお聞かせ願いたいのですが…」


「あぁ、そうね。ここだけの話し、帝国で内乱が起きてるの。大した事ではないからすぐ収まるはずなのだけど、帝国の麦の生産地が反乱軍に燃やされて麦不足なのよ。だから今は同盟関係のある皇国の麦を輸入するために私が来たわけよ。」


「ほう…」


「今回は急ぎだから麦の一俵につきメナスフィート金貨3枚と銀貨45枚出して買い取ってるわ。」


「なんと!金貨3枚と銀貨45枚で!」


金貨3枚と銀貨45枚、クララの提示した金額はノリスの仕入れ相場の倍以上の金額であった。通常は金貨1枚から1枚と銀貨30枚が相場の麦を、そのまま帝国に流すだけで倍になると聞くとかなりの儲けが出るのは誰にでもわかる事。


この街の麦の4割、ほぼ半分を買い占めた商会たちはすべて帝国に流すために買い取った事を察したカナルも、クララに交渉をする。


「バルバトス様!我が商会も麦を仕入れたらお売りするのは可能でしょうか!?」


「あればあるだけ買うわよ」


「では残りは全て買わせていただきますぞ!支配人!麦を!全てカナル商会で残りを買わせてもらうぞ!」


リリーナはそんなカナルを気にもせず挨拶をした


「カナル会長、それでは次に行かなければならないのでご機嫌よう」


「ふん!…次にだと?」


不機嫌に鼻を鳴らすカナルだったが、先ほどのムーロンの言葉を思い出す。


「もしや…バルバトス様!鉄鉱石もお探しでは?」


「あら、そうよ?」


「やはり…!くっくっく…。鉄鉱石の方も我々におまかせを!」


早々に麦の買約を済ませて、走って馬車に乗ったカナル。それを不適な笑みで見送ったクララはひっそりと呟いた。


「やっぱりあのお姫様面白いわね」

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