さて、世直し世直し 『リリーナ』
「ムーロン、この都市に流通する鉄鉱石と麦を半分ずつ買い占めてちょうだい」
「了解です会長、名義はどうするんで?」
「リリーナ商会と4つの別の名義で買い付けなさい」
要件を聞いて走って行くリリーナの部下ムーロン。
この時リリーナ商会のカナル商会への経済的攻撃が始まろうとしていた。
「鉄鉱石と麦なんてどうするのですか?しかもこの都市の半分の流通する分なんて…」
「ミローネったら、商会に何年いるの?そろそろ商会の戦い方を覚えなさいな」
ぺちっと優しくミローネの頭を叩いた。
「いい?ミローネ。私たちはこれからこの都市の半分の鉄鉱石と麦を買うわよね?するとどうなるかしら?」
「えっと…買った分、流通が減るから…値段が上がります!」
「そうね?するとカナル商会はおかしいと思うわよね?なぜここまで買われてるのかと」
「そうですね…でも疑問に思ってもどう動くか分かりませんよ?鉄鉱石と麦の値段が上がっても手を着けないかもしれないし…」
「根拠がなければね?」
「根拠?」
リリーナの話しを理解しようと必死のミローネ。
頭から湯気が出そうなほど「んー?」と唸り考えるミローネを見てクスクスと笑いながら頭を撫でるリリーナが、答え合わせをする。
「要はカナル商会に勘違いさせるのよ。「鉄鉱石と麦が必ず高値で売れる」ってね」
「勘違いですか?でもそれだとこちらも損をしませんか?鉄鉱石と麦はリリーナ商会でも本当に買うんですよね?結局売り手が見つからなければ残るのは大量の鉄鉱石と麦で倉庫が埋もれてしまいますよ?」
「ミローネ?何も物を移動しなくてもいいのよ?買約が出来ればいいの」
「買約?」
「例えば、リリーナ商会の名義で麦の集出荷場で売約をすると、その場でリリーナ商会が他のお店や仕入れたい人たちと取引ができるのよ。その場合、集出荷場の変動する金額ではなくて、こちらが買約した金額を基準に取引が出来れば損はしないわ…多分」
「多分!?」
「商売に絶対は無いもの。でも大丈夫よ、麦と鉄鉱石で多少損してもリリーナ商会は痛くも痒くもないわ。カナル商会は痛い目を見るでしょうけどね。」
片目を瞑り茶目っ気のある笑顔を見せるリリーナ。
ミローネは、そんなリリーナにキラキラとした目をしながら聞いた。
「さすがです!姫様!…あれ?でも一番大事な「カナル商会が鉄鉱石と麦を買う根拠」ってどうやって作るんですか?」
「これから帝国で内乱が起こるわ」
「えっ!そうなんですか!?」
「嘘よ」
「えっ!?え?」
振り回されるミローネの頭が限界を迎えそうなので、リリーナはその真意を話す。
「要はその偽物の情報を信じ込ませて、武器の原材料と兵糧になる麦を大量になるべく高値買わせて損をさせようってことよ」
ニッコリと笑うリリーナに、苦笑いをしたミローネがやっと理解する。
「ようするに、それってさ「詐欺じゃないわ」…はい…」
「いい?ミローネ。これが商人の戦い方よ。でもね、普通はここまでしないわ…相手が普通の商会なら別の方針だって沢山あるし共存だってできる。でもね、奴隷売買や違法薬を売る商会なんてね…無い方が絶対にいいのよ?」
「リリーナ様…」
不意に真剣な表情で語るリリーナに、ミローネは自らの主の忠誠を確かに感じた。王族にしてはあまりに粗野だと言われていた主だったが、長く付き合いのあるミローネには知っていた。自分の主がもっとも国を民を思う『王族』であることを。
そして
その優しさと自分の正義を貫く強さをもった人間だということを。
「まあでも、商売するからには儲けるわよ」
「リリーナ様…」
自分の主の貪欲さに少々呆れながらも、頼もしい主の未来の輝かしさについていく自分を幸せだと思うことにした。
「さて、世直し世直し」




